はじめに
今回は下水汚泥から固形燃料を生産するシステムについて調査しました。下水汚泥から固形燃料を生産する手法には大きく分けて2つあります。1つ目が下水汚泥を乾燥させて燃料を生産する方法、2つ目は下水汚泥を炭化させて燃料を生産する方法です。それぞれの手法を用いて実際に燃料を生産するシステムについてみていきます。
固形燃料生産システムの実例
ジェイコンビシステム
システム説明
下水汚泥を乾燥して固形燃料を生産するシステムです。新日鉄住金エンジニアリングと日本下水道事業団が共同で開発しました。
ジェイコンビシステムでは以下の流れで固形燃料を生産します。
- 軸ミキサ内で脱水汚泥を粒形に整形する
- 乾燥ドラムで粒形の汚泥を乾燥する
- 乾燥した汚泥を分級器にかけ、基準値以上の大きさのものを製品として取り出す
- 基準値に満たない大きさのものを2軸ミキサに再投入する
以下の図はシステムの処理フローです。
https://www.eng.nssmc.com/business/catalog/vol3 4.ジェイコンビシステム(造粒乾燥方式)による下水汚泥の石炭代替燃料化について~地球温暖化の抑制に向けて~ より引用。
生産した固形燃料は1mm~5mmの粒形で、発熱量は石炭の6割~7割程度です。生産した固形燃料は主に火力発電所で石炭の代替燃料として利用されます。以下の写真は本システムで生産した固形燃料です。
https://www.eng.nssmc.com/business/catalog/vol3 4.ジェイコンビシステム(造粒乾燥方式)による下水汚泥の石炭代替燃料化について~地球温暖化の抑制に向けて~ より引用。
システムの導入事例
- 広島県芦田川流域下水道芦田川浄化センター下水汚泥固形燃料化事業
- 処理能力 脱水汚泥72t/日
- 固形燃料の生産量 4,570t/年
- 運営期間 平成29年1月1日から平成49年3月31日(20年3ヶ月)
- 北九州市下水汚泥燃料化事業
- 処理能力 脱水汚泥70t/日
- 固形燃料の生産量 7,030 t/年
- 運営期間 平成27年10月1日から平成47年9月30日まで (20年)
低温炭化汚泥燃料化システム
システム説明
下水汚泥を炭化することによって固形燃料を生産するシステムです。炭化によって固形燃料を生産する手法は、乾燥によるものと比べ固形燃料の熱量が劣るというデメリットがありますが、本手法では低温で炭化することによりこれを解決しています。
以下の会社が共同で本システムを開発しました。
- 電源開発株式会社
- 月島機械株式会社
- 株式会社NGK水環境システムズ
- 株式会社ジェイペック
- 日本下水道事業団
低温炭化汚泥燃料化システムでは以下の流れで固形燃料を生産します。
- 脱水汚泥を乾燥機で乾燥する
- 乾燥した汚泥を造粒機で成形する
- 成形した汚泥を炭化装置で炭化する
以下の図はシステムの処理フローです。
http://www.metawater.co.jp/product/plant/sewer/dirt_fuel/より引用。
生産した固形燃料は5mm~10mmの粒形で、発熱量は石炭の6割~7割程度です。生産した固形燃料は主に火力発電所で石炭の代替燃料として利用されます。
システムの導入事例
- 熊本市下水汚泥固形燃料化事業
- 処理能力 脱水汚泥50t/日
- 固形燃料の生産量 2,300t/年
- 運営期間 平成25年4月~平成45年3月(20年)
- 広島市西部水資源再生センター下水汚泥燃料化事業
- 処理能力 脱水汚泥100t/日
- 固形燃料の生産量 4,490 t/年
- 運営期間 平成24年4月1日~平成44年3月31日 (20年)
下水汚泥固形燃料化システム導入の経済性について
下水汚泥の処理に固形燃料化システムを導入することで下水処理施設にかかる費用を削減できるか試算した結果を紹介します。結論を先に述べると、汚泥処理の規模が大きければ固形燃料化システム導入によって費用を削減することが可能です。
- 試算結果の参照元
- http://www.jswa.jp/odei-energy/kenpatsu 下水汚泥エネルギー化技術 導入検討に関する一考察
- 前提条件・内容
- 脱水汚泥処理量 30t/日と90t/日の2ケースについて、費用を試算
- 下水処理施設の建設費・運営費を総合して試算
- 脱水汚泥処理量 30t/日の場合は汚泥を埋め立て処理(委託)しているケースと固形燃料化システムを導入したケースについてを比較(小規模な施設では自前の焼却施設で汚泥を処分している例が少ないため)。また、下水処理施設の消化槽で発生した消化ガスを固形燃料化システムの補助燃料として利用するケースについても比較
- 脱水汚泥処理量 90t/日の場合は汚泥を焼却処理しているケースと固形燃料化システムを導入したケースについてを比較。また、下水処理施設の消化槽で発生した消化ガスを固形燃料化システムの補助燃料として利用するケースについても比較
- 消化ガスおよび生産した固形燃料による燃料削減効果を考慮し試算
- 結果
- 脱水汚泥処理量 30t/日では脱水汚泥を埋め立て処分する場合の事業費219百万円/年に対し、固形燃料化システムを導入したケースでは約282百万円/年(消化ガス利用は約270百万円/年)となり、システムを導入する経済的なメリットはない。ただし、焼却施設を導入するケースの事業費306百万円/年と比較すると費用が低く抑えられる
- 脱水汚泥処理量 90t/日では脱水汚泥を焼却処分する場合の事業費約607百万円/年に対し、固形燃料化システムを導入したケースでは約487百万円/年(消化ガス利用は約415百万円/年)となり、システムを導入する経済的なメリットがある
参照データを元に試算結果をグラフにまとめました。
30t/日の規模ではシステム導入によって施設の事業費が増加してしまいますが、90t/日の規模ではシステム導入によって施設の事業費を削減出来ることが分かります。つまり、下水処理施設の規模が大きければ固形燃料化システムを導入する経済的なメリットがあるということです。また、下水処理施設に消化槽を設置し、発生する消化ガスを汚泥固形燃料化システムの補助燃料として利用することで事業費をさらに抑えることが出来ます。
下水汚泥固形燃料化システム導入によるエネルギー収支について
下水汚泥から固形燃料を生産するためには乾燥または炭化の工程が必要であり、固形燃料の生産のために燃料を投入する必要があります。ここでは固形燃料の生産におけるエネルギー収支(回収エネルギー - 投入エネルギー)について試算した結果を紹介します。結論を先に述べると、平均的なエネルギー収支はマイナスとなりますが、汚泥を焼却処分するのに比べれば大幅に改善されます。
- 試算結果の参照元
- http://www.jswa.jp/odei-energy/kenpatsu 下水汚泥固形燃料化システムのエネルギー収支に係る一考察
- 前提条件・内容
- 対象となる燃料化システムは「下水汚泥固形燃料化システムの技術評価に関する報告書」(平成20年3月日本下水道事業団技術開発部)に記載のシステム(本記事で紹介したジェイコンビシステム・低温炭化汚泥燃料化システムも含まれる)
- 投入エネルギーは、燃料化システムの運転に必要な電力と化石燃料由来のエネルギー
- 回収エネルギーは固形燃料の保有エネルギー
- 施設規模、脱水汚泥含水率、脱水汚泥有機分率を試算のパラメータとして用いる
- 汚泥を焼却(焼却温度850℃)したケースについても試算
- 下水処理施設の消化槽で発生した消化ガスを固形燃料化システムの補助燃料として利用するケースについても検討する
- 結果
- 固形燃料化システムのエネルギー収支は-3.3GJ/脱水汚泥t ~ 1.8GJ/脱水汚泥t、平均は-0.7GJ//脱水汚泥tとなる
- 汚泥の焼却には3GJ/脱水汚泥tのエネルギーが必要である
- 施設規模がエネルギー収支に与える影響は限定的である
- 脱水汚泥含水率(少ない方がよい)、脱水汚泥有機分率(多い方がよい)がエネルギー収支に大きな影響を与える
- 特に脱水汚泥含水率が重要である
- 消化ガスを利用するケースではエネルギー収支が大幅に改善する
おわりに
今回は下水汚泥から固形燃料を生産するシステムの実例について調査しました。
- ジェイコンビシステム
- 低温炭化汚泥燃料化システム
調査した結果、以下のことが分かりました。
- 下水汚泥から固形燃料を生産するシステムは既に実用化されている
- 90t/日の脱水汚泥が発生する規模の下水処理施設であれば、下水汚泥固形燃料化システムを導入する経済的なメリットがある
- 下水汚泥固形燃料化システムのエネルギー収支の平均はマイナスであるが、汚泥の焼却処分と比較すると大幅に改善される
以下の内容が疑問として残っています。調査しましたが、これが分かる資料を発見できませんでした。継続調査したいと思います。
- 乾燥による手法と炭化による手法のメリット・デメリット
今回はここまでです。