株式銘柄紹介ブログ

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5368 日本インシュレーション 調査結果

事業内容

日本インシュレーションはゾノトライト系けい酸カルシウムを基材とした防耐火建材、保温材の製造販売および施工を主な事業としています。ゾノトライト系けい酸カルシウムは他の素材と比較して熱に非常に強く1000℃に耐えうる耐火性・断熱性を有しており、同社が1966年に世界に先駆けて発明した素材です。


同社の製品は建築基準法に基づき防・耐火処置が必要とされる建築物(オフィスビルや商業施設、物流・生産・交通施設)や高温が発生し、耐火、保温が必要な各種プラント施設に用いられています。


同社の事業は「建築関連」「プラント関連」の2つのセグメントに分かれています。


有価証券報告書より表を引用

 

売上・利益のセグメント構成比率をみると、「建築関連」「プラント関連」事業がそれぞれ同程度の利益を稼いでいることがわかります。



有価証券報告書よりグラフを作成



国内のけい酸カルシウム耐火被膜材、保温材市場のシェア推移。


会社概要説明資料 p22より引用


非常にニッチな市場ですが、けい酸カルシウム耐火被膜材、保温材市場において高いシェアを有していることがわかります。


競合他社

証券リサーチセンターの調査によるとけい酸カルシウム耐火被覆材(建築関連事業)の市場においては脅威となる競合はなく、けい酸カルシウム保温材(プラント関連事業)の市場では

  • 日本ケイカル(明星工業、ニチアス)
  • 朝日珪酸工業(A&Aマテリアル)

が競合となっているようです。

強み

同社の強みは

  1. ゾノトライト系けい酸カルシウムの製造技術と研究開発力のノウハウ蓄積がある
  2. 材料生産から施工までを一貫して行っており、顧客の要望に合わせた柔軟な対応が可能
  3. 加えて、材料生産から現場での施工までの品質管理を行うことが可能
  4. 1~3によって築き上げてきた強固な顧客基盤

があげられます。


業績

売上と経常利益率の推移です。


有価証券報告書およびIR資料よりグラフを作成


売上がここ15年程度でほとんど増えていません。また、景気動向によって売上が大きく変動しており、景気循環の影響を受ける事業を営んでいるといえます。ここ数年の経常利益率は10~15%と非常に高いです。
 

設備

同社には国内に2か所、海外はベトナムに1か所の生産拠点があります。


会社概要説明会資料 p12より引用

 

ベトナムの設備についてですが、2021-3期決算において4.8億円の減損処理を行っています。利益を出せていないということですね。ベトナムで生産を開始したのが2016年10月であり、5年くらいではなかなか事業が軌道に乗らないということなんでしょう。証券リサーチセンターの資料によると、国内向けに生産しているようです。

投資

設備投資と買収への支出額です。


有価証券報告書よりグラフを作成
 

設備投資はほとんどが生産設備の合理化および更新によるものです。買収はありません。



有価証券報告書より表を作成

フリーキャッシュフローの算出

フリーキャッシュフローの推移です。


有価証券報告書よりグラフを作成

フリーキャッシュフローは基本的にはプラスのようです。ただ、期間が短いので何とも言えません。


投下資本利益率の算出

投下資本利益率(以降ROICと記載)の推移です。


有価証券報告書よりグラフを作成

ROICは8%を超えており高いといえます。

まとめ

日本インシュレーションは1000℃を超えるような高温での耐火・断熱という非常にニッチな市場で事業を営んでおり、高いシェアを獲得できています。しかしながら、その市場は成熟しており、同社はゾノトライト系けい酸カルシウム材の用途開発に努めているものの、新たな需要を掘り起こすには至っていないようです。

海外事業についても2016年にベトナムでプラント向け保温材料の生産を開始していますが、2021-3期に減損しており、事業が軌道に乗るにはまだまだ時間がかかりそうです。


国内事業は盤石で、ニッチな市場であるため強力な競合が現れるとも考えにくく、当面はキャッシュ・カウであり続けるのではないかと思っています。


同社の売上は景気動向の影響を強く受けるので、景気後退期に投資を検討したい銘柄かなと思っています。また、上場してからあまり時間がたっていない銘柄であり、可能であればもっと長期の財務状況をみておきたいところではあります。


今回はここまでです。