株式調査記録

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クエの株式投資 初心者講座 第5回「良い銘柄の特徴」

概要

「妥当な価格でよい銘柄を買って長期で保有すれば利益が出る」ということを前回の講座で述べました。じゃあ「良い銘柄って何?」というのがここでの話題です。

良い銘柄とは「10年20年といった長期間売上と利益が伸びていく」「投資家が自信をもって保有し続けられる」会社の株のことです。そういった会社の特徴を以下にまとめています。しかしながら、これらの特徴に当てはまるから良い銘柄だとは断言できません。良い銘柄というのはおおよそこんな特徴を持っているという程度に思ってください。

将来のことは誰にもわかりません。しかし、あきらめる必要もありません。銘柄を調査し、0%よりは10%、10%よりは20%と理解を深め、成功への確度を高めていくことが重要なのです。そのためには悪い特徴を多く持った銘柄への投資をできるだけ避け、良い特徴を多く持った銘柄に投資する必要があります。悪い特徴は良い特徴の裏返しです。そのために以下に記載する「良い銘柄の特徴」を用いてください。

良い銘柄の12の特徴

売上と利益が成長していること

会社の価値とは売上と利益によって測られるものなので、売上と利益が成長している会社は価値を向上させているといえます。少なくとも過去10年の業績を確認し、売上と利益が増加していることを確認してください。景気循環株は不景気の際に業績を悪化させるものなので全体として売上と利益が増えていればよしとしてください。売上と利益が増えていることは会社が何かしらの強みを持っていることを示唆しています。もちろん、これが将来にわたって続くという保証はなく、ただの偶然かもしれません。過去の業績だけを頼りに良い銘柄だと判断するべきではありません。しかし、良い銘柄を探すうえではここが出発点になることが多いです。

バランスシートが健全である

利益を出している会社の自己資本はどんどん積みあがっていきます。したがって経営状態が良い会社というのは自己資本比率が上昇することが多いです。過去10年のバランスシートをみて、自己資本が積みあがっているか、自己資本比率が上昇しているかを確認しましょう。ただし、自己資本比率は会社の資本政策の方針によってコントロールされることがあるため、自己資本が積みあがっているかを重視するべきです。

業績に問題がないのに自己資本比率が大きく低下している、あるいは自己資本比率が極めて低い水準にある場合、成長投資のために大きな借入をしていることが多いです。成長投資のための借入は決して悪いことではありません。しかし、借入はレバレッジの役割を果たします。キャッシュ創出能力が高い事業、例えば通信事業や電力事業を営んでいる会社であればリスクはヘッジされますが、そうでなければリスクが高まります。心配性な投資家にとってはそういった会社の株を長期で保有するのは難しいでしょう。借入が少なく自己資本比率が高い会社の株を選ぶべきです。

また、現金が増加傾向にありバランスシートに現金が溢れている会社もよい銘柄である可能性があります。現金をため込むだけため込んで株主に還元しないまま、買収に失敗して無駄遣いするような会社もあるので一概には言えませんが、少なくともキャッシュ創出力がある事業を営んでいることは確かです。将来を約束するものではありませんが、調べてみる価値はあります。

高い営業利益率

15%とか20%といった高い営業利益率を出すことができる会社というのは何かしらの強みを持っているか、その事業の競争環境が良いことが多いです。営業利益率が高いということは「高い価格で商品やサービスを売れている」あるいは「他社と比較して低いコストで商品やサービスを製造している」ということです。通常会社の事業は同業他社との競争にさらされており、顧客は複数の商品やサービスから何を買うのかを選ぶことができます。となれば自社の都合で商品やサービスの価格を高くすることはできません。なぜなら顧客は他の商品やサービスと比較して良くなければ高いお金を支払わないからです。良い商品やサービスを作っても、他社も同じことができれば高い価格はつけられません。「他社に真似できない良いもの」あるいは「他社に真似できない低コスト」でなければ高い営業利益率は達成できません。また、競争が緩やかであればライバルが少ないため比較的高値でサービスや商品を売ることができるので営業利益率は高くなりやすいです。

さらに高い営業利益率は不景気などの売上減少局面で利益を確保する役割を果たします。例えば営業利益率20%の会社の売上が15%下がったとしても、5%の利益を出すことができます。これで大きな差が出たのが新型コロナウイルス流行下のホテル業界です。例えば、グリーンズ(6547)の営業利益率(2019年6月期)は7.8%、アメイズ(6076)は24.6%(2019年11月期)、ABホテル(6565)は25.5%(2019年3月期)でした。現時点(2021年2月19日)でグリーンズは赤字を出し続けていますが、アメイズとABホテルはぎりぎり黒字を守っています。

成長余地が残されていること

成長する余地がなければ、将来の売上と利益が増えることを期待できません。例えば、規模が1000億円の市場で事業を営んでいる会社の売上が900億円なら事業の今後の成長はほぼあり得ません。もし、売上が10億円しかないなら成長の余地はまだあります。

業界の市場規模拡大が見込めるのであれば今後の成長をかなり期待することができます。なぜなら市場規模が拡大しているときというのは競争が緩やかになりやすく、競争優位性がない会社であっても成長していける可能性があるからです。言わずもがなですが競争優位性のある会社は当然成長できるので、株を買うのであればこちらを買うべきです。また、市場規模が拡大しているので売上も増やしやすいです。例を挙げると上下水道の運用管理保守や道路などのインフラメンテナンスの市場規模は今後増えていくはずです。上下水道の運用管理保守は国策によって民間に業務委託され始めており、道路などのインフラは老朽化が進みメンテナンス需要が増えています。別分野では介護が必要な高齢者の人数も2040年ごろまでは増加していくはずなので介護福祉需要はこれからも増えていきます。したがって、こういった業界で事業を営んでいる会社には成長余地がある可能性が高いです。

市場規模に対して小さな売上の会社や国内の特定地域でしか事業を営んでいない会社にも成長余地があるかもしれません。自社の製品やサービスが認知されることによってシェアが拡大したり、全国に営業拠点を開設していくことに伴って売上や利益が成長していけるからです。

ローテクであること

最先端技術を用いて事業を営んでいる会社は常に技術革新によって競争優位性を脅かされる可能性があります。また、生産設備や研究開発費に多大なお金をかけなくてはならず、業績を維持する難易度が非常に高いです。特にバイオテクノロジー、半導体は避けたほうが無難です。必ずしもハイテクがダメというわけではありません。ハイテクよりはローテクのほうが望ましいというくらいに思ってください。最先端技術を有する会社というのは華々しくで魅力的なのですが、技術革新が起きにくい分野の会社のほうが長期で投資する対象として優れています。例えば食品、日用品の製造販売など。

売上が安定しやすいこと

売上が安定しやすい事業を営んでいる会社の業績は悪化しにくく、現時点での業績が良いのであれば将来もよい可能性が高いです。ストック型のビジネスがこれに該当します。例えば不動産賃貸業や管理業のように定期的に決まった売上が見込める事業や、サブスクリプションモデルを採用したサービス提供事業、設備のメンテナンス事業などがそうです。景気に左右されないディフェンシブな事業を営んでいる会社も同様です。食品、日用品、医薬品の製造販売など。

顧客のビジネスに深く根差した製品やサービスを扱っている

顧客のビジネスに深く根差した製品やサービスは代替されにくかったり、価格を高く設定することが可能です。顧客が減りにくいので売上も安定しやすいですし、さらに高く売れるのであれば利益率が高くなります。

例えば、アリアケジャパン(2815)は畜産系天然調味料を顧客の要望通りの味に調合して提供する事業を営んでいます。畜産系調味料の原材料は自然由来なので味がその時々で変化します。食品製造会社や飲食店にとっては差別化のためや品質を維持するために味を一定に保つことがどうしても必要ですが、複数の原材料を調合して望みの味を作ることは極めて難しいです。そのため顧客はアリアケジャパンを頼るわけですが、顧客のビジネスにとってどうしても必要であり失敗も許容しがたいため、代替されにくく、なおかつ価格にプレミアムが発生します。同社の2020年3月期の営業利益率は22.2%です。

また、その他の例では会計ソフトは一度顧客に使われてしまえば別のものに変更されにくいです。なぜならこういった業務ソフトウェアは変更すると習熟までに時間がかかりコストが発生するためです(業務ソフトウェアの種類によってはオペレーションを見直す必要もある)。

競争環境が良い、または競争優位性がある

競争環境が良かったり、競争優位性があると利益を出しやすいです。価格を高く設定することが可能だからです。

デスクトップパソコンのOSで独占的な立場をもつマイクロソフトの2020年6月期の経常利益率は37%でした。デスクトップパソコンを買った際のOSの選択肢はほぼWindowsしかないといってもよく、顧客には選択肢がありません。したがって、顧客はWindowsの価格が高かろうと買わざるを得ないため、マイクロソフトはWindowsの価格を高く設定することが可能です。

プラネット(2391)は化粧品や日用品業界のEDIプラットフォームを提供しており、独占的な立場にあります。同社は発足の経緯もあり、何度となく利用料金を値下げしていますが同社の2020年7月期の営業利益率は23.9%です。化粧品や日用品業界のメーカや卸売業者がEDIを導入するためには同社のプラットフォームを使わざるをえず、選択肢がありません。したがって、価格決定力はプラネットにあり、料金を値下げしながらも高い利益率を維持しています。

竹本容器(4248)は独占的な立場にはありませんが、スタンダードボトル市場においてトップシェアを有しています。同業他社よりも多くの金型を持つことで製品のカスタマイズ力で差別化ができており、競争優位性がある事業を営んでいます。さらに金型を作るには多額の資金と長い開発期間が必要であり、これが参入障壁となっているほか、スタンダードボトル市場はニッチなので大資本が参入しがたく競争環境は悪くありません。竹本容器の2020年12月期の営業利益率は12%です。これは製造業としては高い水準にあります。

参入障壁が高く新規参入が難しい事業

ライバルがすくなければ競争が緩やかになりやすいです。例えば、事業を始めるために国の認可が必要な通信事業業界では大手4社でシェアを争っています。4社というのはかなり少ない数です。その分、競争も緩やかで利益を出しやすいです。鉄道事業や航空事業も同じように国の認可が必要で参入障壁が高い事業です。

また、斜陽であるとか市場規模が小さいために大資本が参入するには割に合わないというのも参入障壁に近い効果があります。漬物の製造販売といった斜陽な業種やスタンダードボトルといったニッチな市場がそれにあたります。大手の会社というものは売上や利益の規模が大きく、成長するためには大きな売上と利益が必要であり、市場規模が小さかったり縮小している業界に参入することはなかなかありません。強いライバルが出現しにくいため、比較して競争は穏やかになります。

売上と利益の維持のために大きな設備投資を必要としない会社

製造業であれば売上と利益の維持のために工場などの生産設備に多大な投資が必要です。例えば、古くなり使えなくなった機械の更新や、ライバルとの競争のために最新式の機械に入れ替える必要があったり、メンテナンスをしなくてはならなかったりと事業の維持に設備投資が必要です。当然ですが、成長のために新たに工場を建てるとなればさらに多くの設備投資をすることになります。このように生産設備というものは金食い虫で、製造業は売上と利益を生み出すために多くのお金が必要な業種なのです。製造業だから必ずしもダメだというつもりはありませんが、売上と利益を生み出すためにお金をあまり必要としない事業のほうが業績は良くなりやすいです。

例えば、幼児活動研究会(2152)は幼稚園に体育講師を派遣する事業と園児向けのスポーツクラブを営んでいます。同社はスポーツクラブの施設を保有するのではなく借りて事業を営んでいます。また、派遣された体育講師は顧客保有の施設で仕事をするため、生産設備への投資をあまり必要としていません。賃貸費用がかかっていますが、同社の場合だとスポーツクラブのために施設を保有するよりも効率が良いとの判断でしょう。同社の営業利益率は非常に高く、新型コロナウイルスの流行前で18.4%(2019年3月期)あり、現時点(2021年2月20日)でも黒字を維持しています。同社の自己資本比率は67.3%と高く、バランスシートには現金や投資資産であふれています。

事業内容がシンプルで理解が容易である

理解できないものには投資するべきではありません。まず、銘柄の良しあしがわかりませんし、何か問題があったときにそれが致命的なのかを判断することも難しいです。また、複数の全く違う分野で事業を営んでいる会社も避けたほうがいいです。2つ程度ならまだしも、4つや5つの事業を持つ会社だと理解のための労力が単純に4倍5倍になるだけでなく、良い事業と悪い事業が混在していた場合に、会社全体として価値が上昇していくかどうかを判断することが困難です。さらに、複数の事業を営む会社は単一の事業を営む会社ほど各々の事業に対する詳しい情報を開示しないことが多いので、事業理解の難度が高いです。例えばソニー(6758)は「ゲーム機」「光学センサ」「家電」「映画、音楽」「金融」といった有望な事業をいくつも抱えています。わたしにはこれら全ての事業を理解することはできそうもありません。

理想を言えば単一の事業のみを営んでいるか、売上と利益の大半を単一の事業から得ている会社が望ましいです。せいぜい2つの事業が限界だと思ってください。

IR資料が充実している

銘柄の良しあしを判断するためには情報が必要です。そして、その情報のほとんどは会社が公開するIR資料から入手します。したがって、IR資料が充実していると会社を調査するうえで大きな助けになります。「会社の事業はうまくいっているのか」「これからもうまくいきそうなのか」「会社の強みはなにか」「事業環境は良いのか」「会社の事業が持つ特有のリスクは何か」など知りたいことはいくらでもあります。逆に会社のIR資料が不十分だと会社の事業を理解することは困難です。また、決算が悪かった時に「なぜ悪かったのか」「一時的なものなのか継続的なものなのか」を判断することも難しいです。


最低でも以下のものがIRページで公開されていてほしいです。これらがない銘柄への投資はあまりしたくありません。

  • 事業内容についてわかるページや資料
  • 適時開示資料
  • 過去数年分の決算説明会の説明資料
  • 過去数年分の株主通信

さらに以下のものがあれば最高です。

  • 過去10年分の決算説明会の説明資料と株主通信
  • 決算説明会の動画や特に全文書き起こし、質疑応答の内容
  • 経営陣が何を重要だと考えているのかがわかる記載が含まれる資料
  • 会社の事業環境を説明する統計情報
  • 充実したセグメント情報
  • 統合報告書、ファクトブック


例えば、不二製油グループ本社(2607)はIR情報がかなり充実しています。過去10年分を超える決算説明会資料と株主通信、決算説明会での質疑応答の内容、中期経営計画、資料中の充実したセグメント情報など、ここまで情報を提供してくれる会社はなかなかありません。プラネット(2391)も決算説明会の全文書き起こしを公開しており親切です。一方で、朝日印刷(3951)は最新の決算説明資料はあるものの、過去の決算説明会資料や株主通信がIRページ上に公開されておらずやや不親切です。中央紙器工業(3952)は決算説明資料も株主通信もIRページに公開されておらず、相当不親切です。投資をするならIR情報が充実した銘柄にしましょう。