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鉄鋼業界 高炉メーカ4社の業績を比較してみた

はじめに

これまでに4社の高炉メーカを調べてきました。

  • 新日鉄住金
  • JFEホールディングス
  • 神戸製鋼所
  • 日新製鋼

その中で売上高、営業利益率、自己資本比率などの指標をみてきましたが、各社単体でこれらの数値をみてもそれが高いのか低いのかわかりませんでした。そこで、今回は4社の高炉メーカの指標を比較してみたいと思います。


また、この記事をご覧になる際は以下にご注意ください

  • 本記事では業績の指標を比較しているのみであり、企業の価値について言及するものではありません
  • 各社が発行する株式数には大きな違いがあり、ここで述べる指標の差がそのまま株式価値の差となるわけではありません

業績の比較

売上と売上営業利益率

以下のグラフに各高炉メーカの売上と売上営業利益率の関係を示します。グラフには年毎の値をプロットしています。

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各社の有価証券報告書より作成


売上の規模についてみてみると、新日鉄住金、JFEホールディングス、神戸製鋼所、日新製鋼の順番に高くなっています。売上営業利益率も新日鉄住金とJFEホールディングスが最も高く、それに次いで神戸製鋼所、日新製鋼となっていますが、売上の規模ほど明確な違いはありません。
高炉メーカ4社の中では新日鉄住金とJFEホールディングスの売上規模が際立って高い水準にあり、収益性についても神戸製鋼所や日新製鋼よりもやや高くなっています。一方、日新製鋼の売上規模や売上営業利益率は高炉メーカ4社の中で最も低くなっています。


売上と売上営業利益率について比較して以下のことがわかりました。

  • 売上規模の順位は以下の通りである
    1. 新日鉄住金
    2. JFEホールディングス
    3. 神戸製鋼所
    4. 日新製鋼
  • 売上営業利益率の順位は以下の通りである
    1. 新日鉄住金、JFEホールディングス
    2. 神戸製鋼所
    3. 日新製鋼
  • 売上規模は高炉メーカ4社で明確な差異があるが、売上営業利益率はそこまで大きな差異は無い
  • 新日鉄住金とJFEホールディングスの売上と売上営業利益率が高炉4メーカの中で高い水準にある
  • 日新製鋼の売上と売上営業利益率が高炉4メーカの中で最も低い

営業利益

以下のグラフに各高炉メーカの営業利益の推移を示します。

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各社の有価証券報告書より作成


営業利益の額についてみてみると、新日鉄住金、JFEホールディングス、神戸製鋼所、日新製鋼の順番に高くなっています。新日鉄住金とJFEホールディングスの営業利益の額にそれほどの差異はありません。しかし、神戸製鋼所は上位2メーカの50%、日新製鋼は10%程度しか営業利益を上げられておらず、大きく差が開いています。
また、営業利益の年毎の増減傾向についてみてみると4メーカとも同じような傾向を示していることが分かります。例えば、2007年から2010年にかけての急激な低下や、2013年以降の上昇については営業利益の額は違うものの4メーカとも同様の動きを見せています。


営業利益の額を比較して以下のことがわかりました。

  • 営業利益の順位は以下の通りである
    1. 新日鉄住金
    2. JFEホールディングス
    3. 神戸製鋼所
    4. 日新製鋼
  • 高炉メーカ4社の営業利益額の増減傾向は非常によく似ている
  • 高炉メーカ4社の中で高い営業利益を上げているのは、新日鉄住金とJFEホールディングスである

自己資本比率

以下のグラフに各高炉メーカの自己資本比率の推移を示します。

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各社の有価証券報告書より作成


2016年の自己資本比率は、新日鉄住金・JFEホールディングスが40%程度、神戸製鋼所・日新製鋼が30%程度となっています。新日鉄住金、JFEホールディングス、神戸製鋼所が上昇傾向にあるのにたいして、日新製鋼は下降傾向にあります。

自己資本比率を比較して以下のことがわかりました。

  • 自己資本比率の順位は以下の通りである
    1. 新日鉄住金、JFEホールディングス
    2. 神戸製鋼所、日新製鋼
  • 新日鉄住金、JFEホールディングス、神戸製鋼の三社の自己資本比率が上昇傾向であるのに対して、日新製鋼は下降傾向にある

海外売上比率の比較

以下のグラフに各高炉メーカの海外売上比率の推移を示します。

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各社の有価証券報告書より作成


2016年の海外売上比率は、新日鉄住金、神戸製鋼所、JFEホールディングス、日新製鋼の順に高くなっている。特に日新製鋼の海外売上比率が低くなっている。また、新日鉄住金と神戸製鋼所の海外売上比率は上昇傾向であるが、日新製鋼は下降傾向にあり、JFEホールディングスは横ばいとなっている。
いずれも海外売上比率が50%を超えることは無く、国内での売上の方が大きくなっている。


海外売上比率を比較して以下のことがわかりました。

  • 海外売上比率は以下の順番で高い
    1. 新日鉄住金
    2. 神戸製鋼所
    3. JFEホールディングス
    4. 日新製鋼
  • 日新製鋼の海外売上比率が特に低い
  • 新日鉄住金、神戸製鋼所の海外売上比率は上昇傾向にある
  • JFEホールディングスの海外売上比率は横ばいで推移している
  • 日新製鋼の海外売上比率は下降傾向にある
  • どのメーカも海外売上比率が過半を超えていない

近年の高炉メーカ4社の業績低迷とその要因について

高炉4メーカの営業利益の推移は非常によく似ていました。そこで、高炉4メーカの売上や営業利益を合算し、高炉メーカ全体としての業績推移をみてみることにしました。
以下のグラフに高炉4メーカの売上と営業利益率の推移を示します。

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  • 注意
    • 2000年から2006年まで値は「業界研究シリーズ 鉄鋼」の補足資料(4) 日本の高炉大手メーカの業績推移より参照した
    • 2007年から2016年の値は各社の有価証券報告書より売上と営業利益を合算し算出した


売上についてみてみると若干の増減はあるものの、2000年から2016年にかけて大きな変動はありませんでした。一方、営業利益率は大きく変動しており、2004年~2008年は10%以上と高い収益を上げることが出来ていますが、2009年以降はおおよそ5%程度となっており、近年の業績が低迷していることが分かります。


近年の業績低迷の要因は何なのでしょうか。筆者は大きく2つの要因があると考えています。


以下に鉄鋼の原材料である鉄鋼石および石炭の国際価格推移を示します。

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IMF -- International Monetary Fund Home Pageより参照し作成

  • 注意
    • 1月~12月までの価格の平均価格をその年の価格とした
    • ただし、2016年の価格は1月から6月までの平均価格
    • 鉄鋼石の価格は中国(天津港)の輸入価格
    • 鉄含有量62%となる鉄鋼石価格
    • 石炭はオーストラリア産
    • 1%未満の硫黄、14%未満の灰分が含まれる石炭の価格

2007年以降鉄鋼石および石炭の国際価格が急激に上昇している事が分かります。日本の大手高炉メーカは鉱山採掘権を有していないため価格変動の影響を避けられなかったと考えられます。



続いて中国の粗鋼生産量についてみていきましょう。
以下のグラフに世界の粗鋼生産量の推移を示します。

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Home | worldsteelより参照し作成

  • 注意
    • 「ロシアと周辺諸国」は1991年までが旧ソ連、1992年以降がCIS諸国の値である
    • 「ヨーロッパ」はヨーロッパの主要な28国の値である
    • 「その他」は全世界の数値から、各地域の値の合計値を減算した値である

世界の粗鋼生産量は2000年以降大幅に増加しており、それを牽引しているのが中国であることが分かります。2000年時点の中国の粗鋼生産量は約1億3000万トンで、日本の粗鋼生産量とそれほど変わりありませんでしたが、2015年時点では約8億トンまで増加し、日本の粗鋼生産量を大きく上回っています(およそ8倍)。


中国はこの膨大な粗鋼生産量を自国内で消費しきれているのでしょうか。中国の粗鋼生産量と消費量の推移、および、中国国内の余剰粗鋼量の推移を以下に示します。

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f:id:quwequwe:20161124052746j:plain
Home | worldsteelより参照し作成

  • 注意
    • 消費量は見掛消費量
    • 粗鋼余剰量は粗鋼生産量-見掛粗鋼消費量で算出

粗鋼生産量の増加と併せて、粗鋼消費量も増加していますが、粗鋼の生産量の方が消費量と比べて増加量が大きくなっています。また、粗鋼余剰量は2005年以降にプラスに転じ、中国は粗鋼の純輸出国になっています。粗鋼余剰量は2015年時点で1億トンを超えており、日本が1年に生産する粗鋼の量と同じ量の粗鋼が余分に生産されています。この余剰生産分の鉄は中国国内で消費することが出来ないため、大量に輸出されており、中国国内だけでなく海外の鉄鋼製品価格の下落要因となっています。

この生産過剰状態は2005年以降悪化する傾向にあります。日本の高炉メーカも中国の過剰生産による鉄鋼価格低下圧力の影響を受けていると考えられます。


こららのことから「原材料価格の高騰」と「中国の過剰生産」が高炉メーカ業績低迷の要因であると考えられます。


以下のことがわかりました。

  • 日本の大手高炉メーカの収益は近年低迷し続けている
  • 以下が高炉メーカの業績が低迷した要因であると考えられる
    • 鉄鋼の原材料価格が2007年以降高騰している
    • 2005年以降、中国の粗鋼生産が過剰となり、生産過剰状態が悪化し続けて鉄鋼製品価格の低下圧力となっている

終わりに

鉄鋼業界の高炉メーカ4社(新日鉄住金、JFEホールディングス、神戸製鋼所、日新製鋼)の業績を比較して以下のことがわかりました。

  • 売上および売上営業利益率の面で新日鉄住金、JFEホールディングスが他の2社と比べて優れている
  • 営業利益の増減の傾向が4社とも非常によく似ている
  • 自己資本比率は日新製鋼を除き上昇傾向にある
  • 海外売上比率は新日鉄住金、神戸製鋼所が上昇傾向にあり、JFEホールディングスが横ばい、日新製鋼が下降傾向にある
  • いずれのメーカーも国内売上の方が海外売上と比べて多くなっている
  • 日本の大手高炉メーカの営業利益率は近年低迷している
  • 営業利益率低迷の要因は以下の通り
    • 鉄鋼の原材料価格が2007年以降高騰している
    • 2005年以降、中国の粗鋼生産が過剰となり、生産過剰状態が悪化し続けて鉄鋼製品価格の低下圧力となっている

今回はここまでです。