株式銘柄紹介ブログ

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プログラムで株式分析 その3 「業績の良し悪しを評価する」

はじめに

本記事は

からの続きです。


前回は決算発表の結果がその後の株価変動に影響を与えていそうかを調べました。営業利益YoYに着目しましたがどうも関係なさそうだという結果でした。


色々反省した結果、「銘柄をグルーピングして、グループごとに分析したほうがいいのではないか」と思ったので、業績によって銘柄をグルーピング出来ないか考えています。


今回は業績の良し悪しを判別する方法と結果についてをお話しします。


業績の良し悪しを判別する方法について(やったこと)

さて以下のグラフをご覧ください。これは適当な2銘柄の売上と営業利益の推移です。
 


マネックス証券 銘柄スカウターより引用(ショーボンドホールディングス)


マネックス証券 銘柄スカウターより引用(ハリマ化成グループ)

 

何となくではありますが、1社目は業績が良く、2社目は業績が悪いように見えたのではないかと思います。


要するに私たち投資家は「売上や営業利益が増えていれば業績が良く、増えていないなら業績が悪いと感じる」ということです。


そこで今回は売上や営業利益が増えているのか否かを判別するために線形回帰分析を用いました。


以下は証券コード13100の線形回帰分析例です。


下の段のグラフが回帰分析結果を示しています。オレンジと緑の線が回帰分析結果で、青の点が実データです。直近5年の決算結果と次期決算予想を用いています。オレンジが中期の分析結果で、緑が短期の分析結果となっています。


ここでは回帰直線の傾きを業績トレンド(業績の方向性。業績が上向きor下向き)として用いています。傾きが正なら業績はよく、負なら業績は悪いということです。


今回は売上と営業利益を業績データとして用いています。営業利益の開示がない、または、欠損がある場合は分析対象から除いています。そのため、例えば銀行は分析対象となっていないはずです。さらに、最新決算期の業績予想が取得できないケースについても分析対象から除いています。


ちなみにデータは東証のJ-Quants APIから取得しています。月々1650円払っています。かなり使い勝手がよく、値段の割にいろいろなデータが取れるので良いです。

結果

データの分布

各トレンドのヒストグラムを以下に示します。





 

ざっくりとですが

  • 売上よりも営業利益の方が散らばっている(営業利益の方がよく変化する)
  • 短期の営業利益の方が中期と比べてやや散らばっている(短期の営業利益の方が変化がやや大きい)
  • 中期的には売上と営業利益が増えている銘柄の方が多い
  • 短期的には売上は増えている銘柄の方が多いが、営業利益はどちらでもない

といった傾向が読み取れます。


トレンドのヒストグラムは景気動向やイベントの影響を大いに受けそうです。例えば、2021年の段階で同じ分析をしたら、パンデミックの関係で短期と中期でもっとはっきり違いがでそうな気がしますし、2012年にやったら売上や利益が減っている銘柄が結構多かったのではないかと思うので。




各寄与率(R2と記載)のヒストグラムを以下に示します。寄与率とはつまりどの程度回帰分析が上手く行ったかの指標です(0で最低、1で最高)





ざっくりと

  • 短期では回帰分析は上手く行っているが、中期では上手く行っていない
  • 売上の方が営業利益よりも回帰分析が上手く行っている(営業利益の方が変化しやすいのだから当然)

がわかりました。


良くないなぁとおもうのは中期での寄与率が思いのほか低いことです。この方法で判断できない銘柄が相当数あるということです。

  • 期間を長く取ると様々な要因によって業績が予想外の動きする可能性が高まる
  • 線形で回帰分析していたが、他の回帰関数を使ったほうが良い

が考えられます。


回帰関数を変えたところで業績の予想外の変動をカバーするのは難しいと思うので、どうしたものかちょっと困っています。


また、寄与率が低いデータを除外してグラフを書けば正しい結果を得られるのではないかと考えましたが、実際には寄与率が低いデータを除外すると業績が悪い企業のデータを除外してしまい、これはこれで偏ったデータとなってしまいそうなので行っていません。


なぜなら業績が悪い会社だからといって売上や営業利益が線形に悪化するわけでないからです。おそらく非線形の形になるはず。逆に業績が良い会社というものは比較的線形になりやすいと思われるので寄与率が低いデータを除外すると結果が偏るということです。

データの相関

各トレンドデータの関係をヒストグラムにしました。






それぞれ弱い正の相関がありそうに見えます。回帰分析の寄与率を算出していないのでおそらくという程度(力尽きました)。


つまり

  • 長期的に売上・営業利益が増えているなら短期的に売上・営業利益も増えている(短期データと長期データには重複があるので当然そうなる)
  • 売上が増えれば、営業利益も増える

となっている可能性があるということです。


当たり前の話で面白味はないです。自分の力不足で深堀出来ていません。

業績判別方法と結果

今回の結果からだと

  • 業績が良く売上と営業利益が増えている銘柄については判別が可能
    • ただし、不規則に売上と営業利益が増える場合は難しい(当然だが)
  • 分析期間に業績が線形に悪化している銘柄であれば判別が可能

となります。


判別方法は簡単で

  • 線形回帰分析の寄与率が高く
    • トレンド(線形回帰分析の傾き)が正であれば業績が良く
    • トレンドが負であれば業績が悪い

という風に判別できます。


線形回帰分析の寄与率が低い銘柄については判別できないです。


以下に上記の方法で判別した業績の良い銘柄のグラフをいくつか示します。




業績の悪い銘柄のグラフです。




この方法で判別可能な業績の悪い銘柄は非常に少なかったです。つまり、寄与率が低い銘柄には相当数の業績が悪い銘柄が含まれていそうだということです。


線形回帰分析で判別可能なのは基本的に業績が良い会社ということになりそうです。

寄与率について

線形回帰分析が上手く行っている銘柄の業績はブレが少なく、投資家から見て業績を予測しやすい銘柄の可能性があります。つまり、株主資本コストが低い可能性があると考えています(ちょっと言いすぎかもしれないが、将来キャッシュフローの算定はしやすいかもしれない)。これは実際には事業内容を調べてみないとわからないことですが、過去の業績がブレないのであれば安定した事業を営んでいる可能性があるということです。


また、同様に線形回帰分析が上手く行っている銘柄は投資家から見て業績を予想しやすいがゆえに、その予想が外れた場合の影響も大きい可能性があります(あくまで私見ですが)。


そのため、寄与率は結構大事かもと思っています。

おわりに

今回は線形回帰分析を使って業績のトレンドを数値化することを試みました。


業績の良い銘柄であればある程度判別できるが、業績の悪い銘柄については難しいという結果でした。また、長期間の業績を分析するのであれば線形回帰分析は使うことは難しいです。その場合は非線形の回帰関数を用いることになるでしょうが、業績の悪い銘柄については今回と同様に難しいのではないかと思っています(業績悪化の際の複雑な業績変動を説明可能な回帰関数はあるのか)。


線形回帰分析は万能ではないですが、条件を限定すれば使えそうだとわかりました。次何をするかは決めていないのですが、今回判明した課題をなんとかするのは難しそうです。実力不足というやつです。


今回の分析結果はすべて以下に公開しています。生成したグラフや回帰分析の結果などすべておいています。興味があれば是非どうぞ。

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今回はここまでです。


以下に続きます。

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