株式銘柄紹介ブログ

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2021年 IPO 簡易調査 4177 i-plug

概要

2021年に新規上場した銘柄のうち、面白そうだなと思った銘柄を簡単に紹介します。投資するに優れた銘柄とは限らないためあしからず。


今回の銘柄はi-plugです。この会社は主に新卒採用市場で企業が直接学生にインターンや面接のオファーと出すことが出来る採用サービスを提供しています。

事業内容

企業向けの新卒採用サービス「OfferBox」を運営。リクナビ、マイナビに代表されるエントリー型とは異なり、企業から学生に向けてインターンシップや面接をオファーするダイレクト型の採用サービスとなっている。ダイレクト型は顧客企業が能動的に採用活動を行うことができ、新しい採用手段となっている。


以下の表にエントリー型とダイレクト型のメリットデメリットをまとめた。

採用方式 立場 メリット・デメリット
エントリー型 企業 1学生当たりの接触コストが低く、大量に学生を集めることが出来るというメリットがあるが、大量選考となりやすく選考工程で非常に多くのコストがかかるというデメリットがある。また、知名度の低い企業や部署では学生が集まりにくいため、費用をかけても学生が集まらないといったこともある
エントリー型 学生 自由に企業を選択できるが多くの企業に応募する必要があり、面接前の事前審査もあるため効率が悪い
ダイレクト型 企業 学生を探す手間はかかるが選考コストを抑えられるため結果的に採用コストを抑えることも可能(1学生当たりの採用コストは高いが、エントリー型で大量に書類選考、説明会、面接を行うのと比較すればトータルの採用コストは低減できる)。また、知名度の低い企業や部署であっても学生を集める手段となりうる
ダイレクト型 学生 オファーを承認すれば、書類選考を経ずに面接を受けることができるため効率は良い。一方で自分で企業を選択できず、自分が望まない企業からのオファーしかないということもありうる

 

エントリー型とダイレクト型は競合する面もあるが、企業ニーズによって住み分けが可能と考えている。


OffterBoxの学生登録人数、企業登録数、アクティブユーザー数。

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2021年3月期決算 決算説明資料p17,18より引用

新卒の大学生はおよそ45万人程度なので全体の3割から利用されている。登録学生・企業数は増加している。また、アクティブユーザー数も増加しており、着実に使われるようになってきている。


インターンシップ、面接などのオファー承認率。

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2021年3月期決算 決算説明資料p19より引用


本選考期間はエントリー型と競合しやすいと考えられるが2021年卒の利用率は昨年から向上しており、OfferBoxが学生から利用されるようになっていることがわかる。


学生がOfferBoxを使って就職した人数。

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2021年3月期決算 決算説明資料p20より引用


2021年卒の就職人数は3547人で登録人数の2.4%しか就職しておらず、学生からするとまだまだOfferBoxで就職が決まるとは言いにくい。採用企業からみると2020年3月期の登録数は6214社であり、1社あたり0.5人程度採用ができている。こちらはそこまで悪くないように見える。



総じて採用プラットフォームの規模成長は申し分ないが学生就職率・採用能力には改善の余地がある。

競合

業界内のポジションをまとめた資料。

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2021年3月期決算 決算説明資料p41より引用


リクナビやマイナビと比較すると利用企業は少ないけれど、業界三番手くらいにつけている。ダイレクトリクルーティングにおいては企業利用率はトップ。


ダイレクト型の競合として

  • キミスカ 学生登録者数約12.5万人、企業登録1392社*1
  • LabBase 学生登録者数3.4万人以上、理系学生に特化*2
  • みん就スカウト
  • dodaキャンパス

がある。

調べられる限りではOfferBoxがダイレクトリクルーティングのプラットフォームで最も規模が大きく使われている。


大手のリクナビもダイレクト型の採用サービスをやっていたが、リクナビダイレクトは2021年3月にサービスを終了している。推測だが、エントリー型のサービス事業者がダイレクト型のサービスを拡大するには利益を棄損する面があったのではないだろうか。つまり、大手顧客が採用枠をエントリー型から一部ダイレクト型に切り替えると全体の収益が減少してしまうような構造なのかもしれないということ。実際のところは不明ですが。



業界で最も大きなプラットフォームであるというのは大きな強みです。ネットワーク外部性が働き、最大のプラットフォームが更に強化される傾向があるため、競合他社が追いつくのは簡単ではありません。

業績

2017年3期から2018年3期の業績。単体決算。

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2021年3月期有価証券報告書 p3より引用


2019年3期から2021年3期の業績。連結決算。

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2021年3月期有価証券報告書 p2より引用


売上と利益が大きく成長しています。ただ、プラットフォーム型ビジネスで成功している会社にしては利益率が低いようにみえます。これには理由があり

  • 成長企業であり、成長のための投資が大きい
  • 前受け収入があるため、売上計上が実態のキャッシュフローよりも後ろにずれる

ためです。


同社の収益構造。

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2021年3月期決算 決算説明資料p9,10,14より引用


同社は本採用期間の前から学生と接触できる早期定額型の売上が大きく、早期定額型は売上の一部が後ろにずれて収益認識されます。そのため、同社は会計上の売上・利益よりも実際のキャッシュフローのほうがよいです。


前受収入となる売上が大きくキャッシュフローが良いため、成長投資に回す余力があり成長を加速しやすい収益構造といえます。いいビジネスですね。

まとめ

i-plugは新卒のダイレクトリクルーティング市場で確固たる地位を築いています。売上と利益も成長しており、収益構造もよいです。プラットフォーム型のビジネスでネットワーク外部性もあると思うので、かなり強い事業をやっているんじゃないかと思っています。価格次第では投資したい銘柄だと評価しています。


今回はここまでです。