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鉄鋼業界について調べてみた

鉄鋼業界の世界シェアについて

以下のグラフに2015年の粗鋼生産量の企業ランキングを示します。

「粗鋼」とは最終製品に加工される前の「鉄」のことで、統計上でよく用いられています。実際に粗鋼と呼ばれる製品があるわけではないので注意が必要です。


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World Steel Association Top steel-producing companies より


日本企業では新日鉄住金が第3位に、JFEホールディングスが第8位にランキングされています。アルセロール・ミッタルの粗鋼生産量が圧倒的で、新日鉄住金とJFEホールディングスを足しても及びません。一方で、世界の粗鋼生産量は約16億トンで、上位15位の企業を合わせても全体に占める割合は33%と低くなっています。以下のグラフに世界の粗鋼生産量のうち上位15企業が占める割合を示します。

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World Steel Association Monthly crude steel production 2015 および Top steel-producing companiesより


鉄鋼業界は世界全体でみると寡占度が低く、このことは新興国企業の成長や業界再編などにより鉄鋼業界の企業順位が大きく変わっていく可能性が高いことを示唆しています。世界第3位の粗鋼生産量を誇る新日鉄住金も、数年後には順位を落としていても全く不思議ではありません。


ここで分かったことは以下の通りです。

  • 粗鋼生産量ランキングの上位3位と8位に日本企業がランクインしている
    • 3位が新日鉄住金
    • 8位がJFEホールディングス
  • 世界の粗鋼生産量のうち上位15企業が占める割合はわずか33%である

鉄鋼業界の日本国内シェアについて

日本国内での粗鋼生産量のシェアを以下のグラフに示します。


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World Steel Association Monthly crude steel production 2015 および Top steel-producing companiesより


上位4社が国内粗鋼生産量の8割以上を占めており、かなり寡占化が進んでいることが分かります。2017年の2月までに新日鉄住金が日新製鋼を子会社化するので、さらに寡占化が進むことになります。世界的にみれば業界の再編が進んでいくでしょうが、日本国内企業のこれ以上の再編は独禁法などの観点から難しいと考えられます。あるとしたら日本企業と外国企業の合併などでしょうか。


ここで分かったことは以下の通りです。

  • 国内粗鋼生産量の8割以上を上位4社で占めており、日本国内では寡占化が進んでいる

鉄鋼の原材料のシェアについて

鉄鋼の主な原材料である鉄鉱石の世界シェア(2006年でかなり古いものになりますが)を以下のグラフに示します。

鉱山と鉄鋼業界の力関係が完全に逆転! 価格交渉に歴史的異変 | 企業戦略 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準より引用
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世界的にみると、ヴァーレ、リオ・ティント、BHPビリトンの3社で71%のシェアを占めており、日本輸入分に限ると85%を占めています。非常に寡占化が進んでおり、鉄鉱石の価格決定力は売り手側にあります。

ここで分かったことは以下の通りです。

  • 鉄鉱石の世界シェアの約7割を3社が占めており、鉄鉱石メジャー3社が鉄鉱石の価格決定力を有している

鉄鋼の製造方法

高炉と電炉

鉄鋼の作り方には大きく分けて「高炉」によるものと「電炉」によるものの2種類があります。高炉を用いて鉄鋼を製造するメーカを高炉メーカ、電炉を用いるメーカを電炉メーカと呼んでいます。

高炉による鉄鋼の製造法とその特徴

以下の図に高炉による鉄鋼の製造法の概要を示します。

日本鉄鋼業、世界で最も優れたエネルギー効率を維持 | NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Instituteより引用
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高炉による鉄鋼の製造工程は大まかに以下のようになります。

  1. 高炉で鉄鉱石と石炭から銑鉄を作り出す(製銑工程)。銑鉄には炭素の他にリン、硫黄、ケイ素などが含まれています
  2. 銑鉄には不純物が多く含まれているため、転炉で不純物を取り除きます(製鋼工程)。この工程は製品の品質を決める上で極めて重要で、日本の高炉メーカは不純物が極めて少ない鋼材、独特の結晶構造を持つ鋼材を生産する技術を有しています。この工程で不純物が取り除かれた鉄を「鋼」を呼んでいます
  3. 鋼に熱や圧力を加えることによって整形し、鉄鋼製品を生産します(鋳造工程・圧延工程)


高炉による鉄鋼の製造には以下のような特徴があります。

  • メリット
    • 大量生産が可能である
    • 生産コストが安価である
    • 鋼の厳密な結晶構造や成分調整が可能で、高品質な鋼が生産可能である。
  • デメリット
    • 需給調整が難しく、大量の鋼を作りつづける必要がある
    • 顧客の海外生産化への対応が難しい
    • 多額の撤退コストが必要(高炉による一貫製鉄所の建設には5000億~1兆円のコストがかかっている)

高炉による製造法では高品質な鉄鋼を製造可能であり、日本の高炉メーカーは高品質な鉄鋼の製造に注力しています。そのため、製品に求める品質(強度・薄さ・加工性)が高い自動車業界が主な顧客となっています。

電炉による鉄鋼の製造法とその特徴

様々な場所から発生する鉄スクラップを電炉と呼ばれる炉で高温に熱して溶かして鋼を生産します。鋳造工程や圧延工程を経て鉄鋼製品が作られるのは高炉法と基本的には同じです。

電炉による鉄鋼の製造には以下のような特徴があります。

  • メリット
    • 操業の自由度が高く電炉を止めて需給調整を行うことが出来る
    • 工場建設のコストが300億~1000億円程度と比較的安価である
  • デメリット
    • 原料の鉄スクラップには不純物が多く含まれ、製品が低品質の鋼となり、用途も建設用鋼材、構造用鋼に限定される
    • 鉄スクラップが容易に入手可能でないと本手法を取ることが難しい

電炉による製造法では比較的低品質な製品となってしまうため、強度や耐久性が求められる建設業界が主な顧客となっています。一方で、鋼に合金鉄を加えた特殊鋼(強靭性・対錆性・耐熱性に優れる)を主に製造する特殊鋼電炉メーカーも存在しています。特殊鋼電炉メーカの主な顧客は上記で述べた電炉メーカ(普通綱電炉メーカ)と異なり、自動車・造船・航空業界が主な顧客となっています。

日本での高炉と電炉のシェア比較

以下のグラフに粗鋼生産量に電炉が占める割合を示します。

普通鋼電炉工業会より引用。
【世界・主要国の粗鋼生産に占める電炉鋼比率の推移】
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2013年の電炉による生産割合は22.5%であり、粗鋼生産量のシェアは高炉が8割程度、電炉が2割程度であると推測できます。


ここで分かったことは以下の通りです。

  • 鉄鋼の製造方法には大きく分けて「高炉による方法」と「電炉による方法」がある
  • 高炉の場合、安価に高品質な鉄鋼が生産可能というメリットがある一方で、操業の柔軟性に欠け、需給調整が難しく、多額の投資が必要で撤退が難しいといったデメリットがある
  • 電炉の場合、操業の自由度が高く電炉を止めて需給調整を行うことが出来、比較的小額の投資で済むというメリットがある一方で、製品が低品質の鋼となり、用途も建設用鋼材、構造用鋼に限定されるといったデメリットがある
  • 高炉メーカの主な顧客は自動車業界であり、電炉メーカの主な顧客は建設業界である
  • 国内の粗鋼生産量に占める高炉・電路のシェアは、高炉8割、電炉2割程度である

鉄鋼製品の販売形態

鉄鋼製品の販売形態には大きく分けて「ひも付き」と「店売り」の2つがあります。

ひも付き

鉄鋼メーカとユーザが販売価格や数量を決める販売形態のことを「ひも付き販売」と呼びます。鉄鋼メーカとユーザでの鉄鋼製品の共同開発や安定供給を目的としています。高炉メーカの場合だと、国内向の7割から8割がひも付きによる販売、特殊綱電炉メーカの場合は9割以上がひも付きによる販売となります。

店売り

流通業者がメーカから鉄鋼製品を購入し、これを小口の問屋やユーザに販売する形態を「店売り販売」と呼びます。普通鋼電炉メーカは主に店売りによって鉄鋼製品を販売します。価格は市況によって変動します。


ここで分かったことは以下の通りです。

  • 鉄鋼製品の販売形態には「ひも付き販売」と「店売り販売」がある
  • 高炉メーカ、特殊鋼電炉メーカは製品を主にひも付きで販売する
  • 普通綱電炉メーカは製品を主に店売りで販売する

おわりに

今回鉄鋼業界について調べてみました。結果、粗鋼生産量については以下のことが分かりました。

  • 世界的には寡占化が進んでおらず業界再編により、企業順位が大きく変化する可能性が高い
  • 日本では寡占化が進んでおり、国内の業界再編はこれ以上は難しい

鉄鋼製品の原材料については以下のことが分かりました。

  • 主な原材料である鉄鉱石の生産は世界3大メーカによってほぼ独占状態にあり、鉄鉱石の価格決定力は鉄鉱石メジャーの手にある

鉄鋼製品の生産方法や販売形態については以下のことが分かりました。

  • 鉄鋼製品の生産方法には「高炉による方法」と「電炉による方法」とがあり、それぞれメリット・デメリットがある
  • 日本国内での粗鋼生産のうち約80%が高炉によるもので、約20%が電炉によるものである
  • 鉄鋼製品の販売形態には「ひも付き販売」と「店売り販売」がある
  • 高炉メーカや特殊鋼電炉メーカが製品を主にひも付きで販売し、普通鋼電炉メーカが製品を主に店売りで販売している


今後は高炉メーカについて調べ比較を行ってみたいと思っています。

今回はここまでです。