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2935 ピックルスHD 調査結果

事業内容

ピックルスHDは主に漬物と惣菜を製造販売している食品メーカです。漬物と聞くと斜陽産業のイメージがあるかもしれませんが、同社はその中で売上を伸ばしています。主にキムチや浅漬けを製造しており、「ご飯がススムキムチ」は同社の大ヒット製品です。また、子会社のフードレーベルが牛角キムチを取り扱っています。


漬物業界では珍しく同社は全国に生産拠点・物流網を構築しており、自社で生産した製品のみならず他社から仕入れた商品を日本全国に供給しています。


製品と商品の売上比率の推移です。


有価証券報告書よりグラフを作成
 

おおよそ65%程度が製品の売上になっています。


また、ある程度推測が混じってしまうのですが2022-2期決算の売上のうち

  • 194億円が漬物(製品)
  • 102億円が惣菜(製品)
  • 100億円~150億円が漬物(商品)
  • 0~50億円が漬物以外、調味料など(商品)

のような構成になっています。


したがって、売上450億円のうち、300億円~350億円が漬物、100億円が惣菜だとおもったらよいです。


競合他社

以下は漬物業界の各社売上です。


2022-2期 決算説明会資料 p16より引用


同社は漬物業界のトップメーカです。2008年以降、売上を増やしているのは同社と東海漬物、備後漬物くらいで、その他の会社の売上はほとんど変わっていません。そこから推測するに競合他社で強い会社はほとんどないと思われます。


ピックルスHDは漬物(製品・商品)だけでも2倍に売上を増やしており、業界内でもかなり強い会社なのではないでしょうか。


惣菜の分野においては

  • フジッコ
  • ケンコーマヨネーズ
  • エバラ食品
  • デリア食品(キューピーグループ)
  • イニシオフーズ(日清製粉グループ)

などの競合がいるようです。

強み

漬物業界におけるピックルスHDの事業の強みは

  • 漬物のみならず、惣菜、調味料、コラボ製品など幅広い製品開発力
  • 全国に生産拠点・物流体制をもっており、全国へ製品・商品を販売することが出来る
  • 生産性向上、食品衛生法のための設備投資を続けるだけの体力がある
  • 全国への販売網を土台とした商社機能を有しており、幅広い商品を顧客に提案できる

といった点があげられます。


総じて、強いライバルがいない漬物業界において食品メーカとして必要な施策をきちんと実行できるというのが強みであると考えています。

  • 需要が減少している漬物業界において、消費者のニーズに沿った漬物または漬物に限らない新商品開発
  • 食品衛生法厳格化のための設備投資、管理体制の構築(2018年の改正でHACCP導入義務化)
  • 原材料価格、人件費、物流費高騰に対応するための設備投資(物流効率化、工場の生産性向上)


漬物業界は零細企業が多く、こういった施策を実行できる事業者は限られているでしょう。また、全国をカバーする生産拠点、物流網を保有しているのは漬物業界ではピックルスHDと東海漬物くらいです。事業環境の悪化や事業主の高齢化などに伴って、漬物業界の寡占化は進むはずであり、ピックルスHDの業界内での影響力は高まっていくでしょう。同社の漬物業界におけるシェアは15%程度であり、寡占化はまだまだ進んでいくと思われます。


一方、惣菜分野でピックルスHDが強みを発揮できるのかはわかりません。惣菜市場は拡大しており、強みがある会社なのかどうかを見分けるのは難しいです。市場拡大に乗じて、他社に勝てる強みがなくても成長できてしまうという意味です。また、漬物業界とは異なり、拡大市場であるため競合他社も比較すると強い会社が多いように思います。

成長戦略

同社は以下の施策によって事業を拡大しようとしています。

  • 手薄な西日本エリアの販売強化
  • 漬物や総菜以外の売場への商品展開(冷食を検討している模様)
  • 給食や高齢者向け配食会社など新しい販売先への営業強化

 




2022年 会社説明会資料 p13、p21、p22より引用

業績

売上と営業利益率、営業利益と純利益の推移です。



有価証券報告書よりグラフを作成


売上と利益が16年間で大きく増えています。営業利益率も改善傾向にあり、2022-2期は6%程度となっています。

 

製品(自社生産)と商品(他社生産)の売上推移です。


有価証券報告書よりグラフを作成


製品・商品ともに売上が増加しています。特に製品の売上が大きく増えています。2010年から製造している「ご飯がススムキムチ」や総菜(2007-2期は11億円、2022-2期は102億円)の寄与が大きいです。商品については2017-2期にフードレーベルを買収したことで売上が増えています(牛角キムチなど)。



同社の営業利益率の改善は製品売上の大幅な増加によって設備稼働率が改善したことが寄与しているのかなと思っています。もちろん、生産性向上による効果もあったのかもしれません。有形固定資産に対する製品売上比は2007-2期の106%から2022-2期の218%へ上昇しています。

設備

同社は全国に生産拠点を有しています。


2022年 会社説明会資料 p10より引用

 

投資

設備投資と買収への支出額です。


有価証券報告書よりグラフを作成
 

設備投資が大半であり、オーガニックな成長を志向していることがわかります。


以下は主な設備投資の内容です。


有価証券報告書より表を作成


関西、中国、九州など手薄な地域へ新工場を建てていることがわかります。また、2021-2期に飲食事業を開始するために大きな投資をしています。この飲食事業は消費者ニーズの把握の意味合いが大きいと評価しています。今のところ、飲食事業は1億円程度の赤字のようです。


2022年 会社説明会資料 p23より引用

今後の設備投資は

  • キムチ専用工場建設(関東)
  • 関西の新工場建設

を予定しています。


3年で約60億円の投資ですが、営業CFの範囲内に収まっており、過去と比べるとやや控えめな規模かなと思います。


2022-2期 決算説明会資料 p33より引用

 


以下は主な買収内容です。


有価証券報告書より表を作成


フードレーベルの買収により有力ブランドの商品を拡充し、手柄食品の買収によって関東での生産力を強化しています。


フリーキャッシュフローの算出

フリーキャッシュフローの推移です。


有価証券報告書よりグラフを作成
 
フリーキャッシュフローは税引き前営業利益(NOPAT)の大幅な増加により改善傾向にあります。今後3年間で60億円の投資を計画していますが、それでも過去よりは余裕があるように思います。


投下資本利益率の算出

投下資本利益率(以降ROICと記載)の推移です。投下資本として非事業資産も含んでいます。したがって、ここでのROICは会社の価値創造に関するものだと思ってください。


有価証券報告書よりグラフを作成


ROICは上昇傾向にあります。2021-2期以降のROICは8%を超えており、高いです。ROICは大きく営業利益率と投下資本回転数に分解できるため、双方を確認します。


営業利益率と投下資本回転数の推移です。



有価証券報告書よりグラフを作成



ROICの上昇は営業利益率の改善によって、かなりの部分が説明できるとわかりました。営業利益率改善はおそらく製品売上の増加に伴う設備稼働率の改善によるもので、惣菜やご飯がススムキムチなどの製品が大きく寄与していると考えています。もちろん、生産性向上への投資も寄与しているとは思います。



以下は投下資本および各種資産の対売上比率の推移です。



有価証券報告書よりグラフを作成


有形固定資産の対売上比率が低下しており、資産に対する売上が増加していることがわかります。

まとめ

ピックルスHDは漬物業界のトップメーカであり、漬物市場寡占化の恩恵を受けることが出来る立場にあります。寡占化はまだまだこれからであり、しばらくは、この流れに乗って事業を拡大していけるのではないかと評価しています。また、製品の売上が大きく増加しており、過去と比較して事業基盤が強くなったように思います。


惣菜も好調で、漬物以外の分野でも今のところうまくやっています。


ただ、業績が白菜やキュウリなど原材料価格の変動に大きく影響を受ける点には注意が必要です。同社は契約農家からの調達を増やすなど企業努力をしてはいますが、比較的営業利益率の低い事業を営んでいるため、今後も業績は原材料価格の変動に振り回されるのかなと思っています。


同社が扱っているのは食品であり、景気動向には影響を受けにくく、ディフェンシブ志向の投資家には向いている銘柄のように思っています。


今回はここまでです。