事業内容
事業概要
ブリヂストンは世界一のシェアを誇る日本のタイヤメーカーです。
同社の事業は「タイヤ」「多角化」の2つに分類されており、それぞれ以下の通りの事業内容です。
有価証券報告書より表を引用
以下は2018年12月期のセグメント別の売上・利益構成です。
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「タイヤ」事業が利益の大半を稼いでいることがわかります。「多角化」事業は売上の2割弱を占めていますが、利益の面ではほとんど貢献していません。
以下は2018年12月期の市場別の売上構成です。
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海外市場での売上が全体の81%を占めています。米国での売上が最も多く、日本・米国・欧州などの先進国での売上が多いです。
業績推移
売上と利益
以下のグラフは売上と営業利益率、営業利益、純利益の推移です。
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売上は緩やかですが増加傾向にあります。営業利益率が高く2018-12期の営業利益率は11%でした。営業利益と純利益は増加傾向にある一方で2014-12以降伸び悩んでいます。また、同社の業績は景気後退期に顕著に悪化しており景気循環性があることがわかります。
以下のグラフはROAとROEの推移です。
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財務レバレッジが低下しています。2018-12期のROEは12%で高いです。
セグメント別の売上・利益推移
以下はセグメント別の売上構成、売上増加量の推移です。
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以下はセグメント別の利益構成、売上増加量の推移です。
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「タイヤ」事業は売上・利益が増加していますが、「多角化」事業はそうではありません。「多角化」事業は今のところあまりうまくいっていないようにみえます。
事業地域別の売上・利益の推移
注意
事業地域別の売上・利益については事業地域間のやり取りを含んだ値となっています。例えば、日本であれば日本地域で生産したタイヤの売上・利益(米州など他地域へ輸出した分を含む)ということです。したがって、この値は各地域の市場(顧客)に対する売上・利益とは異なります。
また、2016-12期以降の「欧州」「その他」の売上・利益についてはデータの区分が変更されたため継続したデータを取得することができませんでした。ここでは仮に「欧州」の売上・利益が2015-12期の値のまま一定であったと仮定して「欧州」「その他」の売上・利益を算出し記載しています。したがって2016-12期以降の「欧州」「その他」の売上・利益の値は正しい値ではありません。
以下は事業地域別の売上構成、売上増加量の推移です。
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以下は事業地域別の利益構成、利益増加量の推移です。
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米州およびその他(ロシア・中近東・アフリカ・中国・アジア大洋州といった新興地域)の売上が大きく増加しています。同社の売上増加をけん引しているのは米州や新興地域であることがわかります。特に米州の売上増加が大きいです。これは利益についても同様でした。
以下は2015-12期の事業地域別の売上・利益の内訳です。
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日本・米州・欧州(先進国)の売上および利益が全体の8割以上を占めていることがわかります。
資産
以下のグラフは総資産と自己資本比率の推移です。
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総資産額は増加傾向にあります。自己資本比率も上昇傾向にあります。
2018-12期の自己資本比率は62%でした。
以下のグラフは資産の内訳推移です。
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有形固定資産が多く、増加していることがわかります。生産設備が増えたためだと考えられます。
以下のグラフは負債の内訳推移です。
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自己資本が増加している一方で、有利子負債は減少しています。現金も増加しており、事業で儲かっているということがわかります。
以下のグラフは自己資本の内訳推移です。
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2018-12に自己資本が減少していますが、これは「その他の包括損益累計額」によるもので特に為替換算調整勘定が大きなウェイトを占めていました。円高によるものであり特に問題はないと判断しています。
自己資本の増加は利益剰余金の増加によるものであり健全です。
キャッシュフロー
営業CF
以下のグラフは営業CFの推移です。
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営業CFは成長していますが、近年伸び悩んでいます。
投資CF
以下のグラフは投資CFの推移です。
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投資の大半が固定資産の取得・売却です。つまり、投資のほとんどが生産設備の新設や更新であるということです。そしてそれが年間2000憶円から2500億円程度あります。
以下は主な買収一覧です。
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これらはタイヤ事業でより高い付加価値を顧客に提供することで収益性を維持するための買収であると考えられます。タイヤはコモディティ化が進んでおり、価格競争が激化していることが背景にあります。
これらの買収については以下が詳しいです。
財務CF
以下のグラフは財務CFの推移です。
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以下のグラフは財務CF中の株主関連収支の内訳です。
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特に気になる点はありません。
全体
以下のグラフは各種CFおよび現金同等物と有利子負債の推移です。
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営業CFは常にプラスで安定しており、営業CFは成長しています。また、有利子負債が減少している一方で現金同等物が増加しておりお金が余ってきています。経営状態は非常に良い状態です。
まとめ
ブリジストンの2005-12~2018-12期の売上および営業利益は
- 売上が2.69兆円から3.65兆円となり、0.96兆円増加、+35%、年平均2.5%成長
- 営業利益が2139億円から4027憶円となり1889憶円増加、 +88%、年平均5%成長
となっています。
同社の売上・利益成長は米州および新興国での事業がけん引しており、特に米州での売上・利益成長が大きいです。新興国での売上・利益は増加しているものの、2015-12期時点では全体の売上・利益に占める割合は売上19%、利益13%に過ぎず、先進国のものが大半を占めています。
同社は世界一のシェアを誇るタイヤメーカですが、シェアは年々低下しています。これはミシュランやグッドイヤーなどの大手タイヤメーカも同様です。2004年の大手3社によるシェアは54.9%でしたが2018年には37.1%に低下しています。ブリヂストン自身もシェアを18%から14.8%に落としています。この背景にあるのは新興国のタイヤメーカの台頭です。新興国メーカは低価格を武器にシェアを獲得しています。タイヤは性能による差別化が難しい製品になっており、価格競争が激化し、同社にとって収益を維持することが年々難しくなってきています。
同社はこういった事業環境の変化に対応するため「高品質のタイヤを高く売る」のではなく「運送業者などのタイヤへのニーズが大きい顧客向けにタイヤに関連する高付加価値なサービスを販売する」のように事業戦略を変更しようとしています。これがうまくいくのかは正直わかりません。
ブリヂストンは2020年1月24日時点においてPER10倍程度と割安であるように見えますが
- タイヤ事業の環境変化に対応するべく事業戦略の転換を迫られている
- 景気循環性がある銘柄である
ことから10倍程度のPERになっていると考えられ、私自身は妥当な値付けだと評価しています。
したがって同社の今後の見どころは
- 事業戦略の転換がうまくいき、タイヤに関連するサービス提供企業として躍進できるのか
- 新興国のタイヤメーカの攻勢をしのぎ、先進国での売上・利益を維持できるのか
あたりだと考えています。
今回はここまでです。