株式調査記録

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株本の紹介 株安の今こそチャンス! 成功する長期投資

はじめに

今回紹介するのは「株安の今こそチャンス! 成功する長期投資」です。この本はやや古いですが今でも読み返しています。内容が素晴らしいからです。わたしの投資手法に大きな影響を与えた本であり、思い入れがある本です。

本の概要

株安の今こそチャンス!成功する長期投資

株安の今こそチャンス!成功する長期投資


この本は一言でいうと長期投資を行う上での思想を教えてくれる本です。一方で具体的な手法については書かれておらず、そういったことを求める読者には向きません。要するにこの本には長期投資の具体的な手法に至るための前提となる考え方や理屈が書かれているわけです。

  • 投資によって得られる利益は会社の成長によるものであるから、どうしても時間がかかってしまう
  • 会社の成長は一直線ではなく、いいときもあればわるいときもある
  • 業績不振時のような誰もがダメだと思うような時こそ、絶好の投資チャンス
  • 景気循環の波には逆らわない

といったことが農業やスポーツ観戦のアナロジーを使って、くりかえし丁寧に書かれています。


例えば

  • 誰も花の種を植えた翌日に花が咲くことを期待したりはしない
  • 筋金入りのファンはお気に入りのチームが負けている時こそ、熱狂的に応援する
  • お百姓さんは冬の農閑期に春に向けた準備をする

といった感じです。


易しい文章で書かれており、株式投資の初心者であっても長期投資への理解を深められるのがこの本の素晴らしいところです。株の長期投資をやってみたいけどよくわからない初心者の方に自信をもってお勧めできる本です。


株による長期投資の最初の一歩を踏み出すために一番初めに読んでほしい、そんな本です。できれば何度も読み返してほしいかな。

本に対する個人的なあれこれ

この本を読んだのが2007年くらい、わたしは大学生でした。なんとなく株に興味があって読んでみたんですが、幸運だったなと思います。この本を読んだ当時の自分の理解は「不景気の時に株を買って、好景気の時に売ればいいのか簡単だな。自分にもできそう」といった程度でした。今になって思うとそれだけしか学べなかったのかよと突っ込みたくなるんですが、初心者なんでしょうがないですね。それよりも当時の自分はこの本から伝わってくる長期投資のエッセンスに魅了されちゃっていました。自分の周りでは「投資=デイトレとか短期投資」って感じだったんですが、「自分は長期投資でやっていこう」と決めるきっかけになりました。


それだけだと味気ないんですが、この本が素晴らしいのは時間をおいて読み返すと新しい学びがあるってことなんですよね。本に諭されるといったほうがいいかもしれないです。実際に投資を始めていろいろ失敗をして、落ち込んだりした後で読み返してみてほしいです。


いいなって思う個所をいくつか引用します。

 花屋さんで好きな花の種を買ってきた。ちょうど今が、種を蒔く絶好の季節だよと言われたから、さっそく庭先に蒔いた。
 翌朝、起きてすぐ庭に出て、花が咲いているかどうか確認した。残念ながら、まだ芽さえも出ていなかった。
 せっかく、楽しみにして早起きしたのに、ガッカリさせられてしまう。
 こんなの当たり前のことである。昨日蒔いた花の種が一晩で生長して、大きな花を咲かせているなんて、あり得ないこと。


澤上篤人『株安の今こそチャンス! 成功する長期投資』、廣済堂出版、2001年、p14


これは本文の書き出しです。一番初めに一番大切なことを書いています。要するに会社がお金を集めて事業活動するから利益が生まれるわけで、1日とかそれくらいで投資のリターンが得られると期待するのは理屈に合わないってことです。長期投資の基本原則であり、一般論的にもそりゃあそうだろうと思ってしまうんですが、投資初心者はそんなこと意識したこともないだろうから、それを一番初めに教えてくれるっていうのは控えめにいって最高です。

このことってすぐに忘れちゃうんですよ。買った株の価格が下落したり、自分が買わなかった会社の株価が上がったりすると「なんでだよ?」って思ったりする。もっと悪いと不安になってせっかく調査して見つけた会社の株を手放したりする。決算が悪いときも同じで、前年比で売上や利益が減っていたり、予想を下回っているとダメなんじゃないかと落胆したりする。

会社が売上や利益を出すのには時間がかかります。まず、製品やサービスを作るために生産設備を用意して、実際に生産し、流通にのせて顧客に届けてお金を回収しないといけない。生産ははじめは不効率なことが多いし、知名度だって低いから多くの顧客が買ってくれるわけでもない。だから、売上や利益なんてそんなうまいこと出るわけがない。工場での生産を改善し、販売チャネルを開拓し、顧客からのフィードバックを受けて製品やサービスを改善しているうちに段々と売上や利益が出るようになっていくのが常です。だから、そもそもすぐに株価が上がらないとか騒ぐのは論外で、決算での業績が思ったより悪いなんていうのもそりゃあるんですよ。だから、決算の良しあしであたふたするなよってこと。こういった当たり前のことをこの本を読むたびに再確認するわけです。


 われわれ長期投資家も、応援する会社の業績が悪化しているからといって、サポーターを降りるということはしない。
 一時的な業績悪化で株価が急落すれば、むしろ断固として買う。こういう時こそ、応援のし甲斐があるというもの。
 そうしないと、本物のサポーターにはなれない。ひいきのチームが負けたからといっては、次々と応援するチームを変えていったりしていたら、お話にならない。「苦節10年ついに初勝利」といった歓喜を味わうこともできない。


澤上篤人『株安の今こそチャンス! 成功する長期投資』、廣済堂出版、2001年、p103


メタウォーターとか、リスクモンスターとか、幼児活動研究会を事業価値が棄損したわけでもないのに売り払ったりしている自分としては耳が痛い。苦節10年目の歓喜を味わうことができなかった。長期で保有するなんて簡単だと思っていた10年くらい前の自分を叱ってやりたい。本当になんで売っちゃったんだって思います。もっといい銘柄があるとかもっともらしい言い訳はあるんだけど、結局のところ長期投資を貫けなかったんだよね。この本は長期投資の考え方は教えてくれるけど、どうやって実践したらいいかっていう具体的な話がないんです。逆言えば、それについては自分で考えないといけないなって実感しています。

国内株式のインデックス投資信託、近畿日本ツーリスト、不二家、ピックルスコーポレーション、神戸物産などの銘柄で失敗してきたことで具体的な投資手法について学んで改善してきたわけですが、まだ足りないっていうこと。まだまだ学ぶことがあると思い返させてくれるのが素敵だなって思う。



この本のいいところばかり書いてきましたが、不満な点もちゃんとあります。

「景気変動のサイクルをとらえて景気が過熱したらちゃんと利益確定するんだよ」みたいなことが書かれているんですが、これがめちゃくちゃ難しい。自分は2013年の後半ごろから今が天井なんじゃないかって思ってましたからね。あれから7年たちますが一向に不景気が来る気がしない。この新型コロナの混乱も特に問題なく乗り越えていくんじゃないかっていう気さえしています。不景気に株を買って、好景気に売るという理屈は単純なんですが実践するのは難しいです。

「応援できるような良い会社の熱血サポーターになる」ってことが書かれているけれど、どうやって良い会社を探したらいいのかは正直わからない。業績が悪くなっても応援する会社と、もう応援できないと縁切りする会社ってどうやって見分けたらいいんだろうか。

応援できるような会社はみつけたけど、長期で全然保有できない。どうやったら長期で我慢強く保有できるんだろうか。自分ではよい会社だとは思うんだけどどうしても最後まで信じられない。

この本にはこういった問題を解決するための具体的な手法がまるで書かれていないんですよね。それは自分で方法を考えていくしかない。だから、具体的な手法を求めている読者からしたら役に立たない本になってしまうかもしれない。


それでも投資についての思想や理屈をそもそも持ち合わせていないような投資初心者にはいい本です。投資初心者には自分の投資手法を確立するための第一歩としてこの本を読むことをお勧めします。

おわりに

自分がこの本を大好きなので長々と書いてしまいました。長期投資について書かれた本は数多くありますが、ここまで徹底して思想や理屈について繰り返し丁寧に教えてくれる本をわたしは知りません。20年前の本でちょっと古臭いと思うかもしれませんが、内容はピカイチなのでぜひ読んでみてください。中古で1円から200円で販売しているような本です。まぁ、送料を入れるともっとかかっちゃいますが、きっと後悔しないと思いますよ。

今回はここまでです。