事業内容
プラネットは主に日用品・化粧品メーカと卸売り業者間の注文データ等を仲介する(EDI Electronic Data Interchange 電子データ交換)プラットフォームを運用している会社です。同社が運用するプラットフォームは日本の名だたる日用品・化粧品メーカと卸売り業者から利用されており、日用品・化粧品分野でのEDIプラットフォームとしては独占的といってもよいでしょう。
同社のプラットフォームに参加するメーカ・卸売り業者は以下の通りです。
決算説明会資料より引用
同社の強みは
- 日用品・化粧品分野のEDIプラットフォームとしては独占的である
- おおよそストック型の収益構造であり収益が安定しやすい
- 日用品・化粧品を中心に各種商品の流通情報を保持している
あたりでしょうか。
同社の事業は「EDI」「データベース」「その他」の3つに分類されており、それぞれ以下の通りの事業内容です。
区分 | 内容 |
---|---|
EDI | 資材サプライヤー・メーカ・卸売業者間の商取引に必要なデータ交換を行うサービス。参加企業は業界で統一されたフォーマットを利用し、複数の企業とのデータ交換を容易に開始できる。EDIのシステム開発などはインテックに委託している |
データベース | EDIサービスの納品先指定に用いられる標準取引先コードなどの情報を提供する取引先データベース。日用品などの商品情報を提供する商品データベース。 |
その他 | メーカー・卸売業・小売業間のマーチャンダイジング業務を支援する情報提供サービス「バイヤーズネット」等のサービス。バイヤーズネット経由でシステムの説明会などをしており、同社にとって重要な販売チャネルとなっている |
有価証券報告書より表を作成
業績推移
売上と利益
以下のグラフは売上と営業利益率、営業利益、純利益の推移です。
有価証券報告書よりグラフを作成
売上・利益ともに増加しています。ただし、成長は緩やかです。営業利益率は極めて高く、2019-7期の営業利益率は23.4%でした。
以下のグラフはROAとROEの推移です。
有価証券報告書よりグラフを作成
財務レバレッジが低下しています。また、ROEとROAはともに低下傾向にあります。これは非事業資産が年々増加していることに起因しています。
2019-7期のROEは11%で高いです。
セグメント別の売上推移
以下はセグメント別の売上構成、売上増加量の推移です。
有価証券報告書よりグラフを作成
EDI事業の売上は毎年増加しています。しかし、データベース事業は近年売上が減少しています。これはEDIプラットフォーム参加への新フォーマット移行へのインセンティブとしてデータベース利用の一部を無償化したためです。EDI事業の売上は継続して増加しており、データベース事業の売上減少は問題ないと考えています。EDI事業の売上成長率は2~4%程度であり、極めて緩やかに、安定して成長をしています。
以下はEDIプラットフォームを利用する会社数の推移です。
決算説明会資料より引用
参加する会社数は年々増加しており、プラットフォームの規模は確実に成長しています。
以下は商品データベースへの登録メーカおよびアイテム数の推移です。
決算説明会資料より引用
商品データベースの登録メーカ数は800社程度となっており規模が大きいです。ただし、近年は伸び悩んでいます。
資産
以下のグラフは総資産と自己資本比率の推移です。
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総資産額は増加傾向にあります。自己資本比率も上昇傾向にあります。
自己資本比率は極めて高く、2019-7期の自己資本比率は83%でした。
以下のグラフは資産の内訳推移です。
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現金及び有価証券等が大きく増加しています。無形固定資産はほとんどがソフトウェアです。
有価証券などの中身についてですが、2019-7期の内訳は
- 投資有価証券 12.8億円
- 保険積立金 1.4億円
でした。
2019-7期の投資有価証券の内訳は以下の表のとおりです。
有報より引用
以下のグラフは負債の内訳推移です。
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自己資本が大きく増加しています。有利子負債はありません。
以下のグラフは自己資本の内訳推移です。
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自己資本の増加は利益剰余金の増加によるものであり健全です。
キャッシュフロー
営業CF
以下のグラフは営業CFの推移です。
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営業CFは成長しています。しかし、2015-7期以降については法人税の減少、運転資本の減少などの効果もあり営業CFが実力よりも増加しているように見えており、私はやや保守的に2015-7期以降については横ばいという風に判断しています。
投資CF
以下のグラフは投資CFの推移です。
有価証券報告書よりグラフを作成
設備投資が毎年2~3億円程度ありますが、これはソフトウェアへの投資です。
以下は主な買収一覧です。
有価証券報告書およびIR資料より表を作成
カスタマー・コミュニケーションズへの出資やセルフメディケーション・データベースセンターの譲受などEDIプラットフォームの付加価値を高めるための買収を行っています。一方、上海上港瀛東商貿有限公司への出資についてですが、中国は流通が未発達であり、権利関係が難しく、事業としてうまくいくかは未知数であるということです(同社のIR発表より 最後の3分程度)。
財務CF
以下のグラフは財務CFの推移です。
有価証券報告書よりグラフを作成
ほぼすべてが配当です。
全体
以下のグラフは各種CFおよび現金同等物と有利子負債の推移です。
有価証券報告書よりグラフを作成
営業CFは常にプラスで安定しており、営業CFは成長しています。現金同等物が増加しておりお金が余っています。経営状態は非常に良い状態です。
まとめ
プラネットの2019-7期の売上は30.3憶円、営業利益は7.1億円、営業利益率は23.4%でした。
過去14年間の平均の売上成長率は2.3%、営業利益成長率は5.2%でした。きわめて緩やかな成長です。
EDIプラットフォームは導入会社にとっては必要不可欠なものであり、なおかつスイッチングコストも高いです。したがって、同社の収益は安定しやすいです。また、商品の受発注の量が多いほどシステムの利用料は高くなるため景気循環性がありそうですが、日用品や化粧品が中心であり、不景気に対する耐性はそれなりにあると評価しています。
同社はEDIプラットフォームをより魅力あるものにするため
- 継続的に値下げを実施(サービス開始から9回)
- システムを導入するのが難しい中小メーカ向けに簡単にEDIプラットフォームに参加できる仕組みを提供(MITEOS)
- より付加価値の高いサービスの開発(販売レポートサービス、商品データベース)
- 情報提供、コミュニケーション活動(バイヤーズネット)
などの施策を実施しており、地道に改善を進めています。
また、EDIプラットフォームの適用範囲を広げるために
- 物流EDIの研究
- 中国の越境EC向け事業への参加
などの施策を進めています。こちらに関してはうまくいくか全くわからない状況です。
同社は非常に堅実で安定する事業を営んでいますが、成長率は低く、グロース株投資を志向するのであれば対象にはなりえないです。
また、現時点(2020/1/30時点)でのPERも23倍程度と高い水準です。
したがってプラネットの今後の見どころは
- 安定した成長をいつまで続けていけるのか
- 異なる分野・地域への事業拡大はあり得るのか
あたりだと思っています。
今回はここまでです。