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株式投資勉強会の振り返り 2023年7月23日分

はじめに

Twitterで知り合った方たちと投資関係の勉強会をしている(参加している)のですが、内容を忘れないように振り返っておこうかなと思い記事にしました。今は「世界標準の経営理論」という本を読んで色々話しています。


今回は主に第3章と4章の要約を発表し、本の内容について意見を交わしました。第3章と第4章はRBVという、企業内部のリソース(人材、ノウハウ)に着目した理論について書かれています。


 

読書会で対象となった範囲の内容

RBV理論が示しているのは

  1. 企業が稀少で価値があるリソースを保有していれば、超過収益を得ることが出来る=一時的な競争優位
  2. さらにそれが模倣困難なら持続的に超過収益を得ることが出来る=持続的な競争優位

ということで、企業リソースがとても大事だよという理論です。



また、市場競争には型があり、適した戦略や理論が異なっている

有効な戦略
IO型 有利なポジションの構築し、競争を回避するのが望ましい(SCP理論が有効)
チェンバレン型 競争の回避が困難であり、商品の差別化により勝ち残るのが望ましい(RBV理論が有効)
シュンペーター型 環境の変化が激しく、勝ち残るのが極めて困難、新しい戦略が望まれる

 
といった内容が書かれています。本当はもっといろいろあるんですが、大事なのはこの2点であるように思います。
 

読書会で話したこと

実際の読書会の内容とはやや異なっているかもしれないのと、現時点での私の考えをまとめている側面が強いのであしからず。
 

なぜRBV理論は株式投資に使うのが難しいのか

投資家にとっては企業の強みを理解するための情報源はIRくらいしかないわけですが、本当の強みを公開する動機が企業にはない(RBV理論的には公開しないほうがよい。なぜなら他社に真似されるから)という指摘がありました。


つまり、企業は

  • 公開してもしなくても直ぐに陳腐化してしまうようなもの
  • 公開しても本質を理解されないようなもの
  • 公開してもマネすることが出来ないもの

くらいしか公開してはくれず、投資家が企業リソースの本当の強みや模倣困難性を理解することが難しいという指摘です。


また、そもそも経営者にとって他の企業の内情はわからないので、自社のリソースに強みがあるか否かもはっきりわかっていないのではないかという指摘もありました。


確かに、RBV理論はSCP理論よりも使うのが難しいなぁと思います。企業の外部環境はシェアなどの統計情報が手に入ればある程度明確にわかるといえるのですが、会社のリソースの強みというのは数値化も難しいし、他社間の比較もできないし、抽象的になりがちなのでハッキリしない話になりそうです。
 

企業がリソースについて情報を公開するケース

1.公開するメリットがある場合は公開する。例、HYUGA PRIMARY CAREのきらりプライム。同社の訪問薬局ビジネスのノウハウはいずれ大手によって模倣され陳腐化する可能性が高いため、自身の手で積極的に公開することで新たなノウハウを獲得していく方がメリットがある。同社がこの決断をするときは社内は大荒れだったようです。なのでやはり企業が自社ノウハウを公開することは難しいのだと思います。


ちなみにどういう経緯でこの決断に至ったかの開示はありませんでした(業界のためになるなど書かれていたが、さすがにそれだけじゃないと思われる)。ここに記載した公開のメリットはわたしの私見です。


2.どうせバレてしまう場合は特許を取るなどして情報を公開する。例、車などの工業製品。製品が販売されていて誰にも入手可能な場合はリバースエンジニアリングによって製品構造などのノウハウが漏洩してしまうので、それは特許によって保護する。わからないものについては特許をあえて取らず、秘匿する。
 

戦略が実行できるかについても考えたい

この本の中で「日本企業には戦略があるのか」という話題があるのですが、日本の家電事業は競争環境の変化に対応できずに失敗したという記載があります(大分省略しています)。

なんとなく日本企業は正しい戦略の立案が出来なかったから失敗したと取れてしまうのですが、わたしは戦略の立案と実行できるかは別の話で、戦略を実行するためにはどうしたらよいかも考えなければいけないと感じました。

というのも、差別化戦略で戦っていた日本の家電企業が廉価品を大量に販売する戦略に移行するのは難しいからです。

  • 差別化された家電を選んでくれている現在の顧客を失う可能性がある
  • 差別化された家電よりも廉価な家電の方が付加価値が低く、儲けにくいように見える
  • 差別化戦略のために最適化された企業リソースは、廉価品の大量販売のために必要なリソースとは大きく異なるため、戦略の転換は企業リソースの一時的な破壊をもたらす

 

そもそも戦略転換のハードルが高く、日本企業は正しい戦略に方針転換したとしても成功できたのだろうかという疑問があるわけです。さらにいえば、廉価品を大量に販売する戦略が正しいといえるのかという考えもあり、ここら辺については正しい答えはないと思います(という指摘があった)。


ちなみに、この本は経営戦略について書かれた本で、それを実行するための方法については範囲外だと思うので、本の内容がダメだとかそういうことは思っていないです。


ただ、投資家としては戦略の実行可能性についても視野を広げたいなと感じました。

配当と自社株買いの効果について

これは本とは別の話です。他の参加者の方が「配当と自社株買い」について発表してくれました。


一般的には配当と自社株買いは企業価値に影響を与えないということでしたが、エージェンシー理論(ここでは経営者が余ったお金を非効率的に使ってしまうことで企業価値が棄損するというくらいの意)を考慮すると、自社株買いや配当によって将来CFを束縛し、経営者がお金を無駄遣いする余地を減らせるので結果的に企業価値にプラスの効果を与えるのではないかという話でした。


特に日本企業は現預金をため込んでいるケースが多く、資本コストを上回る投資先がない中で資本効率が低下しがちであり、配当には意味がありそうです。


将来CFを束縛するための一般的な方法としては以下があるようです。

  1. 負債の返済によるもの。拘束力が強い
  2. 配当の支払いによるもの。法的な拘束力はないが一般に配当は継続されるものだというプレッシャーがある
  3. 自社株買い。負債や配当に比べると拘束力が弱い。また、自社株買いにより株主構成、資本構成が変化するといった副作用がある


企業価値という観点から最適な資本構成をどう考えたらよいかという話もありました。最適資本構成はトレードオフ理論だけではなく、エージェンシー理論からも考えることが出来るようです。いずれも適度な負債なら良いが、いたずらに負債を増やすとかえって企業価値を棄損するという結論であり、バランスが大事だということでした(よくわかる話です)。



最適資本構成とは話が異なるのですが、企業投資のリスクに応じて負債を活用するべきか、株主資本を活用するべきかという視点も大事かなと思っています(私見)。


新規事業の立ち上げなど将来の見通しが難しい場合は株主資本、現時点で上手くやっている事業の維持・拡大には負債が適当なのでは?という話です。つまり、リスクが高い投資にはリスクを許容できる性質の株主資本、リスクが低い投資には銀行借り入れなんかが適しているという話です。


これは良い例ではないかもしれませんが、ファンデリーは新規事業立ち上げのために大きな銀行借り入れを活用しましたが、あまり上手く行っておらず、銀行に配慮しなくてはならなくなり、エージェンシーコストが増加しているように見えます(本当は既存事業強化のために投資をしなくてはならないのに難しいなんてことにならないかを危惧してる)。株主資本で賄える程度の資本を使って新規事業を立ち上げ、既存事業の強化のために銀行借り入れを使う方がよかったのではないかと思ってしまいます。

RBVを用いたバリュエーションについて

これも他の参加者の方が発表してくれた内容です。

  1. 理論的に企業の内部環境は外部からわかりずらいことが良いとされているので、そもそもRBVは使いづらい
  2. 企業の資源・能力に関する情報を外部からあたりをつけるのは難しい

という前提があり、バリュエーションに使うのは簡単ではないということです。


アップコンを例にバリュエーションの考え方を説明していただいたのですが

  • 研究開発費と人件費はPLで処理されているがBSに付け替える必要がある
  • 営業力の強化が必要であるため、そのためのコストをバリュエーションに反映するべき

あたりが興味深かったです。


自分が勉強不足なのもあって、研究開発費や人件費を無形資産評価することの重要性がいまいちわかってなかったのですが、RBVを学んだことで少しだけ理解に近づいたように感じました。まだ、無形資産評価した後どうするの?ってことはよくわかってないです。もう少し理屈を学んだほうがいいなぁと感じました。先は長いですね。いいことだと思います。

配当や株主優待などの株主還元も加味した会社評価について

これも他の参会者の方が発表してくれた内容です。


北國フィナンシャルグループを例に「株主還元策が変化することによるバリュエーションへの影響」について話していただきました。


話の趣旨としては「配当や自社株買い、株主優待はバリュエーションに影響を与えないが、株主としてはリターンを得ているのでそれを考慮したバリュエーションができないか」ということだと思っています。

これについては今後の勉強会で話を聞いてみたいなぁと思います。


自分はこれまで会社を評価する際に配当や自社株買い、株主優待は一切見てこなかったのですが、実際問題、配当などの株主還元って結構投資成績に影響を与えているよなぁと最近思っているところなので話を聞いてみたいです。例えば、自分の直近の投資成績はおそらく5%程度なんですが、配当によるリターンが2~3%あったりします。結構大きいんですよね。


自分は今お金がないので優待目当ての株とか配当狙いの株にお金を振り向けられないのですが、世の中の多くの投資家にとっては結構大事な話なんじゃないかと思います。自分もお金に余裕が出来たら優待券で外食したいですし。

おわりに

あらためて勉強会っていいもんだなぁと感じました。

  • 勉強するモチベーションが高まること
  • 他の人の意見を聞けること
  • 自分の意見を述べることで理解が深まること


主催者の人は大変だと思うのですが、細く長く続いてくれると嬉しいです。


今回はここまでです。