株式銘柄紹介ブログ

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富士ソフトサービスビューロ 事業内容と業績推移

事業内容

富士ソフトサービスビューロはコンタクトセンターの運営やBPO事業を主な事業として営んでいます。


同社の事業は「コールセンター」「BPO」の2つのセグメントに分類されており、それぞれ以下のような事業内容です。

セグメント 事業内容
コールセンター 主に顧客が設置しているお客様相談窓口などの電話受信業務を受託している。年金相談窓口、ITヘルプデスク(テクニカルサポート)、受注センター(ECサイト、通信販売などの受注問い合わせから最終工程の出荷、配送まで)、緊急対応コールセンター(製品、商品の欠陥や不具合、リコール対応のための緊急対応コールセンターを立ち上げ、受信などオペレーション対応)、その他各種ご案内業務
BPO 主に顧客が設置している事務センターなどで行う業務を受託し、顧客に代わって業務処理を行っている。事務代行(送付物の受領・受付、書類開封・封入物の確認、書面の記載内容確認及び記載内容の不備解消、仕分・文書管理・保管、封入・封緘・発送等の事務業務)、文書電子化・原本保管業務、データエントリー、その他各種処理業務(マイナンバー制度の開始に伴い発生するマイナンバー収集、入力等の処理業務、その他各種事務局の運営サポート等)。業務受託に先立って人材を派遣し、顧客業務プロセスを習得・解析しトータルなアウトソーシングにつなげているようである。これが売上や利益にどの程度貢献しているかは記載がないので、強みとしていいのかは不明

有価証券報告書より表を作成

 
以下は2020年3月期のセグメント別の売上と利益の構成です。

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有価証券報告書よりグラフを作成


「コールセンター」「BPO」がそれぞれ同程度売上を稼いでいます。

業績推移

売上と利益

以下のグラフは売上と営業利益率、営業利益、純利益の推移です。

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売上と利益がともに成長しています。2020-3期の営業利益率はおおよそ5%程度あり標準的な水準です。2020-3期に減収減益となっているのは「主要顧客である日本年金機構からの受託業務で不正があり、競争入札参加資格が2019年4月8日から2020年1月7日まで停止し、新たに業務を受託できなかった」ためです。



以下のグラフはROAとROE、財務レバレッジの推移です。

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財務レバレッジは2018-3期以降下降傾向、ROA、ROEは上昇しています。

セグメント別の売上推移

以下はセグメント別の売上構成および売上増加量の推移です。

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「コールセンター」「BPO」いずれも売上が増えていますが、増加量は「BPO」のほうが大きいです。


以下は収益性質別の売上構成です。

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決算説明会資料よりグラフを作成


継続業務による売上を着実に伸ばしていることがわかります。


以下は顧客別の売上構成です。

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決算説明会資料よりグラフを作成


官公庁向けの売上が多く、さらに増加しているのは官公庁向けの売上です。有報によると特に日本年金機構向けの売上が多く、2020-3期時点で売上の40.1%を占めています。


同社は2016-3期以降、官公庁向けの「コールセンター」「BPO」業務の受託を増やし成長してきたといえます。

資産

以下のグラフは総資産と自己資本比率の推移です。

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総資産は増加しています。自己資本比率は2018-3期までは下降傾向でしたが、それ以降は上昇し2016-3期よりも高くなっています。2020-3期の自己資本比率は62%で高い水準です。


以下のグラフは資産の内訳推移です。

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現金と売掛金が資産の大半を占めています。有形固定資産は5億円程度でその多くが工具、器具及び備品(PCなど作業に使う道具類)です。それに対して地代家賃が1.8億円、賃借料が0.68億円なので借りている資産はオンバランスしているものと比べて多額となりそうです。その額を算出するのはちょっと難しいですが、国際会計基準を採用する同業他社「ベルシステム24ホールディングス」は使用権資産の減価償却費49億円に対して262億円の使用権資産を認識しているので、仮に賃借料の5.34倍で使用権資産の額を求められるとすると13.24億円の建物、土地を利用していると推測できます。実際には5.34年のリース契約が残っているというだけだと思うので、契約の状況に応じて倍率は大きく変わることになると思われます。事業にかかわる資産の実態としては国際会計基準のほうがわかりやすいので日本でもこのリース会計基準を採用してほしいものです。



以下のグラフは負債の内訳推移です。

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自己資本とその他流動負債が大半を占めています。


以下のグラフは自己資本の内訳推移です。

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利益剰余金の増加によって自己資本が積みあがっており健全です。



同社の簿外債務についてですが有報に記載がある範囲では解約不能のオペレーティングリースが2020-3期時点で580万円程度あるのみです。

キャッシュフロー

営業CF

以下のグラフは営業CFの推移です。

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営業CFは成長しています。


投資CF

以下のグラフは投資CFの推移です。

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投資CFの多くが設備投資等によるものす。



以下のグラフに投資CFのうち設備投資の支出のみを抜き出し、図示します。

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有形固定資産や敷金・保証金の差入れと無形資産の取得がすべてです。


以下の表に有報記載の「設備投資の状況」の内容をまとめました。

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事業拠点に対する投資が大半を占めていることがわかります。特に工具備品等。


買収についての情報は見つかりませんでした。

財務CF

以下のグラフは財務CFの推移です。

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株主への支出と借入の返済で財務CFはほぼ説明できます。2016-3期の上場時に資金調達し、その後は返済しているという格好です。


以下は投資CF中の株主に関するCFの内訳です。

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特にいうことはありません。


全体

以下のグラフは各種CFおよび現金同等物と有利子負債の推移です。

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営業CFはプラスであり、投資CFも営業CFの範囲内で行われています。現金は増え、有利子負債は減少しています。経営状態はよいと評価しています。

まとめ

富士ソフトサービスビューロの2020-3期の売上は105憶円、営業利益は5.6億円、営業利益率は5.4%でした。4年間の平均売上成長率は7.6%、営業利益成長率は22.6%でした。

官公庁へのビジネスで売上が大きく成長しました。一方で民間向けの売上は増えていません。2016-3期の決算説明会資料でも民間企業とのビジネスは競争が激しく値下げ圧力が高いと述べられており、民間での激しい競争を避けてうまく事業を拡大したということでしょう(官公庁でも競争はあるが民間企業よりはましという風にとらえています)。一方で売上の大半が官公庁からのものであり、公の方針変換の影響を受けやすいというリスクがあります。また、同社は日本年金機構向けの業務で不祥事を起こしており、競争入札への参加が一時停止されていました。現時点では解除されているものの今後の入札に影響については慎重に見ていく必要があります。当面は不祥事の影響が今後数年の売上に現れないかを注視したいです。

昨今国は民間企業の資本を活用する方針を打ち出しているので(特にインフラで)、官公庁の業務のアウトソーシング化も進んでいくと予想されています。それに伴って同社の売上もおそらくは伸びていくのだとみています。


今回はここまでです。