事業内容
事業概要
日本社宅サービスは社宅管理事務代行など住宅に関連するアウトソーシングサービスを主な事業として営んでいます。
日本社宅サービスの事業は「社宅管理事務代行」事業、「施設総合管理」事業、「その他」事業の3つのセグメント分類されており、それぞれ以下のようなサービスを顧客に提供しています。
セグメント | 事業内容 |
---|---|
社宅管理事務代行 | 借上社宅物件の紹介、契約・入居手続、家賃の支払い、退去時における原状回復費用のチェック等 |
施設総合管理 | 分譲マンションを中心とした施設管理を基盤に、そこから派生する修繕工事までのトータルマネジメントサービス |
その他 | 管理部門向けのコスト削減・業務効率化サービスや防犯、防災、警備及び安全に関するシステム、設備、機器等のセキュアサポートサービス等。同社の新規事業・サービスがここに分類される。 |
有価証券報告書より表を作成
提供しているサービスについては同社のホームページに説明がありますので参照ください。
www.syataku.co.jp
以下は2019年6月期のセグメント別の売上および利益構成です。利益はセグメント利益である点に注意してください。
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利益の大半を「社宅管理事務代行」事業が稼いでいます。一方、「施設総合管理」事業は売上が大きいわりに利益が少ないです。
また、「その他」事業は売上は小さいですが、「施設総合管理」事業と同程度の利益を稼いでいます。
いずれの事業もストック型の収益構造をしており、収益が安定することが特徴です。
同社の事業には景気循環性があります。顧客にとって社宅は人材獲得・維持のための手段であり、景気が良く人材が集まりにくければ積極的になりますが、そうでないなら消極的になるからです。これは不動産管理についても同じことが言えます。不況になれば新しいマンションの建設は減るし、管理業務の受注競争も激化するからです。
同社のビジネスについては以下のアナリストレポートが詳しいです。やや古いですがよろしければどうぞ。
http://holistic-r.org/c_info/8945/holistic-r.org
業績推移
売上と利益
以下のグラフは売上と営業利益率の推移です。
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売上が増加し、営業利益率も上昇しています。2019-6期の営業利益率は11%と非常に高くなっています。
一方で、2013-6期に営業利益率が低迷しています。この理由ついては後述しますが、「社宅管理事務代行」事業の利益が減少したことが原因です。
以下のグラフは営業利益と純利益の推移です。
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営業利益、純利益ともに増加しています。
以下のグラフはROAとROEの推移です。
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2019-6期のROEは10%、ROAは7%とそれなりの水準です。
ROEが低下しているのは財務レバレッジが低下しているからです。ROAはあまり変わっていない。
セグメント別の売上・利益推移
以下はセグメント別の売上構成の推移および売上増減です。
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「社宅管理事務代行」事業の売上は増加している一方で「施設総合管理」事業の売上は2007-6期および2008-6期から増加していません。したがって、同社の売上増加をけん引しているのは「社宅管理事務代行」事業です。また、新規事業である「その他」事業も売上増加に貢献しています。
以下はセグメント別の利益率の推移です。
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「社宅管理事務代行」事業と「その他」(新規)事業の利益率は15%を超えており、非常に高いです。一方で、「施設総合管理」事業の利益率は5%もなく低いです。有報を読むと競争が激しいとか、事業環境が厳しいといった旨の記載が結構出てくるので競争優位性がない事業ということです。
以下はセグメント別の利益構成および利益増減の推移です。
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「社宅管理事務代行」事業の利益が増加している一方で、「施設総合管理」事業の利益はほとんど増加していません。このことから同社の利益増加は主に「社宅管理事務代行」事業および「その他」(新規)事業によるものだとわかります。
2013-6期前後で「社宅管理事務代行」事業の利益が減少している原因についてですが、有報には以下の旨の記載がありました。
- 新規拠点の開設や設備の拡充など成長投資を行った
- 既存顧客からの委託料の値下げ要請および競合他社との比較検討が増え、価格競争が激しくなった
したがって、競争が激しく2013-3期前後に差別化のための成長投資を行ったが、それを吸収できるほどの売上増がなかったために利益が減少したと考えられます。
以下は「社宅管理事務代行」事業と「施設総合管理」事業の単価の推移です。
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「社宅管理事務代行」事業の単価がじわじわと下がっているのがわかります。2018-6期と2006-6期を比較すると、おおよそ2割単価が下がっています。一方で、「施設総合管理」事業の単価は横ばいです。
以下は「社宅管理事務代行」事業および「施設総合管理」事業の契約件数と売上の推移です。
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「社宅管理事務代行」事業の受託件数が増えるのに従って売上が増加しています。単価は下がってはいますが、それよりも受託件数の増加のほうが大きく、売上を伸ばしているということです。一方で、売上が「施設総合管理」事業は管理戸数が増えておらず、売上も横ばいです。
資産
以下のグラフは総資産と自己資本比率の推移です。
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総資産額、自己資本比率がともに右肩上がり、2019-5期の自己資本比率は70%程度あり高いです。
以下のグラフは資産(B/Sの左側)の内訳推移です。
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現金や有価証券が急激に増加しています。2019-3期の総資産約95億円のうち約60億円が現金および有価証券です。
現金が約32億円、有価証券が約27.5億円(業務提携をしているベネフィット・ワンの株式が結構な額あるので必ずしも現金化できるものばかりではない)です。
以下のグラフは負債(B/Sの右側)の内訳推移です。
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2016-6期以降、有利子負債がなくなっています。また、自己資本が急激に増加しています。
以下は自己資本の内訳推移です。
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自己資本の増加は利益剰余金の増加と、その他の包括損益(有価証券評価差額金)によるものです。
有価証券の含み益が結構あるようで、2019-6期は17億円もあります。
キャッシュフロー
営業CF
以下のグラフは営業CFの推移です。
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営業CFは増えているというよりも安定するようになったという感じでしょうか。
投資CF
以下のグラフは投資CFの推移です。
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財テクは投資有価証券の売買や定期預金・保険などの預け入れ、解約などです(関係強化のための有価証券売買も含まれるので財テクという言葉は不適切かもしれない)。
支出額は大きくありませんが、ちょくちょく買収を行っています。
以下の表は同社の買収内容です。
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ダイワードおよび全日総管理の買収時に大きな支出がないのは、ダイワードが現金同等物を多く保有していたため、全日総管理の買収が株式交換で行われたためです。
大きな買収はいずれも「施設総合管理」事業に関連するものです。
そもそも「施設総合管理」事業はダイワードを子会社化することによって始まったものですが、利益の面でもあまり貢献していませんし、管理戸数も全然伸びていない。
この事業に投資する価値があるのか少し疑問です。もちろん、わたしが理解できていないだけで「社宅管理事務代行」事業とのシナジーを狙ったものだとは思うのですが。
以下のグラフは設備投資の内訳です。
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年間当たり約1億円程度の設備投資を行っています。
財務CF
以下のグラフは財務CFの推移です。
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2016-6期までに積極的に借入を返済していることがわかります。
ただ、2018-6期の有利子負債は0のはずが、借入金の返済があるのがよくわからないです。
グラフからは読み取れないですが、配当金の支出が年々増加しています。
全体
以下のグラフは各種CFおよび現金・有価証券と有利子負債の推移です。
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- 営業CFは成長できていない
- 2014-6期以降営業CFが安定するようになった
- 営業CFは基本的にプラスである
- フリーCFは基本的にプラスである
- ネットキャッシュもプラス
営業CFやフリーCFがプラスであり、ネットキャッシュもプラス、保守的な経営をしています。
現金なども増えており、事業もうまくいっているようです。2019-6期時点で有利子負債は0で、お金が余っている状況です。
まとめ
「社宅管理事務代行」事業については受託件数が増えるのに従って売上・利益が成長しています。一方で、「施設総合管理」事業の管理戸数は横ばいで売上・利益も成長できていません。同事業は利益率も「社宅管理事務代行」事業と比べて低いです。
同社が今後成長するとすれば、それは「社宅管理事務代行」事業や「その他(新規)」事業によるものだと思われます。わたしは「施設総合管理」事業にはあまり期待をしていません。
いずれの事業もストック型の収益構造を持つビジネスであり売上は安定しやすいですが、社宅の需要や不動産の建設件数には景気循環性があるので不景気には契約が解約される、顧客から値下げを要請されるなどして売上に影響する可能性が高いです。
「社宅管理事務代行」事業が成長すると思えるなら買ってもいいと思います。財務も健全だし、これまで成長してきた実績もあります。ただし、成長限界がどこにあるかは私には判断できません。また、景気循環のことも考えると今買うべきではないと私は判断しています。
今回はここまでです。