概要
2021年に新規上場した銘柄のうち、面白そうだなと思った銘柄を簡単に紹介します。投資するに優れた銘柄とは限らないためあしからず。
今回の銘柄はスパイダープラスです。この会社は主に建築業向けの建築図面・現場管理アプリの開発・販売をしています。
事業内容
総合建設業及び電気・空調設備業向けに、建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を開発・販売しています。SPIDERPLUSはタブレット/スマートフォンで建設現場の図面のペーパーレス化を図るとともに、検査機器と連携してアプリの中で計測値を取り込むことで業務の効率化ができるサービスです。
事業計画及び成長可能性に関する事項 p9より引用
建設業界は人手不足と高齢化の影響により、建設需要に対して今後100万人の労働者が不足するといわれており、「SPIDERPLUS」のような生産性向上のためのツールは建設業界のニーズと合致しています。
「SPIDERPLUS」は800社程度の導入実績があり、年々利用が拡大しています。解約率も1%以下と低く、単価も上昇傾向にあります。
事業計画及び成長可能性に関する事項 p16、p31より引用
同社によると電気設備工事業界並びに空調衛生工事業界の上位 30 社のうち約 9 割、ゼネコン・デベロッパーは 7 割超が「SPIDERPLUS」を導入しているようです*1。
また、同社は装置や配管に断熱材を取り付ける熱絶縁工事事業も行っていますが、「SPIDERPLUS」に経営資源を集中させるため事業譲渡することが決まっています。本事業は現場情報を把握し、且つ現場での業務改善ニーズの発掘することで「SPIDERPLUS」を改善するという役割がありますが、これについては事業譲渡後も継続できるとのことです。
競合
証券リサーチセンターのレポートによると
- YSL ソリューションの「CheX」
- フォトラクションの「Photoruction」
が主に競合するアプリとのことです。
「SPIDERPLUS」は
- 提供機能が豊富である
- フォロアップ体制が充実している
- 複数社の施工情報を一つのアプリに集約できる
といった点が差別化要因となっています。
業績
売上は大きく増加、利益は成長投資のためほとんど出ていません。2021年12期は上場によって得た資金を使って更に成長投資を行うため赤字となる予定。成長企業にありがちな業績といえます。
2020年12月期 有価証券報告書 p2より引用
参入障壁は低く、競合他社も多いため、同社としては導入企業を容易に増やせるうちに増やしたいという意図があるのだと思われます。参入障壁が低いとはいえ「SPIDERPLUS」は業務に使うアプリでありスイッチングコストが高いため、一度導入されれば継続的な収益をもたらしてくれます。したがって、赤字になっても導入企業を増やすという戦略は正しいとわたしは評価しています。
開発および営業を増員しているほか、広告宣伝費もかけています。結果、2021年12月期は赤字となる予定です。
2021年12月期3Q 決算説明会資料 p21、p19より引用
まとめ
スパイダープラスが開発する「SPIDERPLUS」は導入が進んでおり、それに伴って売上も増加しています。一方、利益は成長投資のため赤字となる予定です。SaaS銘柄であれば営業利益率20%を超えるくらいの利益率が欲しいところですが、そこに至るまでにはまだ時間がかかりそうです。この会社の成長投資が報われるほど「SPIDERPLUS」の導入が拡大するかはまだわかりません。IRは充実しており、事業の進捗はわかりやすい方なので、監視継続していきたいと思っています。
今回はここまでです。
参考ページ
- スパイダープラス株式会社 | 建設業向け業務効率化アプリ「SPIDERPLUS」
- スパイダープラス(4192)|ホリスティック企業レポート|証券リサーチセンター
- ログミーファイナンスに全文書き起こしはないが、IRページに全文書き起こしを掲載