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岐阜造園 事業内容と業績推移

要点

  • 岐阜造園の事業内容と業績の推移を調査した
  • 岐阜造園は事業環境の悪い造園業界でうまくやっている会社
  • 2016-9期の業績及び財務状況は健全
  • 投資は見送ることにした

事業内容

事業概要

岐阜造園は造園緑化を主な事業として営んでいます。
造園緑化というのは「個人宅の庭や公園などの緑化スペースを製作する」ことです。

造園緑化事業は対象となる物件によって、以下の2つの事業セグメントに分類出来ます。

事業セグメント 内容
ランドスケープ 主に公共の物件を対象としている
ガーデンエクステリア 主に個人の物件を対象としている

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岐阜造園の会社説明会資料より


事業セグメントの売上比率は以下の通りです。

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岐阜造園の会社説明会資料より

個人物件を対象とした「ガーデンエクステリア」が7割と、かなりの部分を占めています。


ランドスケープ事業

ランドスケープ事業では不特定多数の人が訪れるパブリックスペースの造園を行っています。
対象となる物件は、公共工事、民間工事、また、工事施工後の緑地メンテナンスによるものがあります。

分類 内容 受注形態
公共工事 国土交通省、地方自治体等が発注する物件(庁舎等の施設、都市公園、街路、公立学校等)の施工・整備に係る造園緑化工事を行っている 官公庁が発注する工事における競争入札と、大手建設会社や地元建設会社が受注した工事の造園緑化工事部分を協力会社として請け負うものがある
民間工事 民間企業が発注する物件(商業施設、工場、リゾートホテル、ゴルフ場、飲食店、ショッピングモール、温浴施設、住宅マンション、私立学校、病院、老人介護施設等)の施工・整備に係る造園緑化工事を行っている 民間企業より直接受注を受けるものと、大手建設会社や地元建設会社が受注した工事の造園緑化工事を協力会社として請け負うものがある
緑地メンテナンス 官公庁からの委託を受け、公園や公共施設等の緑地のメンテナンスを行っている。樹木の剪定、施肥、病害虫駆除、草花の植え替え、歴史的価値のある樹木の保存や、病気に侵された樹木の治療 情報なし

ガーデンエクステリア事業

住宅の周辺環境を総称してエクステリアと位置付け、庭園(ガーデン)のテイストをより多く盛り込んだものを「ガーデンエクステリア」と呼んでいます。個々の緑豊かなガーデンエクステリアが集まり、美しい街並みを形成することをコンセプトに設計や施工を行っています。

対象となる物件は、住宅メーカーとの共同による新規の大型分譲地での設計・施工、一般顧客向けの「パインズ」でのショールーム展開等によるものがあります。

分類 内容 受注形態
大型分譲地での設計・施工 住宅メーカーや不動産デベロッパー等とともに、大型分譲地の計画段階から施工に携わり、顧客ごとの要望を満たしながら分譲地の造形を行っている 情報なし
「パインズ」でのショールーム展開 「パインズ」は、一般顧客向けのガーデンエクステリアショールームとして、東海・近畿・四国地方に5店舗を展開している。全てオーダーメイドにて提案し、顧客の要望に沿ったガーデンエクステリアを製作している 主にホームページや地域タウン誌をはじめ、既存顧客や住宅メーカーの紹介により集客している。また、引渡し後の顧客への定期訪問や、樹木の剪定等のアフターメンテナンスを通じ、リガーデン(ガーデンエクステリアのリフォーム)の受注につなげている

顧客の状況

顧客ごとの売上構成比は以下のようになっています。

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岐阜造園の会社説明会資料より


ハウスメーカやゼネコンによる売り上げが大きいです。
ハウスメーカやゼネコンから仕事をもらうか、そこからの紹介やつながりで仕事を見るけることのほうが多いということです。


これはつまり、ハウスメーカーやゼネコンが調子が悪くなれば仕事がなくなるということで、岐阜造園の業績はハウスメーカーやゼネコンが握っていることになります。


また、ハウスメーカの売上については顧客を分散できておらず、特定のメーカーからの売上が大部分を占めているようです。

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岐阜造園 第51期 有価証券報告書より


ハウスメーカの売上の37%のうち25%分は上記の2社によるものなので、この2社の意向によって、岐阜造園の売上の25%が左右されるわけです。


もちろん、ハウスメーカーやゼネコンから仕事をもらえれば効率的にたくさんの仕事にありつけるわけですから、売上を増やす方法としては悪い方法ではないですが、岐阜造園の顧客の状況はよくなさそうです。

事業の成長可能性

成長の可能性は大いにあります。
造園を専業とする会社としては唯一の上場企業であり、利益率も悪くありません。
また、営業拠点も全国に展開できておらず、営業拠点や顧客を増やしながら成長していくストーリは十分にありえると思います。

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岐阜造園の会社説明会資料より


ただし、岐阜造園に競争優位性があるのか、顧客からみた岐阜造園を選択するメリットは何かということをしっかりと考えた上で判断する必要があります。

岐阜造園の強み

まず、造園業務の上流工程を行うことができるという点が挙げられます。
ハウスメーカやゼネコンからすれば、計画段階から参画し提案できるような力を持った業者は使い勝手がいいわけです。
自社の人的リソースを新たに割くことなく、外部の専門家の提案を計画段階から取り入れて、物件の品質を向上させることができるからです。
また、岐阜造園は計画だけでなく、施工からメンテナンスまで全ての工程を網羅しており、ハウスメーカやゼネコンは下流工程の業者を探す必要もありません。

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岐阜造園の会社説明会資料より


岐阜造園は造園工事高で全国5位の規模であり、上場もしています。
つまり、信用があるわけです。そのため、ハウスメーカーやゼネコンも造園業務を依頼しやすいといえます。

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岐阜造園の会社説明会資料より


建工調:[建工調データベース]造園完工高上位50社によると、2003,4年の岐阜造園と景匠館の合計工事高が2663百万円でランキング10位。
(景匠館は2005年1月に岐阜造園によって子会社化されています)

現在が5位なので、この13年でかなり成長しています。
造園業界の事業環境が厳しい中での成長であり、強い会社と言えます。


事業環境

造園事業全体の環境はよくありません。
造園の工事高は年々少なくなっています。また、造園業者の数も年々減少しています。

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一般財団法人 建設経済研究所 研究所だより より


一方で都市緑化については年々成長しています。

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一般財団法人 建設経済研究所 研究所だより より

競合他社

建工調:[建工調データベース]造園完工高上位50社および岐阜造園の会社説明会資料より、重要な競合他社を一覧にしました。

会社名 造園施工完工高(2003~4年の数値)
住友林業緑化 194億円
西部造園 66億円
日比谷アメニス 54億円
石勝エクステリア 51億円

いずれも、岐阜造園よりも売り上げがある会社ばかりです。

上記で岐阜造園の強みとして挙げた

  • 設計からメンテナンスまですべての工程を任せられる
  • 会社の体力などの面で信用がある

という点を満たしており、岐阜造園はこれらの競合他社と比べて優位には見えません。

ただし、現状の売上や、利益率などのデータが入手できていないので、競合他社との業績比較を行うことは難しいです。

業績推移

利益の推移

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岐阜造園の有価証券報告書より作成


2016-9期の利益率は10%程度で高いです。
清水建設の2017-3期の利益率は8%程度であり、大手の建設会社並みの利益率をあげています。

資産の推移

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岐阜造園の有価証券報告書より作成

ここ3年は総資産も増えており、自己資本比率も増加しています。
2016-9期の自己資本比率は59.5%です。

清水建設の2017-3期の自己資本比率は33.9%で、同じく造園を営む西武造園は50.3%なので、岐阜造園の自己資本比率は高いといえます。

その他財務の健全性

2016-9期の現金同等物は11.4億円。
有利子負債は3.7億円であり、ネットキャッシュは7.7億円で、負債は少なく、十分な現金を保有しているといえます。


2016-9期の売上債権回転月数は1.3ヵ月、棚卸資産回転月数は0.5ヵ月で、特に問題ありません。

財務評価

利益については申し分なし、ただし、景気循環の影響を受ける会社であり不況時には業績が低迷することに注意が必要。
自己資本比率は高く、有利子負債よりも多くの現金を保有しており、財務的な問題はない。

まとめ

造園の事業環境が悪いのにも関わらず頑張っている会社という印象です。

良い点

  • 2016-9期の業績や財務状況は健全
  • 少なくとも2016-9期までは、事業環境が良くない中でも成長してきている

悪い点

  • 特定のハウスメーカによって業績が大きく左右される
  • 強力な競争相手がいる
  • 景気循環の影響を大きく受ける事業を営んでいる
  • 造園の事業環境は今後もよくないと予想される


造園事業の環境が悪い中で、うまくやっている会社であり、今後、顧客を増やしながら成長していく可能性は十分あります。しかし、競合他社と比べて特別優位な点があるようには思えず、今後も成長を続けていけるかは疑問です。また、景気循環の影響を強く受け、業績が安定しない事業を営んでいるため好景気の今の段階で投資したい会社ではありません。さらに、業界全体の規模はこれから成長するとは思えませんし、やっているビジネスそのものが特別良いと思える性質はないので、大きな魅力は感じません。

従って、岐阜造園への投資は見送ることにしました。


今回はここまでです。