株式調査記録

主に日本の株式の調査結果をまとめています

長谷川香料 事業内容と業績推移

事業内容

長谷川香料は主に食品向けの香料の製造販売を主な事業として営んでいます。


部門ごとの取扱品目は以下の表のとおりです。

部門 主要品目
フレグランス 香粧品香料、香粧品製品、合成香料(香水、オーデコロン等のフレグランス製品。クリーム、口紅、ヘアトニック等の化粧品。シャンプー、石鹸等のトイレタリー製品。芳香剤、洗剤等のハウスホールド製品)
食品 エッセンス(飲料、冷菓、デザート等)、食品用油性香料(菓子、スープ、酪農・油脂製品等)、食品用乳化香料(飲料、菓子、冷菓等)、食品用粉末香料(菓子、スープ、食肉・水産加工品等)、食品用抽出香料(飲料、冷菓、菓子等)、シーズニング(スープ、菓子、調味料等)、エキストラクト(飲料、冷菓、デザート等)、加工食品素材(加工食品、飲料、菓子等)、フルーツ加工品(飲料、冷菓、デザート等)、天然色素(飲料、加工食品等)

有価証券報告書より表を作成

 

以下は2020年9月期の部門別の売上および利益構成です。

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有価証券報告書よりグラフを作成


食品部門の売上が大半を占めています。



以下は2020年9月期の地域別の売上および利益の構成です。

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海外の売上は3割程度で、大部分が日本での売上となっています。


同社の国内のライバルとして高砂香料工業が挙げられます。同社と高砂香料工業との主な違いは以下の通りです。

  • 同社はフレーバに注力している(高砂香料工業はフレグランスの売上も多いが、同社の場合は少ない)
  • 営業利益率が高い(同社10%程度、高砂香料工業4%程度)
  • 売り上げに対する研究開発費、減価償却費の比率が高い(研究開発費が同社9%、高砂香料工業8%、減価償却費が同社5.7%、高砂香料工業4.3%)
  • 売上の規模は高砂香料工業に大きく劣る(同社502億円、高砂香料工業1524億円)
  • 海外売上比率も高砂香料工業に劣る(同社28%、高砂香料工業52%)
  • グローバル商品向けへの営業が難しく(各地域で十分な製品の供給が難しい)、ローカル商品向けの営業が中心となる


同社は高砂香料工業と比較して利益率が高く、十分な付加価値をつけて製品を売っています。一方で海外展開が遅れており、さらに規模の面で劣後しているため、グローバル商品向けの香料としては同社の製品は採用されにくいです。なので規模の面で高砂香料工業に追いつくのが難しいと思われます。各地域のローカル商品向けの香料を高い付加価値をつけて売っていくというのが同社の戦い方になるでしょう。


香料市場についての統計情報など

世界市場

以下は世界の香料市場規模および上位企業の売上推移です。

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長谷川香料の決算説明会資料よりグラフを作成


世界の香料市場は拡大しています。Givaudan、IFF、Fimenich、Symriseの4社で市場の57%を占めており、寡占化がかなり進んでいます(2017時点)。


以下は世界の香料市場 上位4社および高砂香料工業、長谷川香料の売上推移です。

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長谷川香料の決算説明会資料よりグラフを作成


上位4社の売上成長と比較して、国内2社の売上成長が劣っていることがわかります。長谷川香料と高砂香料工業が上位企業の売上に追いつくのは不可能でしょう。また、営業利益率も上位企業と比較して高いとは言えません。以下は直近2年の営業利益率です。

  • Givaudan 15~16%(google financeより)
  • Symrise 15%(年次レポートより)
  • IFF 11~13%(10-Kより)
  • 高砂香料工業 2~4%(有報より)
  • 長谷川香料 9~10%(有報より)


 
以下は世界の香料市場の地域別の規模推移です。

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長谷川香料の2020-9期決算説明会資料 p30より引用


世界の各地域で市場規模が拡大しており、特に、南米とアジアで大きく拡大していることがわかります。


以下は各地域の香料市場の特徴です。

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長谷川香料の2020-9期決算説明会資料 p31より引用


「ヨーロッパ・アフリカ・中東」「北米」では多くのユーザが優先サプライヤー制度を導入しており、優先サプライヤーに選出されないとシェアを取るのが難しいようです。長谷川香料の場合、グローバルに香料を供給する能力が低いため優先サプライヤーとして選出されるのは難しく、同地域でシェアを獲得するのは簡単ではありません。そのため同社はグローバルな香料の供給能力が問題になりにくいローカルな商品に焦点を絞り営業をかけているようです。

国内市場

以下は国内の香料市場規模および品目別内訳です。

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長谷川香料の決算説明会資料よりグラフを作成


世界と比較して市場規模の成長は穏やかです。また、フレーバーは横ばいである一方、フレグランス、天然香料が増加しています。長谷川香料は食品向けの香料の売上が大きく、国内のフレーバ市場が成長していないというのは良いことではありません。


以下は国内の香料市場の各社シェアです。

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長谷川香料の2013-9期決算説明会資料 p29より引用


2014-9期以降は資料がないので古いですが、おそらく現時点でもそれほど大きな変化はないと思われます。1位が高砂香料工業でシェア33%、2位が長谷川香料でシェア20%程度です。上位4社でシェア75%を占めており、寡占化が相当進んでいる市場といえます。国内市場は寡占化が進んでいる上に市場規模の成長も緩やかなので、国内で成長するのは簡単ではありません。

業績推移

売上と利益

以下のグラフは売上と営業利益率、営業利益、純利益の推移です。

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売上はほぼ横ばい。利益はやや減少しています。売上と利益の面では成長できていません。営業利益率も低下傾向にあります。ただし、2020-9期の営業利益率は10.7%あり、高い水準にあります。



以下のグラフはROAとROE、財務レバレッジの推移です。

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ROEとROAはともに低下しています。また、財務レバレッジも低下しています。


部門別の売上

以下はセグメント別の売上構成および増加量です。

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しいて言えばフレグランス部門の売上がやや増加している。

地域別の売上

以下は地域別の売上構成および増加量です。

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海外売上比率はこの15年間で7%から28%まで上昇しています。アジアと米国の売上がともに伸長しています。一方で日本での売上は減少しています。おおよそ日本での売上減少を海外の売上増加が埋める形となっています。


以下は地域別の利益構成および増加量です。

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日本での利益が減少している一方で海外の利益が増加しています。ただ、日本での利益減少を海外の利益増加によって穴埋めできてはいません。


同社の利益率は高いですが、収益の柱である日本での売上・利益は減少しており、厳しい状況です。日本での利益率は低下傾向にあり、国内市場の成熟化が進む中での競争激化といった要因で高い付加価値をつけて売ることができる余地が減っているのだろうと推測しています。それを補うために海外進出を加速させてはいますが、まだ、時間がかかりそうです。


資産

以下のグラフは総資産と自己資本比率の推移です。

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総資産は増加しています。また、自己資本比率も上昇傾向にあり、2020-9期の自己資本比率は81%と非常に高い水準です。


以下のグラフは資産の内訳推移です。

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有形固定資産が多いです。香料業は研究開発や製造設備に多大な投資が必要だからです。現金がやや増えているのと有価証券などが大きく増加しています。


以下は2020-9期の有価証券などの内訳です。

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過半が株式であり、含み益が出ています。株式の多くが取引先のものです。



以下のグラフは負債の内訳推移です。

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大部分が自己資本であり、自己資本は増加しています。


以下のグラフは自己資本の内訳推移です。

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利益剰余金の増加によって自己資本が積みあがっており健全です。


キャッシュフロー

営業CF

以下のグラフは営業CFの推移です。

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営業CFは横ばいです。営業利益ベースでみると減少していたので、実態はそれほど悪くないのかもしれません。


投資CF

以下のグラフは投資CFの推移です。

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投資CFはほぼ設備投資等です。また、投資有価証券などの売買によって一部の資金を調達していること、2015-9期と2017-9期に買収を実施していることがわかります。


以下のグラフに投資CFのうち設備投資の支出のみを抜き出し、図示します。

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以下の表に有報記載の「設備投資の状況」の内容をまとめました。

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乱暴ですが簡単にまとめると以下の通り。

  • 2007-9期までに生産力強化強化のために国内生産設備・研究設備に投資を実施。同様に業務改善・合理化のため基幹業務システムへの投資を実施
  • 2008-9期~2009-9期に中国に新工場を建設
  • 2013-9期~2014-9期に中国にさらに新工場を建設
  • 2017-9期にマレーシアに新工場用の用地を取得
  • 2020-9期にアメリカ新工場を建設

 

以下は主な買収の一覧です。

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Peresscolの買収は東南アジアにおいて同社の生産拠点を確保する狙いがあります。今のところ東南アジアは比較的順調に売上と利益を伸ばしています。


米国では買収も活用しつつ成長を目指しています。FLAVOR INGREDIENT HOLDINGSの買収では計画通りに利益を出すことができず、未償却の「のれん」をすべて減損処理しており22.8億円の減損損失が発生しています。MISSSON FLAVORS & FRAGRANCESも同じ轍を踏まないか心配です。ただ、米国で成長するためにローカルに展開する食品の高収益を狙える分野の顧客を獲得するために必要な買収だと思うので、失敗を恐れずにチャレンジしていってほしいです。今のところ米国は規模の拡大や営業の強化など成長を重視しており、利益はしばらくはついてこないのかなと思っています。


中国は2014-9期に新工場を建設したものの売上と利益が伸び悩んでおり、苦戦しています。それでも2005-9期と比較すると大きく成長しているので中国への進出は今のところ成功していると思っています。今後どうやって売上と利益を伸ばしていくのかを注視したいです。製造原価圧縮や営業体制の強化など地道な努力を続けており、するべきことはやっています。


財務CF

以下のグラフは財務CFの推移です。

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大半が株主関係です。


以下は投資CF中の株主に関するCFの内訳です。

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特にいうことはありません。


全体

以下のグラフは各種CFおよび現金同等物と有利子負債の推移です。

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営業CFはプラスです。ただし、成長はしていません。現金が増える一方で有利子負債が大幅に減少しています。経営が上手くいっている会社のCFです。

まとめ

長谷川香料の2020-9期の売上は502憶円、営業利益は54億円、営業利益率は10.7%でした。15年間の平均売上成長率は0.3%、営業利益成長率は-1.6%でした。

同社は国内2番手の香料会社であるものの、世界の大手企業と比較して規模が小さく、西洋の大手ユーザから優先サプライヤーに選出されるのが非常に難しい状況にあります。そのため同社は各地域のグローバル商品向けではなくローカル商品向けに営業する、規模ではなく高付加価値をつけて香料を販売できる分野で戦う戦略を取っています。また、収益柱である日本では売上と利益が減少し続けており、海外進出によってその穴を埋めようとしてはいますが海外で十分な利益を出すには至っていません。同社の戦略の成否はまだわかりません。今後の海外事業の進捗に期待したいです。世界大手に同じやり方で戦ってもおそらく勝ち目はないので、同社のやり方は個人的に良いやり方だと思っています。また、IR資料が充実しており、戦略も明確です。

したがって、同社の今後の見どころは

  • 国内の売上・利益の減少がどこまで続くのか
  • 海外事業の利益が国内の利益減少を埋めるまで成長することができるのか

あたりだと思っています。


今回はここまでです。