好奇心の種を育てる

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養殖につかう餌ってなくなったりしないの?

はじめに

マグロやうなぎなどの海産資源の枯渇を解決するため、養殖技術の開発が盛んに行われています。
マグロの養殖ではマグロの餌としてサバやイワシなどの生餌を与えますが、マグロの養殖を盛んに行うようになったら「今度はサバやイワシが足りなくなるんじゃない?」という疑問が沸いてきました。そもそもこの問題は発生し得るのでしょうか。この問題が発生し得るとして、これを解決する方法はあるのでしょうか。調べてみました。

養殖魚の生産量の推移

養殖魚の生産量はどの程度なのでしょうか。

以下は養殖魚の生産量の推移をまとめたグラフになります。

【アースポリシー研究所より】養殖魚の生産量、牛肉を追い越す|イーズ 未来共創フォーラムより引用。
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養殖魚の生産量の増加はすさまじく、すでに牛肉の生産量を越えています。牛肉の生産量を越えているというのは意外でした。特に近年の伸びがえげつないですね。世界中で魚の需要が伸びているというのは知っていましたが、ここまでとは思っていませんでした。


養殖に必要な餌の量

養殖魚の生産に必要な餌の量はどれほどの量になるのでしょうか。1kg成長するのに必要な餌の量をまとめたのが以下の表です。

水産庁/(1)養殖業の意義より引用。
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ブリやマダイなどは約3倍、ギンザケは1.5倍程度の餌が必要であることがわかります。養殖には相当な量の魚が必要だと言えます。
以下は世界の漁業と養殖業の生産高の推移です。

水産庁/(2)世界の水産資源の状況より引用。
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養殖業の生産高は年々増加しており、漁業の生産高に迫る勢いです。養殖魚の生産にはその数倍の魚が必要です。養殖魚の餌に魚を使いつづければ、その餌がいずれ足りなくなることは明かです。また、海洋資源の枯渇も心配されます。

参考 マグロを養殖で1kg成長させるのに必要な餌はどれくらい?

近畿大学水産研究所のwebページに記載がありました。それによるとマグロ1kgあたり13kgの餌が必要になります。マグロが泳ぎつづけるために大きな運動エネルギーが必要であるために沢山必要だということです。

近大マグロより引用。
今日では、主に人工種苗を直径30mの生簀に収容し、サバやアジなど冷凍魚を解凍して餌としています。成長は早く、1年後5kg、2年後20kg、3年後40kgに成長し、出荷されます。一日2回の給餌で自身の体重の3~5%のエサを食べますが、1kg体重を増やすのに13kgのエサが必要です。本日入荷のマグロの体重に13を掛けると、食べた餌の量が分かります。それはマグロが泳ぎ続けるために大きな運動エネルギーが必要だからです。また、超大型魚で常に泳いでいるために生簀の適正収容密度は3kg/㎥以下で、ブリの1/5しか飼育できないため、環境への負荷は小さいといえます。

植物由来の代替飼料

魚に代わる養殖魚の餌として植物由来の餌が既に使用されています。以下のグラフは日本に置ける養魚用配合飼料への魚粉・代替原料配合割合の推移を示しています。

エサの変遷とこれからの養殖│49号 変わりゆく養殖:機関誌『水の文化』│ミツカン 水の文化センターより引用
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図4 日本における養魚用配合飼料への魚粉・代替原料配合割合の推移
魚粉配合量が少し減った分、大豆油粕とコーングルテンの配合比率が増える傾向にあるが、依然として魚粉配合率は高い。
提供:独立行政法人 水産総合研究センター(データは、2009年までは日本水産油脂協会の、2010年以降は農林水産省の統計をもとに同センターが作成)

植物が餌に使われていますが、せいぜい10~15%程度となっています。一方、魚粉の量は2003年から減少傾向にありますが、餌に占める割合は高いままです。植物由来100%の餌を使えないのには以下のような理由があります。

  • 餌の50%以上が植物性になると肉食魚が消化不良を起こし、生育に障害が発生する。
  • 生育に障害が発生しないようにするには莫大なコストがかかる。

(http://www.h5.dion.ne.jp/~allinone/natureland/bio/veg.htmlより)
 
 
上記の問題を解決する方法として魚の品種改良が挙げられています。
 

エサの変遷とこれからの養殖│49号 変わりゆく養殖:機関誌『水の文化』│ミツカン 水の文化センターより引用。
 実際に私たちは、アマゴに植物性原料を配合した安いエサを与え、そのなかで大きく育った個体のみを選抜して交配を繰り返す実験をしてみました。すると二世代目には、植物性原料の多いエサだけで育てても従来のエサで育てたアマゴと同じくらい成長するようになりました。

品種改良した魚が逃げた際に生態系に与える影響や、品種改良した魚を食べても大丈夫なのかといった問題や懸念はありますが、非常に有望な技術ですね。

昆虫由来の代替飼料

昆虫由来の餌についても研究されています。ハエのサナギを餌として利用することでコストを低減したり、健康的な魚を育てることができるようです。また、植物性の代替飼料にあった問題も起きないようです。ただ、消費者が昆虫によって育てられた魚を受け入れてくれるのか心配ではあります。

昆虫を養殖魚の飼料として実用化するベンチャー企業設立−コスト削減、病気に強い魚など画期的効果−
“手乗り家畜”昆虫が拓く養殖ビジネスの展望 / 水野壮 / NPO法人食用昆虫科学研究会 | SYNODOS -シノドス-


おわりに

養殖魚の生産量は近年飛躍的に増加しており、養殖に使われる魚が足りなくなるのではという疑念は正しそうです。海洋資源の枯渇やコストの問題を解決するために代替飼料の開発が進んでいることもわかりました。代替飼料にも問題があり、海洋資源枯渇の完全な解決策とはなっていないようですが、今後の技術の進歩によって改善されていくことを期待しています。

今回はここまでです。