要点
- 関西ペイントは塗料メーカー
- 塗料の国内市場は成熟しており、国内での成長は難しい
- 一方海外市場は拡大しているため、海外での成長を狙い海外進出に積極的
- 海外進出はM&Aによって行っており、多額の投資を行っている
- 多額の投資に伴い近年急激に有利子負債が増加している
塗料業界についての調査はこちらからどうぞ。
関西ペイントの事業
関西ペイントは塗料事業を営んでいます。
さらに塗料事業は以下のセグメントに分けることができます。
- 国内自動車
- 海外自動車
- 自動車補修
- 工業
- 建築
- 船舶鉄構
各セグメントが売上に占める割合を以下の図に示します。
関西ペイントの有価証券報告書より
関西ペイントの業績の推移
売上高と営業利益の推移
以下のグラフに売上高の推移と営業利益率の推移を示します。
関西ペイントの有価証券報告書より
以下のグラフに営業利益と純利益の推移を示します。
関西ペイントの有価証券報告書より
営業利益率は平均8.9%と高いです。
また、売上と利益が増加しています。
総資産の推移
以下のグラフに総資産・自己資本比率の推移をしめします。
関西ペイントの有価証券報告書より
総資産は増加しています。
自己資本比率は2017-3に14%も低下し、54.8%となっています。
これは社債を発行し約1000億円を調達したためです。
1000億円の使い道は以下のようになっています。
転換社債型新株予約権付社債発行等に関する資金使途変更のお知らせ より
海外関係投資とHelios Groupの買収で575億円となっており、社債発行で得た資金の半分以上を海外事業のために使っています。
以下のグラフに株主資本の推移をしめします。
関西ペイントの有価証券報告書より
株主資本は順調に増えています。
セグメント別の業績
以下はセグメント別の売上の推移を示すグラフです。
関西ペイントの決算説明会資料より
関西ペイントの売り上げの増加は「海外自動車」「工業」「建築」セグメントがけん引していることがわかります。
以下は関西ペイントの決算説明会資料の抜粋です。国内と海外の売り上げに注目してみてください。
関西ペイントの2016年度 決算説明会資料より
どのセグメントも国内の売り上げは横ばいです。
一方、海外の売り上げは増加しています。
よって、関西ペイントの売り上げ増加は「海外自動車」「工業」「建築」セグメントの海外での売上増加によるものだといえます。
海外売上の推移
以下は地域別の売上と利益率の推移を示すグラフと、地域別の売上および利益率の平均値を示すグラフです。
関西ペイントの有価証券報告書より
以下のグラフに地域別の利益および全体に占める割合の推移を示します。
関西ペイントの有価証券報告書より
アフリカでの事業は安定しておらず2017-3は赤字となっています。
そのほかの地域については大丈夫そうです。
利益についてみると、国内が半分、インドとアジアがもう半分を稼いでいます。
アフリカと欧州は利益に貢献できていません。
以下のグラフに地域別の売上シェアの推移を示します。
関西ペイントの有価証券報告書より
海外売上比率は増加しており、2017-1は51%です。
キャッシュフロー
以下のグラフに各種キャッシュフロー、現金同等物、有利子負債の推移を示します。
関西ペイントの有価証券報告書より
営業CF・フリーCFがプラスで、営業CFが成長しています。
ただ、2012-3と2017-3については、営業CFよりも投資CFが大きくなっておりフリーCFがマイナスとなっています。
特に2017-3は積極的な投資を行っています。
現金同等物が有利子負債よりも多い時期が続いていましたが、2017-3には有利子負債が大幅に増え、有利子負債のほうが現金同等物よりも多くなっています。
関西ペイントは、借り入れや社債によって資金を調達し、積極的な投資をしています。
投資キャッシュフローの内訳
以下のグラフは投資キャッシュフローの内訳推移を示しています。
関西ペイントの有価証券報告書より
- 注意
- 設備投資は有形・無形固定資産の取得に関わるキャッシュフローを集計して記載している
- M&Aは子会社および関係会社株式の取得に関わるキャッシュフローを集計して記載している
- 財テクは有価証券・投資有価証券の取得、保険積立金・定期預金・貸し付けに関わるキャッシュフローを集計して記載している
以下のグラフは過去11年間の投資キャッシュフローの合計額の内訳を示しています。
関西ペイントの有価証券報告書より
以下の表は有価証券報告書に記載されている関西ペイントの主なM&Aです。
決算期 | 取得した会社名 | 取得価額(億円) | 地域 | 直近の純利益(億円) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
2012-3 | FREEWORLD COATINGS LTD. | 193.8 | 南アフリカ共和国 | 18.1 | 1南アフリカランド=12円で計算 |
2013-3 | PT.KANSAI PRAKARSA COATINGS | 99.4 | インドネシア共和国 | 10.8 | 100インドネシアルピア=0.83円で計算 |
2017-3 | Annagab S.A. | 427.3 | 欧州 | 1.6 | 1ユーロ=121.17円で計算 |
2017-3 | U.S. Paint Corporation | 52.5 | 米国 | 6.6 | 1ドル=105円で計算 |
関西ペイントの有価証券報告書より
株価の推移
以下のグラフに期末株価およびPERの推移を示します。
関西ペイントの有価証券報告書より
2017年9月15日現在の株価は2802円、PERは32倍です。
かなり割高であり、株を買うのはよしたほうがいいでしょう。
過去の推移を見る限り、15倍程度の時期もあったので、そのくらいになるまで待ったほうがよいです。
おわりに
関西ペイントは営業利益率(8.9%)やROE(9.2%)が高く、業績も成長しています。
また、海外塗料市場は成長しており、関西ペイントは海外売上のほうが大きいため、今後の成長が期待できます。
関西ペイントは積極的な海外投資を行っており、それに伴って有利子負債が大きく増加しています。
海外事業の業績を特に注意する必要があります。
株価としては割高で現時点で購入は勧められませんが、市場成長の波に乗って会社が成長していく可能性が高いです。
今後5年くらいは業績の推移を見守って、株価が適正な水準まで下がったら購入したい会社です。
今回はここまでです。