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NJS(旧 上下水道設計) 事業内容と業績推移

事業内容

事業概要

NJSは上下水道のコンサルティングを主な事業として営んでいます。

NJSの事業は国内事業と海外事業の2つのセグメント分類されており、それぞれ以下のようなサービスを顧客に提供しています。

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第68期 有価証券報告書より引用



上記の記載からでは国内事業と海外事業の特色がわかりにくいので、有価証券報告書の記載から各セグメントで注力している事業内容を以下の表にまとめてみました。

セグメント 注力している事業
国内事業 上下水道などの水インフラ維持管理のために必要なサービスを顧客に提供する。具体的には、「1.事業の効率化に向けたアセットマネジメント(老朽化した施設の点検調査や修繕・改築の実施、運転管理を効率的に実現するためのサービス)」、「2.企業会計移行(国の方針で水道事業者の会計を公営企業会計に移行することになっており、そのお手伝い)」、「3.地域の安全確保と環境保全に向けた地震対策、雨水対策、エネルギー対策等の業務」、「4.官民連携事業の業務」があげられる。
海外事業 新興国の上下水道整備に際してコンサルティングサービスを顧客に提供する。具体的には「1.設備整備計画(おそらく)」、「2.設備運用ノウハウの提供(教育)」があげられる。


また、NJSの主な製品(有価証券報告書では主力ソフトウェアと記載)は以下の通りです。

  • クラウド型総合管理システムSkyScraper
  • ストックマネジメントツールKanroKarte
  • 閉鎖性空間調査ドローンAirSlider
  • 下水処理プロセスシミュレータBioWin
  • リアルタイム情報発信装置SkyManhole


 

以下は2019年3月期のセグメント別の売上および利益構成です。利益はセグメント利益である点に注意してください。
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有価証券報告書よりグラフを作成


海外事業の売上はそこそこありますが、利益にはあまり貢献できていません。国内事業が利益の大半を稼いでいるわけですが、どのサービスがどの程度の売上や利益を出しているのかについては情報がなくわかりません。主力ソフトウェアの売上によってストック型の収益構造をしているのでは?と期待して調べてみたのですが、見当違いなのかもしれません。


業績推移

売上と利益

以下のグラフは売上と営業利益率の推移です。

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売上は増加していますが、営業利益率や横ばいです。2019-3期をみると上昇しているようにも見えるのですが、ここでは保守的に評価しています。また、売上や利益は景気循環の影響を受けていないように見えます。


以下のグラフは営業利益と純利益の推移です。

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営業利益と純利益は増加しておらず、横ばいと評価しています。


以下のグラフはROAとROEの推移です。

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ROEは5%前後で、低いわけではありませんが高くもありません。




セグメント別の売上・利益推移

以下はセグメント別の売上構成の推移および売上増減です。

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有価証券報告書よりグラフを作成


海外事業の売上が最も増加してます。
売上増加を牽引しているのは海外事業であることがわかります。また、2016-3期以降は国内事業の売上が2006-3期を超えるようになっています。



以下はセグメント別の利益率、利益構成および利益増減の推移です。

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有価証券報告書よりグラフを作成


国内事業は悪くありません。セグメント利益率も10%を超えており高いし、利益についても2012-3期以降増加しているようにみえます(2019-3期の扱い次第ではあるが)。一方海外事業は利益には全く貢献できていません。


2019-3期の国内事業の売上やセグメント利益が非常に良いですが、これは有価証券報告書では以下のように説明されています。

売上高は前期からの繰越業務の消化が順調に進捗したことにより14,220百万円(同34.2%増)、営業利益は2,649百万円(同187.3%増)となりました。

第69期 有価証券報告書より引用


決算期をまたがる業務を受注しており、売上の計上が偏るということですね。2019-3期が特別調子が良かったというわけではなさそうです。逆に2018-3期は実態より売上や利益が低く見えていた可能性があります。
ただし、2016年2月に入札の不正で指名停止処分を受けているので、2017-3~2018-3期はその影響もあったと思われます。


資産

以下のグラフは総資産と自己資本比率の推移です。

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自己資本比率が70%を超えており、非常に高いです。総資産は増加しています。



以下のグラフは資産(B/Sの左側)の内訳推移です。

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資産の過半を現金および有価証券等が占めており、2019-3期の場合、総資産252億円のうち151億円が現金および有価証券等です。2006-3期と比較すると「現金および有価証券等」と「未成業務支出金」が大きく増えています。


以下のグラフは負債(B/Sの右側)の内訳推移です。

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資産のほとんどが自己資本です。自己資本は少しづつですが増加しています。


以下は自己資本の内訳推移です。

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年々利益剰余金が積みあがっています。

キャッシュフロー

営業CF

以下のグラフは営業CFの推移です。

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事業内容を考えると当然といえば当然ですが、減価償却費がほとんどありません。運転資本の増減の影響がやや大きいなという印象ですが、特にまずいなと思うところはありません。2018-3期の営業CFがそのせいでマイナスになっていますが仕方がないと考えています。また、2006-3期は賞与引当金の増加が7億程度あり、これが原因で営業CFがマイナスになっています。

営業CFは横ばいで成長できていません。2019-3期についてはかなり保守的に評価しています。


投資CF

以下のグラフは投資CFの推移です。

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投資CFの大部分が財テク(有価証券、保険、定期預金によるもの)です。買収は基本的にしていないので、ほぼゼロです。設備投資は毎年1億~4億程度実施しています。


以下のグラフは設備投資の内訳です。

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年平均で1.7億円程度の設備投資(取得と売却を含む)を行っています。設備投資の大半は有形固定資産に対するものです。事業内容からすると、有形固定資産への投資はそこまで必要ないように思うのですが、2008年3期より不動産事業(学生専用賃貸マンション)を始めているので、そのための投資も含まれているのでしょう。ただし、有報からはその内訳はわかりませんでした。

財務CF

以下のグラフは財務CFの推移です。

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株主関連(配当金と自社株買い)がほぼ全てです。毎年4億程度の安定的に支出しています。

全体

以下のグラフは各種CFおよび現金同等物と有利子負債の推移です。投資CFについては財テク(有価証券、保険、定期預金によるもの)を入れるのは適当ではないと判断し、設備投資を投資CFとして用いています。また、現金同等物については有報に記載の数値ではなく、連結貸借対照表の現金と有価証券等を合算した数値を用いています。

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有価証券報告書よりグラフを作成

  1. 営業CFは成長できていない(2019-3期については保守的にみている)。
  2. 営業CFは原則プラスである。ただし、運転資本や引当金の増減の影響によってマイナスになることはある。
  3. フリーCFも原則プラスである
  4. 有利子負債は全くない。
  5. 現金と有価証券等は少しづつ増えている(2009-3~2012-3期に減少しているのは有価証券の評価損があったのも影響している)。


営業CFやフリーCFが原則プラスであり、さらに有利子負債もなく、極めて保守的で安全志向な会社です。

営業CFについては成長できていないと判断しています。これは2019-3期の増加理由が繰越業務の消化を主な理由としているためです。実際には他の要因があるのかもしれませんが、継続的に決算を監視して判断したいです。

まとめ

NJSは上下水道に関連するコンサルティングを主な事業として営んでいるため、ストック型の収益構造ではないかと期待していましたが、それを裏付ける情報を得ることができませんでした。また、自己資本の増加については物足りない水準です。ROEはせいぜい5%程度。キャッシュリッチな会社でもっと効率的にお金を増やしている会社は他にもあります。

NJSの海外事業は売上が増加しているものの利益には全く貢献できていません。今後これが改善されるとも思えないので、海外事業についてはあてにできません。今後国内の上下水道分野には国の方針で民間委託が進んでいくはずなので、国内事業は売上や利益について成長してもおかしくありません。


過去の実績を重視するなら投資しないほうがいいです。国内事業が爆発的に成長する確信があるなら投資してもいいかもしれませんがが、自分にはその確証がないので投資は控えようと判断しています。

今回はここまでです。