はじめに
本記事は
からの続きです。
前回は決算の良し悪しをプログラムにて判定しました。良い決算か否かは判定できていましたが、取りこぼした良決算も多そうだという結果でした。
今回は良決算を出した会社の株価は上がるのか調べていきます。これが本来の目的であり、前回までにやった「業績や決算の評価」はこのために調べたようなものです。実際に知りたいのは良決算だとわかってから株を買っても儲かりそうかなので、それに即した株価変動を調べています。
結果を先に述べると
- 確かに株価は上がる
- しかし、思ったよりも結果はばらけるし、上がり幅も小さい
といった感じでした。
調査方法(やったこと)
非常に簡単です。J-Quants APIで株価を取得できるので、決算後の株価推移を調べリターンを計算しただけです。
2023年6月11日時点の進捗期決算を全て調べました。例えばある会社が2023年6月11日時点で24年度の2Qまでの決算を発表していた場合は1Qと2Qを対象に決算結果とその後の株価の推移を調べています。
リターンとして算出したのは以下の8パターンです。使った株価はすべて「終値」です。
算出リターン | 説明 |
---|---|
決算発表日~決算発表翌日 | 決算発表によって株価が上がるのかを知りたいので算出 |
決算発表翌日~決算発表5日後 | 決算発表後に株を買って4営業日後に売却した場合のリターン(1週間リターン) |
決算発表翌日~決算発表10日後 | 決算発表後に株を買って9営業日後に売却した場合のリターン(2週間リターン) |
決算発表翌日~決算発表20日後 | 決算発表後に株を買って19営業日後に売却した場合のリターン(4週間リターン) |
決算発表日~決算発表翌日(TOPIX調整) | 当該期間のリターンからTOPIXのリターンを差し引いた値。市場全体の影響を排除するために算出 |
決算発表翌日~決算発表5日後(TOPIX調整) | 同上 |
決算発表翌日~決算発表10日後(TOPIX調整) | 同上 |
決算発表翌日~決算発表20日後(TOPIX調整) | 同上 |
全部で2436社、7743決算について分析しました。このうち、良決算と判定されたのは329決算でした。
東証に上場している会社数は4000社弱ありますが、そのうち2436社しか分析していないのは以下の理由からです。
- 営業利益の開示に欠損がある会社は除外した(銀行などは経常利益を開示しているが営業利益は開示していない場合が多い)
- 過去5年分の財務情報を取得できない会社は除外した(上場後5年以内の会社など)
- 過去業績評価の都合から初年度の営業利益が0または負となる会社は除外した
- 決算評価の都合から前年の営業利益が0または負となる会社は除外した
良決算と判定される数が全体の5%未満と少ないのは条件が厳しいためだと思われます。2Q以降はそれ以前の四半期決算も含めて良決算と判定されない限り、良決算ではないと判定しています。ここら辺は改善の余地があると思っていますが、今回はそこまで手が回りませんでした。
調査結果
良決算の平均リターン
以下の表に良決算と判定された決算に関するリターンの平均値一覧を示します。
算出リターン | 平均値 |
---|---|
決算発表日~決算発表翌日 | 1.7% |
決算発表翌日~決算発表5日後 | 1.1% |
決算発表翌日~決算発表10日後 | 2.2% |
決算発表翌日~決算発表20日後 | 2.4% |
決算発表日~決算発表翌日(TOPIX調整) | 1.4% |
決算発表翌日~決算発表5日後(TOPIX調整) | 0.31% |
決算発表翌日~決算発表10日後(TOPIX調整) | 0.89% |
決算発表翌日~決算発表20日後(TOPIX調整) | 1.2% |
一応平均リターンはすべてプラスでした。市場リターン除外後もリターンが残っており、アルファがあるのかもしれません(これが一番驚いた)。
平均リターンの値は思ったよりも小さいですが(3~5%くらいはあると思っていた)、一応良決算で株価は上がると言ってもよいのではないかと思います。特に発表日~発表日翌日の平均リターンは1日で1.7%あり一番大きいです。市場リターン除外後の平均リターンは大体5日で0.3~0.4%くらいはあるようで、平均リターンの絶対値自体は決算後日付が経つほど大きくなっています。
結構綺麗に結果が出ているように見えます。
良決算リターンのヒストグラム
良決算と判定された329決算の各リターンをヒストグラムにしました。前述したのは平均値であり、実際の結果は結構ばらつきがあることをお伝えしたいためです。
かなりリターンにはばらつきがあり、前述したリターンを実現するためには相応の資金をもって、多数の試行を要するということがわかります。トレード戦略の正しさを確認するために多くの試行回数が必要になる理由がよくわかる結果です。これだけリターンにばらつきがあるならそうなるよなということです。
全決算の平均リターン
比較のために調査した全決算の平均リターンを載せておきます。
算出リターン | 平均値 |
---|---|
決算発表日~決算発表翌日 | -0.13% |
決算発表翌日~決算発表5日後 | 0.46% |
決算発表翌日~決算発表10日後 | 1.2% |
決算発表翌日~決算発表20日後 | 1.9% |
決算発表日~決算発表翌日(TOPIX調整) | -0.44% |
決算発表翌日~決算発表5日後(TOPIX調整) | -0.55% |
決算発表翌日~決算発表10日後(TOPIX調整) | -0.36% |
決算発表翌日~決算発表20日後(TOPIX調整) | -0.31% |
決算発表日~決算発表翌日の平均リターンはほぼゼロです。また、リターンの値自体は日付が立つごとに大きくなっていますが、TOPIX調整後はほぼゼロです。つまり、TOPIXが上がったからリターンも出たということです。
結構綺麗な結果であるように思います。アルファもないですし、決算発表直後の株価上昇もないということです。
この結果がTOPIXと一致しないのは業績や決算評価アルゴリズムの都合から全社分の値ではないためです(念のため)。
おわりに
良決算を出した会社の株価は上がるということがわかりました。ただ、その上がり幅は平均するとそんなに大きなものではありませんでした。
また、アルファが存在する可能性があり、結構驚いています。
ただし、このリターンやアルファを実現するためには大きな資金と多数の試行が必要であり、万人に出来るものではないように思いました。加えて、アルファも決して大きなものではないのでこの方法にそこまで魅力があるのかは怪しいところです。要するに地合いがいい時にTOPIXを買っておけばいいのではないかということです。その方が楽です。
リターンの平均を使っている点が少し気になっています。平均値は外れ値の影響を大きく受けるので、本当であればもう少し精査が必要なのですが、どうすればいいかわからないので平均値を使っています。
色々突っ込みどころはありますが、いい結果が出たのではないかと思っています。一歩前進できました。使っているのが売上と営業利益だけなので、もう少し他の指標も使ったほうがいいのかなとも思ったりするのですが、力尽きました。
今回はここまでです。
以下の記事に続きます。