はじめに
本記事は
からの続きです。
前回は良決算以外のデータを分析するというのと、良決算の評価のためにリターン分布を使ってみたらどうなるかやってみました。結果以下のことがわかりました。
- 良決算以外のデータには良決算にみられたようなアルファは存在しなさそうだとわかった。また、分析の都合から除外したデータが多々あり、過去1年間の全決算のデータを調べてみたほうがよさそうだということも分かった
- リターン分布をもって良決算を評価すると、良決算全体に投資するのはあまり魅力的ではなく、良決算を営業利益率や時価総額で選別した集団に投資するべきだとわかった
前回の課題であった全決算のデータを取得するプログラムを作ったので、全決算の結果をみていきます。
また、せっかく株式分析をやっているので少額でもいいから投資してみたいなという想いがあり、一部の株を売却することで種銭を用意しました。実際にやってみる前に、どういうやり方で投資をするのか簡単に検討してみました。
決算全体の平均リターン
2022年7月9日から2023年7月9日までの決算を対象とした結果、3791社・14962決算のリターンを取得することが出来ました。ただし、J-Quants APIで取得できない決算データは除く。
以下は14962決算の平均リターンです。
算出リターン | 平均値 |
---|---|
決算発表日~決算発表翌日 | -0.28% |
決算発表翌日~決算発表5日後 | 0.68% |
決算発表翌日~決算発表10日後 | 1.35% |
決算発表翌日~決算発表20日後 | 1.87% |
決算発表日~決算発表翌日(TOPIX調整) | -0.57% |
決算発表翌日~決算発表5日後(TOPIX調整) | -0.25% |
決算発表翌日~決算発表10日後(TOPIX調整) | -0.01% |
決算発表翌日~決算発表20日後(TOPIX調整) | -0.17% |
これは前回の記事で載せた結果とほぼ同じでした。
以下は箱ひげ図です。
以下は比較のための良決算の箱ひげ図です。
リターン分布自体は良決算の方が決算全体と比較すると多少改善されているとわかります。なので良決算を判別するのにはそれなりに価値はあるのかなと思います。比較すると良決算の方が箱と上髭がプラス方向に偏っており、リターンの上限が伸びているのと下限もやや改善しているように見えます。ただし、TOPIX調整後リターンの中央値はほぼゼロです(調整後リターンの5日および10日について)。
決算を出した会社に投資すると0.5%くらいはTOPIXと比較して不利になってしまうのかもしれません。20日後調整リターンにはそのような傾向はないので不利になってしまうのは決算発表後10日間くらいってことでしょうか。単年の結果であり、はっきりとしたことは言えませんが。
決算全体の営業利益率や時価総額毎のリターンについては調べていません。
営業利益率や時価総額については機械学習を使った方法で今後調べてみようかと思っています。現状のやり方だと前回以上のことは言えなさそうなので。
良決算への投資方法
おおまかな流れ
投資の大まかな流れは以下のとおりです。
- 毎営業日の19:00以降に良決算判定プログラムを実行する
- 翌営業日の12:00ごろに良決算と判定された会社の株を一定数購入する
- 決算発表から5営業日後または10営業日後に株を売却する
まず、J-QuantsAPIで当日決算の財務情報を取得できるのが暫定情報18:00~、確定情報24:30~なので19:00以降にプログラムを実行します。今のところ自動実行とはしていないというのと、前日までに投資判断を終えておきたいためこの時間にプログラムを走らせます。
次に私は仕事をしているためお昼休みに株を実際に購入することになります。分析の結果は全て終値なので15:00時点での価格で買えれば理想なのですが、難しいです。
そして、分析結果から5日後と10日後のリターン分布が良かったので5営業日後、10営業日後に株を売却することにしています。やはり、終値ではなく12:00ごろの価格で売却することになります。
現段階で考慮しなければならないことは以下のとおりです。
- 売買手数料
- 5日後に売るのか10日後に売るのか(損切はどうするのか)
- 良決算を買えば儲かるという傾向がなくなったことを如何に察知するのか
売買手数料
わたしが使っている証券会社の売買手数料です。それぞれ一番手数料が悪くなる価格を選定しています。
5日リターンでおおよそ2%あるので、手数料は0.2%くらいに抑えたいです。それを考えると少なくとも10万円以上の取引が必要になります。本当は100万円くらい買いたいのですがお金がないので無理です。
5日後に売るのか10日後に売るのか
これは損切とも関係があります。5日時点でリターンがマイナスだった場合に10日目まで待つのか、それとも売却して損切りするのかという話です。
どちらがよさそうか考えるために、まずは5日リターンと10日リターンとの相関係数を算出してみました。
相関係数は0.6程度あり、そこそこあります。
さらに5日リターンと10日リターンの散布図も作成しました。
やはり、相関がありそうだとわかります。
つまり相関を見る限り、5日目でマイナスだったら10日目もマイナスの可能性が高いということです。また、散布図のグラフ全体の傾きもそれほどないので5日目にプラスだった際に10日目まで待つ価値があるかといえば、ないのではないかと思います。
つづいて、5日リターン・5日調整後リターンがマイナスとなる場合の箱ひげ図を作成しました。また、5日時点から10日時点まで待つことでどの程度リターンが変動するかについても値を計算して箱ひげ図を作成しています(5To10が該当)。
ここでは簡単のため調整後リターンについてのみ考えます。
5日目の調整後リターンがマイナスである場合は50%~75%のケースでマイナスのままです。したがって、5日目の調整後リターンが悪ければ10日たっても悪いままだということです。
しかし、5日目の調整後リターンと10日目の調整後リターンの差分に着目すると分布はプラスに偏っており、5日待つことで結果が改善することがわかります。分布も悪くないので5日目のリターンがマイナスだった場合は10日目まで待つ価値がありそうです。調整後リターンは50%~75%のケースで改善しています。
本当だろうか?と疑問になってしまいます。普通なら損切は素早く行うべきであり、5日待つのは不要なリスクを取っているのではないかと思ってしまいます。しかしながら、過去1年の決算分析の結果では悪くないやり方ということになります。
今度は逆に、5日リターン・5日調整後リターンがプラスとなる場合の箱ひげ図を作成しました。
5日目の調整後リターンがプラスなら、10日目の調整リターンも75%のケースでプラスでした。しかし、更に5日待ってもリターンはあまり改善せず、リターン変動の中央値はほぼゼロでした。
つまり、5日目の調整後リターンがプラスならその時点で売却してしまったほうが良いということです。
上記の結果を踏まえると
- 5日目時点でリターンがマイナスなら10日目まで待ってから売却する
- 5日目時点でリターンがプラスなら5日目時点で売却する
のがよさそうです。
今のやり方が通用しなくなったことを検知できるのか
過去1年間については良決算に投資をするやり方は有効だとわかっていますが、現時点でそれが有効かはわかりません。また、どんなやり方であっても上手く行かない時は必ず来るものです。このやり方は業績相場だから通用するのかもしれませんし、同じやり方を他の人もやり始めたら上手く行かなくなるかもしれません。
したがって、このやり方が上手く行かなくなったことを検知する必要があります。
検知すること自体は簡単で過去データを分析するだけでいいのですが、問題は今上手くいくか否かは最短で3か月、長いと半年後くらいにしかわからないということです。
その場合、最悪半年間誤った投資をし続けることになります。損失を限定するために許容可能なドローダウンを設定し、それに到達した場合は3か月から半年程度は投資をせずにやり方を見直すことにします。
自分の種銭は少額なので20%程度のドローダウンを許容することにします。
おわりに
今回の分析で
- 決算全体のリターンを取得したが、結果はこれまでのものと大差なかった
- 5日目リターンがマイナスの時は10日目まで待ち、5日目リターンがプラスの時はすぐ売却すると良い結果が得られそう
ということがわかりました。
また、20%のドローダウンまで許容することに決めました。
実際の投資に向けて決めるべきことを決められたのかなと思っています。
以下は決算発表予定のカレンダーです。マネックス証券のページから拝借しています。
これをみると10月26日ごろから11月14日にかけて決算発表が増えているので、その時期に投資することになるのかなと思っています。
実際に投資をしてみることで何か新しい発見や課題が見つかると思うので、また、色々考察してみます。
今回はここまでです。