株式調査記録

主に日本の株式の調査結果をまとめています

不二製油グループ本社 事業内容と業績推移

事業内容

不二製油グループ本社は植物性油脂や業務用チョコレートの製造販売を主な事業として営んでいます。チョコレート用油脂の販売数量が全世界で3本の指に入り、業務用チョコレートで国内シェア1位、世界シェア3位を誇っています。


同社は各セグメントで以下の表の品目を製造販売しています。

セグメント 品目
植物性油脂 食用加工油脂、食用油、チョコレート用油脂
業務用チョコレート チョコレート
乳化・発酵素材 クリーム、マーガリン、フィリング、チーズ風味素材、USS製法による豆乳加工品
大豆加工素材 大豆たん白素材、大豆たん白食品、USS製法によるプレミアム豆乳製品、水溶性大豆多糖類

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以下は2020年3月期の品目別の売上および利益構成です。

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植物性油脂、業務用チョコレートが売上と利益の大部分を稼いでいます。食用油よりもチョコレート用油脂のほうが高付加価値品であるので、利益の多くが業務用チョコレートとチョコレート油脂によるものだと思われますが、開示情報からは確かなことはわかりません。


以下は2020年3月期の地域別の売上および利益の構成です。

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海外の売上が大きいですが、利益は日本で過半以上を稼いでいます。理由としては日本事業の調子が良かった、買収したBlommerがまだ利益貢献できていないことが挙げられます。


業績推移

売上と利益

以下のグラフは売上と営業利益率、営業利益、純利益の推移です。

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売上と利益がともに成長しています。2020-3期の営業利益率は5.7%%であり標準的な水準です。



以下のグラフはROAとROE、財務レバレッジの推移です。

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ROEは8%程度であり、標準的です。財務レバレッジが2019-3期に大きく上昇していますが、これはBlommer買収のために借入を増やしたためです。

品目別の売上および利益構成

以下は品目別の売上構成および増加量です。2019-3期に製菓・製パン素材が業務用チョコレートおよび乳化・発酵素材に分離(以下特に記載しない)。

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植物性油脂、製菓・製パン素材の売上がともに増加しています。特にBlommer買収によって業務チョコレートが増加しています。一方で、大豆加工素材の売上はやや減少しています。



以下は品目別の利益構成および増加量です。

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すべての品目の利益が増加しています。特に売上が減少している大豆加工素材の利益が増加していることから、同セグメントの収益性が急激に改善していることがわかります。業務用チョコレートの売上が増えている割に利益が増加していませんが、買収したBlommerの利益が思わしくないためです。


地域別の売上および利益推移

以下は地域別の売上構成および増加量です。

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売上はBlommerの買収のため欧米が大きく増加しています。また、日本とアジアも売上が増加しています。


以下は地域別の利益構成および増加量です。

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日本の利益がもっとも多く、利益の増加が最も大きいのも日本です。また、アジアも欧米も利益は増加しています。一方、欧米の売上が増えた割に利益は増加していません。買収したBlommerの利益が思わしくないためです。

資産

以下のグラフは総資産と自己資本比率の推移です。

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総資産は増加しています。自己資本比率は2015-3期まで上昇傾向にありましたが、それ以降は低下しています。買収のため借入を増やしたからです。2020-3期の自己資本比率は43%で標準的です。


以下のグラフは資産の内訳推移です。

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有形固定資産が多いです。同社の事業は成長のために生産設備への多大な投資を必要としています。また、無形資産が増えていますがこれは買収に伴うものです。



以下のグラフは負債の内訳推移です。

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2016-3期以降に有利子負債が大きく増えています。買収のため借入を活用したためです。


以下のグラフは自己資本の内訳推移です。

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利益剰余金の増加によって自己資本が積みあがっており健全です。


キャッシュフロー

営業CF

以下のグラフは営業CFの推移です。

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営業CFは成長しています。


投資CF

以下のグラフは投資CFの推移です。

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投資CFは「設備投資等」と「子会社・関係会社株式の取得・売却」によってほとんどが説明できます。2016-3期以降は買収を積極的に行っていることがわかります。


以下のグラフに投資CFのうち設備投資の支出のみを抜き出し、図示します。

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有形固定資産の取得が大半を占めています。2016-3期以降から投資額が大きく増えていることがわかります。


以下の図及び表に有報記載の「設備投資の状況」の内容をまとめました。

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以下は主な買収の一覧です。

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お主な買収はブラジルのHARALD、アメリカのBlommerで、いずれもチョコレートメーカです。2016-3期以降は買収にかける金額が多く、買収による成長を志向しています。不二製油グループ本社は近年業務用チョコレート事業に力を入れていますが、これは食用油よりも業務用チョコレート、チョコレート向け油脂のほうが付加価値が高く、収益性を高めやすいからです。Blommerはまだ利益に貢献できていませんが、課題が多い会社だからこの金額で買収できたわけで、今後の改善に期待しましょう。また、Blommer買収はアメリカ市場進出の橋頭堡となるほか、不二製油グループ本社が抱えている課題であるチョコレート原材料の調達(安定した調達、持続可能な調達)に寄与するため、良い買収になるのではないかと考えています。Blommer買収の意義は以下の通りです(米国Blommer事業概要および当社財務戦略説明会資料より)。

  • 環太平洋市場でのプレゼンス向上
  • 単一国家で最大のマーケットである米国市場への参入
  • 事業地域、取り扱い製品、原材料調達における相互補完性


一方、HARALD買収以降、米州の売上と利益は増加傾向にあるので、こちらは恐らく上手くいっているのでしょう。


財務CF

以下のグラフは財務CFの推移です。

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借入によるCFがとても大きいです。HARALDおよびBlommer買収のために合計1000億円規模の借入のCFがあります。


以下は投資CF中の株主に関するCFの内訳です。

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配当金の支払いがほぼすべてであり、配当金の支払い額は年々増えています。


全体

以下のグラフは各種CFおよび現金同等物と有利子負債の推移です。

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営業CFはプラスであり、成長しています。現金が増える一方で有利子負債が大幅に増えています。経営状態はよいですが、近年積極的な成長投資を行っており、それが報われるかは注意してみていきたいです。

まとめ

不二製油グループ本社の2020-3期の売上は4147憶円、営業利益は236億円、営業利益率は5.7%でした。14年間の平均売上成長率は6.3%、営業利益成長率は6.9%でした。

同社の強みは業務チョコレートおよびチョコレート油脂であり、世界第3位のシェアを有しています。業務用チョコレートは大手の寡占化が進み競争力が問われるフェースに突入しており、規模の拡大が必要との認識から2016-3期以降、買収を通じて成長率著しいブラジル市場、世界最大規模のアメリカ市場に参入しました。また、食用油と比較すると業務用チョコレートおよびチョコレート用油脂は高付加価値化が見込める製品であるため、チョコレート事業の成長に伴って同社の収益性も向上していくと思われます。

2019年1月に買収したBlommerはまだ利益に貢献できていませんが

  • 環太平洋市場でのプレゼンス向上
  • 単一国家で最大のマーケットである米国市場(2017年の世界シェア19%)への参入
  • 事業地域、取り扱い製品、原材料調達における相互補完性

など意味のある買収であり、収益性の改善を期待したいです。

また、近年大豆加工素材の収益性が改善しており、今後が楽しみです。


同社はHARALDおよびBlommerの買収のため大きな借入をしており、しばらくは大きな動きはないのではないかと思っています。Blommerの収益性を改善させ、借入をきちんと返していけるか注意してみています。世界的なチョコレート需要は成長しており(2016年時点で2016年~2020年に全世界で年間1.9%成長を予測)、おそらく問題はないと思いますが。



今回はここまでです。