株式調査記録

主に日本の株式の調査結果をまとめています

エステー 事業内容と業績推移

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事業内容

事業概要および部門別売上構成

エステーは「消臭芳香剤」「防虫剤」「カイロ」「手袋」「除湿剤」といった日用品の製造販売を事業として営んでいます。

以下の表は各部門の主要製品および商品です。

部門 取り扱い品目
消臭芳香剤 消臭力、SHALDAN、脱臭炭
防虫剤 ムシューダ、ネオパラ
カイロ オンパックス(アライアンス商材)
手袋 ファミリー、ハンドフルール、モデルローブ
除湿剤 ドライペット、備長炭ドライペット
その他 米唐番、洗浄力、クリアフォレスト

有価証券報告書およびIR情報より表を作成


以下は2018年3月期の部門別の売上構成です。
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消臭芳香剤が占める割合が多いですが、比較的バランスの良い事業ポートフォリオとなっています。

地域別の売上構成

以下は海外の売上の推移です。

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IR資料より引用


海外売上は7%程度で国内のみで事業を展開しているといってよいです。


エステーの日用品シェア

以下は国内の日用品のシェアです。

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IR資料より引用

 

部門 取り扱い品目 シェア
消臭芳香剤 消臭力、SHALDAN、脱臭炭 消臭芳香剤は2位(26%)、脱臭剤は1位(79%)
防虫剤 ムシューダ、ネオパラ 防虫剤は1位(51%)
カイロ オンパックス(アライアンス商材) 使い捨てカイロは2位(16%)
手袋 ファミリー、ハンドフルール、モデルローブ 家庭用手袋は2位(24%)
除湿剤 ドライペット、備長炭ドライペット 除湿剤は1位(39%)
その他 米唐番、洗浄力、クリアフォレスト 情報なし

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取り扱っている製品・商品の国内シェアはいずれも高く、優秀です。



以下は製品・商品ごとのシェアの推移です。

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IR資料より引用


各市場規模およびシェアの推移を見る限り、エステーが今後成長するといえるような兆候はありません。
細かく見ると、家庭用手袋・除湿剤の市場規模とシェアが伸びていたり、防虫剤の市場規模が下がっている一方でシェアが伸びている(寡占化が進んでいる)といったことはありますが、エステーの業績に大きな影響を与えるようなことはないと判断しています(長期的に見て業績を維持する以上の効果はなさそうだということです)。

業績推移

売上と利益

2017-3期以降はエステーが会計方針を変更しており、拡販費の一部が売上から控除されています。したがって、2017-3期前後でデータの連続性はありません。拡販費の控除額はかなり大きく、私の推計では2017-3期は41億円、2018-3期は46億円でした。
 

第70期より従来販売費及び一般管理費に計上しておりました得意先に支出する拡販費の一部を売上高の控除項目として処理する会計方針の変更を行っております。

有価証券報告書より引用
 

ここでは、売上から控除された拡販費を推計し、売上に足し合わせてグラフを作成しています(会計方針変更前の推計というのがそうです)。以降の売上と営業利益率について記述する際は基本的に推計値についてを記載しています。

 
以下のグラフは売上と営業利益率の推移です。

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売上は増加傾向にあります。一方で、営業利益率は低下しています。売上が増加しているのにもかかわらず、2007-3期と比べると1%程度低下しています。売上が増加したのであれば、営業利益率も増加しそうなものですが。

また、営業利益率は2007-3~2016-3期にかけて低迷していました。

費用の内訳

以下は費用の内訳推移です。

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一貫して拡販費が増加しています。2007-3期は8.9%でしたが、2018-3期には15.2%まで増加しています。


拡販費は小売り店に対して支払っている費用で

  • 棚を確保し、商品などを陳列してもらった場合に払うお金
  • クーポンやキャッシュバックなどの販促施策を行った際に支払うお金

のことです。


ちなみに、発送保管費・広告宣伝費・その他の販管費は減少傾向にありました。
給料は微増。

営業利益率低迷および低下の原因

根拠は薄いですが、2015-3期までの営業利益率の低迷の原因は

  • 景気後退に伴う個人消費の悪化
  • 同業他社との価格競争

のためでしょう。

また、確実に言えるのは「拡販費の増加が営業利益率低下の要因になっている」ということです。


エステーは各部門で高いシェアを持ってはいますが、差別化するのが難しい製品を扱っています。また、日用品とはいえ、消臭芳香剤や脱臭剤なんかは我慢しようと思えば我慢できるわけで、景気後退による個人消費の悪化や同業他社との競争によって利益が低迷するのは仕方がないことです。そんな中、拡販費を増やし続ければ、利益率が低下するのは当然です。

しかし、私はこの拡販費の増加をポジティブに受け止めています。


こういった状況の中では同業他社も苦しいわけで、むしろ、体力があるエステーが積極的に価格競争を仕掛けて、体力がない会社を振り落とすチャンスともいえます。だから、エステーは利益率が低迷する前提で、拡販費を積極的に投じていると考えられるわけです。この施策の結果は数字には表れていないですが、個人的にはいい手だなと思っています。エステーは業界1位、2位のシェアを持っており、利益率が低下したとはいえ赤字にはなっていないです。これが3番手4番手の企業であったら赤字になって、もっと辛いことになっているでしょう。


以下は2007-3期と2018-3期の費用構造の比較ですが、拡販費がこれだけ増えれば営業利益率が低下しても不思議ではありません。エステーは拡販費を積極的に投じる施策を継続するつもりだと思われます。

項目 2007-3 2018-3
原価 55.8% 53.6%
拡販費 8.9% 15.2%
給料 4.1% 4.6%
発送保管費 3.5% 2.8%
広告宣伝費 7.3% 5.4%
その他の販管費 12.8% 11.6%
営業利益 7.3% 6.5%

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部門別の売上構成推移

以下は部門別の売上構成です。2017-3期以降は会計方針の変更のためデータに連続性がありません。したがって、2016-3期までのデータのみを使ってグラフを作成しています。

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売上構成は2007-3期と2018-3期とではあまり違いがありません。


以下は2007-3期の売上を100とした場合の部門別の売上推移です。

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手袋部門の売上は明らかに増加していますが、他の部門は横ばいです。

資産

以下のグラフは総資産と自己資本比率の推移です。

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自己資本比率が高いです。70%程度をずっと維持しています。
総資産が2008-3期にがくんと減っているのと、2014-3期以降、割と調子よく増加している理由が気になります。


エステーの総資産が2008-3期にガクッと減少したのは自社株買いをしたからです。これは自己資本の内訳推移をみるとわかります。
以下は自己資本の内訳推移です。

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さらに購入した自社株を消却処分しています。素晴らしいです。
2008-3期に60億円(400万株)の自社株買い、2011-3期に93億円(650万株)の消却処分を実施しています。。

エステーは成長性が低いですが、蓄えたお金をちゃんと株主に還元してくれる珍しい会社です。
大体の会社は蓄えるだけ蓄えて無駄なM&Aをしてくれたりするので、使わない金を株主に返してくれるエステーには好感が持てます。



以下のグラフは資産(B/Sの左側)の内訳推移です。

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2015-3期以降の総資産の増加は現金及び有価証券の増加によるところが大きいです。利益の蓄積および保有している有価証券の価格上昇が理由だと思われます。2018-3期の総資産450億円に対して現金および有価証券が200億円と、キャッシュリッチです。



以下のグラフは負債(B/Sの右側)の内訳推移です。

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有利子負債がほとんどありません。自己資本も確実に増えています。


キャッシュフロー

全体

以下のグラフは各種CFおよび現金同等物と有利子負債の推移です。

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  1. 営業CFが常にプラスである
  2. フリーCFも原則プラスである
  3. 現金が有利負債よりも圧倒的に多い


つまり、安定した収益源を持っており、その範囲で投資している。しかも、借り入れに頼る必要もなくキャッシュが潤沢。きわめて安全志向です。


営業CF

以下のグラフは営業CFの推移です。

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不審な点は特にありません。

投資CF

以下のグラフは投資CFの推移です。

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買収は2007-3期以降は行っていません。
2014-3期の「買収および資本提携」はフマキラーとの資本提携を一部解消したことによるものです。

財テクは主に有価証券の売買、定期預金の預け入れ・払い戻しでした。

エステーの事業維持のための投資は設備投資のみでした。

財務CF

以下のグラフは財務CFの推移です。

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エステーの財務CFは株主に関わるものがほとんどです。自社株買い、配当金の支払いでほぼすべてが説明できます。

まとめ

エステーは景気循環の影響をやや受けるディフェンシブな銘柄です。きわめて安全志向な経営を行っており、キャッシュは潤沢。また、そのキャッシュを使った株主還元に積極的で好印象です。
ただし、エステーの売上の殆どが国内によるものであり、成長はあまり期待できないのでその点は割引いて評価が必要です。

今回はここまでです。