株式銘柄紹介ブログ

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プログラムで株式分析 その6 「決算分析プログラムの手直しと追加での分析」

はじめに

本記事は

からの続きです。


前回は「良決算を出した会社の株を決算日翌日の終値で買ったら儲かるのか」を調べました。結果わかったのは以下のとおりです。

  • 2週間(10日)~1カ月(20日)の保有でおよそ平均2%のリターンが期待できる
  • ただし、結果は大きくばらつくので期待リターンを得るには相当回数の試行が必要。あくまでも平均リターンである点に注意が必要
  • 2%のリターンのうち、半分は市場リターンで説明ができるが、残りの半分は決算が良いことで発生したアルファである可能性がある

 

あれからいろいろ考えて改善したいところがいくつか出てきたので、色々試行してみました。改善したのは以下の点です。

  • 良決算と判定される数が300程度と少ない。さらに良いリターンを求めて良決算を選別すると数が更に少なくなり、投資機会が減ってしまう。良決算判定の条件が厳しすぎるので条件を緩和する。ただし、良決算の平均リターンは維持したい
  • どのような良決算がリターンが良くなるのか調べられていない。具体的には営業利益率や時価総額で変わるのではないかという仮説はあるが、現状のプログラムはそういったデータを取得していないので調べることが出来ない。プログラムを改善し、営業利益率や時価総額などのデータも一緒に取得するようにして、リターンが高くなる決算の条件を調査する
  • 前回は分析対象を「2023年6月11日時点の進捗期決算の全て」としていたが、もっとシンプルに「2022年6月11日から2023年6月11日までの1年間の決算発表全て」のように分析対象を指定できるようにプログラムを変更する

 

分析対象の指定方法や取得データの追加に関するプログラムの改良については、自分で勝手にやればいいだけの話なので今回は述べません。本記事では良決算の判定条件の変更と、リターンを改善させる条件について述べていきます。

良決算判定条件の変更

これまでは以下のように良決算を判定していました。

  1. 該当決算の売上および営業利益の前年同期比が累計・単体ともにプラスである
  2. 過去平均の売上および営業利益の進捗率よりも該当決算の進捗率の方が累計・単体ともに良い
  3. 1と2を該当進捗期のすべての決算で満たしている
  4. 業績予想を含めた過去5年間の業績が増収増益基調(売上と営業利益)である

 
明らかに条件3が一番厳しい条件であり、なおかつ本質的な条件ではないので試しに削除してみたところ、良い結果を得ることが出来ました。以下が結果です。


2022年7月9日から2023年7月9日までの決算を対象とした結果、プログラムで分析可能だったのは8435決算でした。そのうち良決算と判定されたのは513決算でした。以下は良決算の平均リターンです。

算出リターン 平均値
決算発表日~決算発表翌日 2.0%
決算発表翌日~決算発表5日後 1.2%
決算発表翌日~決算発表10日後 2.2%
決算発表翌日~決算発表20日後 2.7%
決算発表日~決算発表翌日(TOPIX調整) 1.8%
決算発表翌日~決算発表5日後(TOPIX調整) 0.40%
決算発表翌日~決算発表10日後(TOPIX調整) 0.84%
決算発表翌日~決算発表20日後(TOPIX調整) 1.3%

 

前回の結果と比較してもリターンも調整後リターンも悪化していません。また、良決算の数も513まで増加しています。


以下は良決算の時期分布です。

年月 良決算の数
2022-07 50
2022-08 98
2022-09 7
2022-10 54
2022-11 92
2022-12 7
2023-01 40
2023-02 67
2023-03 11
2023-04 19
2023-05 55
2023-06 11
2023-07 2

 
3月、6月、9月、12月は投資機会が少ないですが、他の月には十分あります。やや投資機会に偏りはありますが問題のない範囲だと思います。

営業利益率と時価総額がリターンに与える影響について

今回の改善で営業利益率や時価総額を取得できるようになったので、良決算のリターンが営業利益率や時価総額で変わるのか調べてみました。


具体的には営業利益率や時価総額によって良決算の平均リターンがかわるのか調べました。本当は営業利益率や時価総額とリターンの相関を調べるべきなんでしょうが、結果をプロットした散布図を見る限り相関はなさそうだったのでやめました。

おそらくですが、株式リターンと営業利益率などの各種パラメータとの相関係数は極めて低いものになるのが普通なのではないかと思っています。知識や経験の裏付けはありませんが、せいぜい0.1とか0.2くらいの相関係数があれば良いとかそんなものなんじゃないかと。


以下は営業利益率毎の良決算の平均リターンです。


 
営業利益率毎の決算数です。

営業利益率 決算数
0~10% 229
10~20% 171
20~30% 70
30~40% 28
40%超 15

 

営業利益率が10~30%となる良決算が全体よりもリターンが高くなっている一方で、10%以下、30%超でリターンが低くなっています。基本的に営業利益率は高い方がリターンが良いですが、高すぎると悪くなっています。高すぎる利益率は維持困難だと思われているのかもしれません。


以下は時価総額毎の良決算の平均リターンです。


 
時価総額毎の決算数です。

時価総額 決算数
0~200億円 154
200~500億円 115
500~1000億円 69
1000億円超 175

 

時価総額が200~500億円が全体よりも悪く、0~200億円が全体と同程度、500億円超が全体よりも良いという結果でした。時価総額が高い株の方が機関投資家にとって買いやすいとか、個人投資家は小型株を買いやすいとか、色々考えられますが、理由はよくわからないです。


以下は営業利益率が10%~30%かつ時価総額が500億円超の良決算の平均リターンです(決算数N=132)。

算出リターン 平均値
決算発表日~決算発表翌日 1.5%
決算発表翌日~決算発表5日後 2.6%
決算発表翌日~決算発表10日後 3.6%
決算発表翌日~決算発表20日後 3.2%
決算発表日~決算発表翌日(TOPIX調整) 1.3%
決算発表翌日~決算発表5日後(TOPIX調整) 1.6%
決算発表翌日~決算発表10日後(TOPIX調整) 2.1%
決算発表翌日~決算発表20日後(TOPIX調整) 1.8%

 

以下は決算時期の分布です。

年月 決算の数
2022-07 16
2022-08 33
2022-09 0
2022-10 14
2022-11 24
2022-12 0
2023-01 7
2023-02 17
2023-03 2
2023-04 6
2023-05 10
2023-06 3

 
良決算全体よりも良いリターンが得られていることがわかります。おおよそ1%程度でしょうか。一方で決算数は132と減少していますが、各月にそれなりに投資機会はあるので使えなくもないかなと思います。十分な資金があるなら良決算全体に対して投資したほうがよく、資金が限られているなら営業利益率と時価総額で選別した決算に投資をすればよさそうです。
 

TOPIXが下げていても良決算への投資は有効なのか

これはつまり、良決算を出した会社への投資は地合いが良いから上手く行く方法なのではないかという疑問です。以下はトピックスのチャートですが、2023年に上昇基調となっており測定期間の地合いは良いと評価できます。


自分のJ-QuantsのプランではTOPIXが下げ基調の際のデータを取得できないので現時点では正確には検証は出来ないです。月1.6万円払えるなら2008年7月からのデータが取れるのでリーマンショック後の分析が可能ですが、自分にはその金額を出すのは難しいので諦めています。


それでも何もしないよりはマシなので、測定期間内でTOPIXが下げた場合と上げた場合での良決算平均リターンを算出してみました。

以下が良決算全体の結果です。各行の標本が一致していない点に注意してください。それぞれ条件に従い母集団から標本を抽出し、平均値を算出しています。

 

以下が営業利益と時価総額で選別した良決算の結果です。

 
算出結果から以下が読み取れます。

  • TOPIXが上げていても下げていても良決算の平均リターンはプラス
  • TOPIXが上げている時の方が下げている時よりも平均リターンが大きい
  • 調整リターンはTOPIXが下げている時の方が高い

 
ここから何がわかるかといえば、2022年6月11日から2023年6月11日についてはTOPIXの上げ下げに関わらず良決算を出した株への投資は有効だということです。また、この投資戦略はTOPIXが下げている時の方が恩恵が大きいです。一方で、TOPIXが下げている時は平均リターンそのものは小さくなります。
 

おわりに

前回からプログラムを改善した結果、良決算を出した株を買うという投資戦略を実行する準備が少しづつですが整ってきました。

また、営業利益率や時価総額によって平均リターンが変化しそうだということもわかりました。平均リターンを使ってもよいものなのか自分には判断できないので、しばらくは平均リターンを使おうかなと思っています。統計学とか機械学習とかを学べはベターな方法を発見できるかもしれませんが、時間を取れていません。

さらに今回、良決算を出した株を買うという戦略がいつまで有効なのか知るすべが必要だなと気が付くことが出来ました。おそらく戦略が有効か否かはある程度の期間の決算を分析する必要があるため、後になってやっとわかるということになりそうです。感覚的には最低3か月、出来たら半年とか1年分のデータが欲しいです。でもそれだと痛手を負ってしまうので、一定期間で資産全体の何%を失ったら戦略を見直すなどのルールが必要そうです。おそらく上手く行かなかったら投資を休んで結果がわかるまで待つくらいの気持ちがないと続けられないでしょう。


今はフルポジで投資資金がないので何にもできないのですが、お金ができたら実際にやってみて記事にまとめてみようかと思っています。


今回はここまでです。


以下の記事に続きます。

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