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プログラムで株式分析 その4 「決算の良し悪しを評価する」

はじめに

本記事は

からの続きです。


前回は線形回帰分析を用いて業績の良し悪しを評価しました。結果、業績の良い株を識別することは出来そうだというところまでわかりました。回帰分析の寄与率を改善するのは難しそうなので諦めて、今回は別のことに取り組んでいます。


今回は決算の良し悪しを評価する方法についてお話しします。わたしは「良い決算を出した会社の一覧が欲しい」と思っているのでここでは「良い決算か否かを判別する方法」について書いています(もっといえば、「良い決算を出した会社は株価が上がるのか」が知りたいのですが、そこまではきちんと検証できていません)。

決算を評価する方法(やったこと)

まずは単純に前年同期との比較で評価できないか考えました。以下はある会社の決算の売上および営業利益をグラフにしたものです。上2つが単体、下2つが累計となっており、青色が前年、オレンジ色が最新年度の決算情報となっています。
 


グラフの例では最新年度の売上と営業利益が前年度を上回っていることがわかります。


しかし、これだけでは決算が良かったと評価することは出来ません。なぜなら前年度の決算が通常と比較して悪い可能性があるからです。


そこで次に過去決算の進捗率の平均値と最新年度決算の進捗率を比較することを考えました。つまり、最新年度の進捗率が過去平均よりも良いなら前年同期比較の問題を解消できます。


以下は過去決算の進捗率と最新年度決算の進捗率を比較したグラフです。過去は年間の売上・営業利益の実績値に対する進捗率、最新年度は業績予想に対する進捗率です。上2つが単体、下2つが累計となっており、青色が過去、オレンジ色が最新年度の決算情報となっています(単に実績値の平均値ではなく、進捗率を用いているのは最新年度決算の評価に業績予想の概念を組み込みたかったからです。投資家は会社が公表した業績予想を達成可能かどうかに興味があるはずだからです)。

 

グラフの例では過去の進捗率よりも最新年度の進捗率がよく、このままいけば業績予想よりもよい決算となりそうです。


ですが、これでもまだ決算が良かったと評価することは出来ません。なぜなら業績予想が過去と比べて悪い可能性があるからです。


そのため、更に最新年度の業績予想を含めた過去の業績が上向いていることもよい決算の条件とすることにしました。



したがって、今回は以下の条件を全て満たす決算を良い決算と定義しました。

  1. 前年同期と比較して売上と営業利益が増加している
  2. 過去平均の進捗率よりも最新年度の進捗率の方が良い
  3. 業績予想を含めた過去5年間の業績が増収増益基調である

 


ちなみに悪い決算が欲しければ、2の条件を

  • 過去平均の進捗率よりも最新年度の進捗率の方が悪い

とすればよいです。

評価結果(良い決算を判別できたか)

ここでは2023年8月4日に決算発表があった会社のうち良い決算と評価したものに絞って分析結果を載せています。全部で10社あります。


株価はマネックス証券の株価情報からスクリーンショットを取って張り付けています。8/4以降の株価を見てください。

2676 高千穂交易

過去5年の業績

決算の分析結果


株価の推移


 

3435 サンコーテクノ

過去5年の業績

決算の分析結果


株価の推移


 

3773 アドバンスト・メディア

過去5年の業績

決算の分析結果


株価の推移


 

4828 ビジネスエンジニアリング

過去5年の業績

決算の分析結果


株価の推移


6707 サンケン電気

過去5年の業績

決算の分析結果


株価の推移


 

7701 島津製作所

過去5年の業績

決算の分析結果


株価の推移


 

7994 オカムラ

過去5年の業績

決算の分析結果


株価の推移


 

8584 ジャックス

過去5年の業績

決算の分析結果


株価の推移


 

9685 KYCOMホールディングス

過去5年の業績

決算の分析結果

株価の推移


 

9857 英和

過去5年の業績

決算の分析結果


株価の推移


 

結果について

良い決算を判別することが出来ています。なおかつ、株価も割と素直に反応しているように見えます。


もしかしたら「良い決算開示を出した業績が良い会社の株価は開示直後上がる」と言えるのかもしれません。


今回分析対象とした8/4は1Q決算が非常に多いです。そのため株価が素直に反応したのかなと思っています。要するにサプライズになったということです。例えば1Qの決算が良かった会社が2Qの開示で良い決算だったとしても、それは1Qの開示時点で織り込まれている可能性があります。しかし、1Q時点であれば投資家にはそういった情報がため、良い決算であれば素直にサプライズとなるのではないかということです。


また、8/4の決算開示は271件ありましたが、良い決算だと判別されたのは10件のみで少ないです。結構取りこぼしがあるように思います。ちなみに今回のケースだと過去の業績が上向いているという条件がかなり厳しいようで、この条件だけで23件まで絞られています。


例えば「過去の業績が悪かった会社の業績が上向いたケース」はこの方法だと除外されます。


ただ、わたしは「業績が良くて、決算が良い会社の株価は上がるのか」を知りたいので現時点ではこれで十分だと思っています。


その他の日付の結果は以下にまとめています。


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おわりに

今回は決算の良し悪し、正確には良い決算をか否かを評価する方法を考え、実際に8月4日の決算を分析してみました。


とりあえず良い決算の会社の一覧を作成することはできました。ただ、取りこぼした良い決算がたくさんありそうです。まぁ、自分の目的は学術的なものではないので実用に足りえるなら良いかなと思っています。


8月4日の決算に限って言えば「業績の良い会社が良い決算を出したら直後に株価は上がっている」ので面白くなってきたと感じています(残念ながら利益にはつながりませんが)。「たまたま今の時期の地合いが良いだけ」という可能性があるので、もうすこし対象とする決算の数を増やして調べてみたいところです。


今回はここまでです。


以下の記事に続きます。

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