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簡易調査 5075 アップコン

概要

少し前にTwitterで知り合った方と投資の勉強会をしていた際に、色々話を聞いた結果、投資するのも面白そうと思ったため、今回は5075 アップコンをご紹介します。ちなみに私はこの銘柄のホルダーですので、記事の内容は割り引いて読んでいただけると幸いです。投資するに優れた銘柄とは限らないためあしからず。


アップコンは主にウレタンを使った地盤沈下修正工事を事業としています。2003年に神奈川県で設立された、比較的若い会社です。同社は研究開発型の企業を目指しており、硬質発泡ウレタン樹脂を使った工法の用途開発を行っています。


例えば、2013年に特許第5227085号(ウレタンを使って軟弱な地盤を改良する)、2018年に特許第6302611号(ウレタンを使って建築物の沈下を修正する)のようにウレタンを使った工法の特許を取得、2015年にはFRT工法(産官学連携で共同開発。農業用に用いられている水路トンネルの維持・補修に関する工法)の事業化に成功しています。
 

事業内容

アップコンはウレタンを使った地盤沈下修正工事を行っています。公共だけでなく民間の工事も行っており、その範囲は工場・倉庫・店舗、住宅等、農業用水路・導水路トンネル、道路・橋梁部踏み掛け版等、湾港など多岐にわたります。

以下に主な工事領域とその内容をまとめました。


IR資料及びJトラスト証券のレポートより表を作成
 

以下は民間・公共別の売上の推移です。


2023年4月 事業計画及び成長可能性に関する事項p12 より引用

 

事業の強み

同社の強みは

  • 短工期で建築物の修正が可能であり、顧客メリットが大きい
  • 硬質発泡ウレタンを用いた修正技術の積み上げがある(特許・作業者の育成・専用のウレタンや器具の開発)

です。

以下は同社の代表的な工法であるアップコン工法の内容と強みに関する資料です。



2022年1月期決算説明会資料p9~p10 より引用


同社の強みとして最も重要なのは短工期かつ操業を止めずに施工を行える点だと考えています。


例えば、工場の地盤沈下を従来のコンクリート打替え工法で修正すると、1週間~2週間程度時間がかかり、その間工場の操業はできません。これだと、顧客は工事をしない決断をします。なぜなら、工場の操業が止まると経済的な損失が大きいからです。不良品の発生が増えようが荷物の運搬や積み上げが一部出来なかろうが止まるよりはましだからです。アップコン工法はこうした問題を解消してくれます。これは住宅、農業用の水路、道路、空港、港湾などでも同様で短時間で工事が終わるというのは大きなメリットがあります。
 

参入障壁

競合他社からの模倣に対しては以下の障壁があると考えています。

  • 工法の特許を取っている(同社ホームページで確認できるだけでも9件)
  • 硬質発泡ウレタンを用いて工事するのは結構難しい
  • 工事分野がニッチで参入メリットが小さい(仮説)


特許はもとより、ウレタンを使って高精度の施工を行うのはかなり難しいようです。地下の空洞や隙間にウレタンを注入するだけなのですが、社長が言うには技術者がちゃんと施工できるようになるまでに5年間くらいかかるとのこと。ウレタンの発泡速度や硬化にかかる時間は温度によって大きく異なり、また、工事ごとに使い分けられる材料によっても変わるため、精度を出すには熟練を要するということです。


これだけだと大手の建設会社に真似されてしまいそうなのですが(スーパーゼネコンクラスの会社なら特許や技術の問題を突破する力は持っている)、おそらく、地盤沈下や地下空洞の修正工事分野の市場規模は現段階では大きくなく、将来大きく成長するかもわからないため大手がわざわざ参入してくる可能性は低いと評価しています。それよりは顧客から要望があった際にアップコンに依頼して顧客ニーズを満たす方が良いと判断すると思われます。


アップコンの売上は2023年1月期時点で10億円もないため、この分野に注力していても十分に成長可能性があります。

競合他社

ちなみに、ウレタンを用いて地盤沈下修正工事をしている国内の競合は1社存在しているようです(証券リサーチセンターのレポートより)。メインマークの会社ページを見てみたのですがアップコン工法との差がよくわからないので、IRに問い合わせてみてもいいかもしれません。

どうも、アップコンの社長はメインマーク設立時の社長で硬質発泡ウレタンを用いた地盤沈下修正工法を改良し、アップコンを設立したという経緯があるようです(リンク先ページの社長経歴に記述あり)。



 

まとめ

アップコンはウレタンを用いた地盤沈下修正工事を主に行う会社であり、短工期を強みとしています。同社は工法の知名度が低いことを課題として挙げており、上場や営業活動を通じて周知していくようです。IR資料の人材採用計画や中期損益予想をみるかぎり、緩やかな事業成長を志向しており、急速な成長は期待できないかもしれませんが、個人的にはこれで良いと思っています。




2023年1月期決算説明会資料p22、p23、p25 より引用

 
ただ、資金用途が無いような計画になっているのが少し気になります。


小さい会社であり、今後、どうなっていくのか未知数な部分も大きいですが、面白い会社だと思っています。


現時点ではウレタンによる環境汚染に関する情報はないですが

  • ウレタンの変質による有害物質汚染
  • ウレタンの流出による環境汚染(マイクロプラスチック問題)

こういった問題が発生し、社会的に問題視された場合、業績に大きな影響を与える可能性があるため注意が必要です。


今回はここまでです。